【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1035話 闇は全てを覆い隠す

公開日時: 2023年5月28日(日) 12:05
文字数:1,852

 少女が助けを求めてきた。

 ダダダ団に狙われているらしい。

 だが、俺は元々奴らを潰すつもりだった。

 彼女個人を助ける必要ない。

 俺が奴らを潰せば、結果的に彼女は助かる。

 それで十分だろう。


「我らはダークガーデン。闇に潜み――闇を狩る者。我らは何者の指図も受けぬ」


「で、でも……。このままじゃ……」


「くどいな。俺はナイトメア・ナイト。闇の世界を統べる王。お前ごときが口出しできる存在ではない」


「そ、そんな……。お願いします! あなただけが頼りなんです! 私を助けてくれたお姉ちゃんたちも、連れ去られてしまいました……。どうか……この通りです」


 少女が地面に額をこすりつけて懇願してくる。


「……」


 俺は無言でその姿を見つめていた。

 まだ幼い少女の全裸土下座。

 服を燃やしてしまったのは俺の火魔法なわけだし、すごく悪いことをしている気分になる。

 こう、得も言えぬような背徳感が……。


 ――いや待て。

 彼女、気になることを言ったような……。


「『お姉ちゃんたち』だと? お前には姉がいるのか?」


「あ、えっと……。そうじゃなくて、ダダダ団に襲われている私と助けてくれた通りすがりのお姉ちゃんたちがいたんです。でも、最後はダダダ団に負けてしまって……」


「……なに?」


 俺は思わず聞き返す。

 通りすがりの『お姉ちゃんたち』はダダダ団に歯向かったのか。

 マフィア相手に、無謀なことをするものだ。


「ふむ。今のお前が無事なのは、そのお姉ちゃんたちのおかげ。そういうことだな?」


「は、はい」


「彼女たちの特徴は?」


 俺はダダダ団を潰して終わりにするつもりだった。

 この少女は、ダダダ団さえ壊滅すれば平和に過ごせるだろう。

 ただ、さらわれてしまった少女がいるのであれば話は別だ。

 アジトを襲撃する際に、救出しなければならない。


「え、えっと……。3人組でした。冒険者だったみたいです」


「ほう、3人組の女冒険者とは珍しいな」


 俺は思わずつぶやく。

 俺の知る限り、女性だけの冒険者グループというものはあまりいない。

 ましてや、この少女が『お姉ちゃん』と認識するぐらいの年代で、わずか3人だけのパーティというのは非常に稀有だ。


「どのようにして負けたのだ? 一矢は報いたのか?」


「ええっと、『三位一体』っていう何だか凄い魔法で攻撃していたんですけど……途中からダダダ団が魔道具を使って対抗してきました。それで……お姉ちゃんたちは捕まってしまいました。スラム街の北区にある奴らのアジトへ連れていかれて……」


「……!! なるほどな……」


 事情は分かった。

 彼女が言う『お姉ちゃんたち』というのは、エレナたち『三日月の舞』のことだ。

 奴隷狩りに遭いそうになっている少女を見て、居ても立っても居られず助けに入ったのだろう。

 そして、結果は敗北。


 古都オルフェスを拠点とする地元マフィアのダダダ団が使うような魔道具だ。

 おそらく、何らかの強力な効果を発揮するのだろう。

 それを受けて、彼女たちは負けてしまったのだ。


「状況はだいたい把握できた。俺に任せておけ。――闇は全てを飲み込む。深淵の恐怖を思い知らせてくれる」


 俺はニヤリと笑う。

 そして、マントを翻す。


(キマったな)


 俺は心の中でガッツポーズを決める。

 だが――


「ちょ、ちょっと待ってください」


「……まだ何かあるのか?」


 カッコよく立ち去ろうとしている男を呼び止めるものじゃないぞ。

 ……なんて思いつつも、俺は素直に立ち止まる。


「あ、あのですね……」


「言いたいことがあるなら早く言うがいい」


「服を……貸してくれませんか……? 何かの切れ端でも何でもいいんですけど……。は、裸は恥ずかしくて……」


「……ああ、いいだろう」


 元はと言えば、俺の火魔法のせいだ。

 俺はアイテムボックスから子ども用のパンツと服を取り出して彼女に渡す。


「ありがとうございます!」


 彼女は礼を言うと、すぐさま着替えを始める。

 俺はその様子をじっと見つめる。


「あの……」


「なんだ?」


「そんなに見られると恥ずかしいです……」


「気にするな」


 俺は真顔で答える。

 真正面から堂々と見れるチャンスを逃すわけにはいかないからな。


「うぅ……というか、どうして女の子用の下着を持ち歩いているんですか? まさか、あなたは変態さんでは――」


「くくく……。闇は全てを覆い隠す。俺のことなど詮索しても無駄だ。――さぁ、もう言い残すことはないな? 俺は行くぞ。漆黒の鍵盤で闇のハーモニーを奏でよう……」


 俺は彼女の言葉を遮るように告げる。

 これ以上、長話をしていても仕方がない。

 俺は彼女から聞き出した情報を元に、ダダダ団のアジトへ向けて歩き始めたのだった。

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