【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

577話 豊作

公開日時: 2022年2月20日(日) 12:04
文字数:2,140

 1週間ほどが経過した。

 今日は、ラーグの街の外にある畑地帯に来ている。


「ほう。ずいぶんと豊作だな」


 俺は、一面に広がる畑を見てそう言った。


「はい。これも、お館様やニム様のおかげです」


「ハイブリッジ騎士爵領で、飢える者などもういないでしょう」


 ニルスとハンナが感慨深げに言う。

 彼らは、領外の村にて口減らしのために奴隷となった。

 飢えの克服に対する熱意は人一倍強い。


「それはいいことだな。2人ともよく頑張ってくれた。もちろん、ニムと花もだ」


 俺はそう言って、4人を労う。


「え、えへへ。嬉しいです」


 ニムが照れ笑いしながら応えた。


「花ちゃん、がんばったよね~。しばらくはゆっくり過ごさせてもらおうかな~」


 花が幸せそうにそう言う。


「ああ。たっぷりと休むといい」


 労働嫌いなのに、よくやってくれたものだ。

 今後も末永くハイブリッジ家に貢献してくれるよう、英気を養ってもらうことにしよう。


 その後、4人の指示の元で領民や雇われ冒険者たちが動き、農作物がどんどん収穫されていく。

 この光景を見るだけで、本当にこの領の未来が明るいことが実感できる。


「ところで、お館様」


 作業中に声をかけられたので振り返ると、そこにはニルスがいた。


「どうした?」


「いえ、あの……少し相談がありまして……」


 何だか歯切れが悪い感じだ。


「ん? 何だ?」


「はい……実は、その……」


 彼が言いよどむ。

 そこにやって来たのが、ハンナだ。

 彼女はニルスをチラッと見ながら、俺の方へ顔を向ける。


「相談したいのは、報酬の件です。奴隷の身で、このようなことを言うのは烏滸がましいのですが……」


 ハンナが遠慮がちにそう言う。

 ニルスとハンナは、2人とも俺の奴隷だ。

 奴隷である以上は、主人のために働くのは当然の義務である。


 この国は人権意識が結構しっかりしているので、生殺与奪の権までを俺が握っているわけではない。

 しかし、働きに対する報酬や待遇を決めるのは主人に一任されている。

 最低限の衣食住さえ与えていれば、本来は無報酬でも全く問題はない。


「ああ。農業改革が無事に成功すれば、報酬として2人の故郷に食料支援をするという話だな? もちろん覚えているとも」


 俺はそう言う。

 主人と奴隷という関係性のもとで交わされた口約束だ。

 反故にしてしまっても、誰も文句は言えない。


 だが、もちろん反故になどしない。

 忠義度を稼ぐためだ。

 彼ら2人に加護(小)を付与できれば、ハイブリッジ家の未来はさらに明るくなる。

 また、例のミッションの達成に向けて大きく前進することになる。


 そもそも、下手に約束を破ったりすれば、心優しいミティやアイリスが黙っていないだろうし。

 約束を履行する以外の選択肢はない。


「あ、ありがとうございます! 覚えていてくださったとは!」


 ニルスがそう喜ぶ。


「だが、喜ぶのはまだ早いぞ? 豊作は間違いないようだが、具体的な収穫量はまだ不透明だ。一定の食料援助をしてやることまでは確定したが、今後の頑張り次第では更に追加の援助ができるかもしれない」


「はい。心得ております。微力ではありますが、精一杯働かせていただきます」


「私も、全力を尽くします」


 ニルスとハンナがそう言う。


「ああ。期待しているぞ」


 2人の忠義度は、後少しで40に達しそうだ。

 早く加護(小)の条件を満たしてほしい。

 さらなる豊作に期待しよう。


「それじゃ、引き続き頑張ってくれ」


 俺はニルスとハンナの肩をポンと叩いて、その場を離れた。

 そして、ニルスとハンナの様子を窺っていたニムに話しかける。


「ニルスたちについてどう思う?」


「と、とてもよく頑張ってくれていましたよ。あの2人は、タカシさんのためなら大抵のことはするでしょう」


 ニムが真面目な顔でそう言った。

 彼女の言葉からは、ニルスとハンナへの強い信頼が感じられる。

 実際のところ、忠義度40前後は『タカシのためなら大抵のことはする』というぐらいの感情なのだろう。

 これが忠義度50となると、『場合によっては命すら投げ出す覚悟がある』ぐらいの感情なのかもしれない。


「そうか……。俺も頑張らないとな」


 各種のチートスキル頼みとはいえ、忠義度40や50を超えている者がずいぶんと多くなってきた。

 彼らの信頼に応えられるよう、俺も気を引き締めていかなければならない。


「彼らは、あと少しで例の条件を満たしそうなのだが……。故郷への食料援助以外で、何か案はないだろうか?」


 故郷への食料援助を一定以上行うという確約をしたことで、忠義度が少し上がった。

 このままでも、収穫が順調に進めば、忠義度は微増していくだろう。

 そして実際に食料援助を行うに至れば、さらに忠義度は上がるはずだ。

 場合によっては、彼ら自身に故郷へ届けてもらってもいい。


 その段階まで来れば、加護(小)の条件を満たしている可能性が高い。

 今、これほど焦る必要はないのだが……。

 可能であれば、早めに加護(小)を付与しておきたい。

 本当にあと少しなんだよな。


「そ、そうですね……。では、こういうのはどうでしょうか?」


 ニムが俺に耳打ちする。


「ふむ……。なるほど。悪くなさそうだ。その案を試してみるか」


 俺はニムの案を快諾した。

 忠義度40に到達できるかは別として、少なくとも下がる可能性は低いだろう。

 ミティやアイリスのアドバイスも貰いつつ、計画を進めていくことにしよう。

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