「な、何だ……!?」
「闇が……全てを吸い込むような闇が……広がっていく!?」
闇忍たちが動揺している。
だが、もう遅い。
俺は闇の力をコントロールし……その全てを解き放ったのだ。
闇が周囲に広がる。
「ぐっ……!」
「ううっ……!」
闇忍たちは地面へと倒れ伏した。
彼らはすでに戦闘不能のように見える。
だが、まだだ。
俺が闇の力を解除してこの場を去れば、彼らは復活するだろう。
そして、また桔梗や俺を害するような行動を取るかもしれない。
「さて……」
「っ!!」
俺が一歩近づくと、闇忍たちの体がびくっと震える。
恐怖を感じているのだろう。
「お、おのれ……流浪人風情が……!」
「景春様に逆らおうというのか!?」
「我らを無力化しても無駄だ! 雷鳴流道場には、雷轟殿が控えている!!」
「もちろん、雷鳴流の準師範や上位門下生もな! 我らを無力化したところで、状況は変わらん!!」
「戦いを挑んでも無駄だ! 圧倒的な戦力差の前に、お前はただ敗北するのみ……!!」
闇忍たちは口々に叫ぶ。
確かに、道場に行けば準師範や上位の門弟と戦うことになるだろう。
そのようなことは百も承知だ。
しかし……。
「『戦いを挑む』だと? 貴様らは勘違いしているようだな」
俺は言う。
闇忍たちは、何を言われているのか理解できない様子だ。
「戦いなど始まらん。これから行われるのは……一方的な『蹂躙』だ」
「な、何だと……!?」
闇忍たちは驚愕している。
だが、もう遅いのだ。
俺は闇の力をさらに解放した。
そして、その力で彼らを強く拘束する。
これで彼らは動けない。
身をよじることも、叫び声を上げることすらできない。
「ぐあっ……!」
「ううっ……!!」
闇忍たちは苦しそうな声を出す。
だが、それだけだ。
もはや抵抗らしい抵抗は不可能である。
俺は彼らに告げる。
「安心しろ。命までは奪わん。……今はな」
心の奥底から湧き上がってくる闇の感情。
それに身を任せつつある今、彼らを殺すことに躊躇いはない。
だが、俺には優先すべき事柄がある。
桔梗の救出だ。
もし彼女が既に害されていたら、そのときは……。
「――【ブラックアウト・レクイエム】」
俺は闇魔法を発動する。
闇魔法は未習得だったはずだが、何だか今なら使える気がしたのだ。
その魔法により、彼らは意識を失う。
「さて……と」
俺は周囲を見回す。
そして、倒れている無月へと近づいた。
彼女の首にはクナイが刺さっており、大量に出血している。
「別に助ける義理はないが……。あとで『有効活用』できる可能性はあるか……」
俺は彼女に治療魔法を使う。
すると、出血が止まった。
これで命の危険はないはず。
「……雷轟とかいったか。奴の後ろ盾は景春だろうが……今回の件の現況は雷轟だろう。奴を潰し、桔梗を救出する。待っていてくれ、桔梗……!」
俺は呟く。
そして、雷轟のいる雷鳴流道場の門を通るのだった。
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