その後、アビス・オクトパスの解体が行われ、みんなで美味しくいただいた。
水中につき、タコ焼きをできないのが残念である。
まぁ、俺の火魔法を応用すればちょっとした加熱処理ぐらいはできるし、大きな問題はない。
「……さて。防壁の補修作業に戻ろうか」
タコを食べた後。
俺たちは防壁の補修作業に戻った。
作業員たちと協力して、また新たな防壁を造り上げていく。
「……あ、しまった。すまねぇ、人族の兄ちゃん」
「ん?」
作業中、リーダー格の男に声をかけられる。
「どうしたんだ?」
「いや、補修用の石材が足りそうにないんだ。兄ちゃんのおかげで、かなりのペースで進んだからな……」
「なるほど。そんな問題が……」
俺たちが行っている作業の内容を再整理しておこう。
まず、人魚の里を囲うように超巨大な天然の岩石が配置されている。
その隙間を埋めるように、そこそこの岩を人力で積んでいく。
隙間を埋め終えたら、魔力を利用していい感じに固定する。
これをひたすら繰り返していくわけだ。
しかし、この作業は簡単ではない。
単純に肉体労働として過酷なことに加え、別の難しさもある。
石材として使える岩は、その用意にも手間がかかるのだ。
ここにいる作業員とは別に、石の採掘や運搬を行っている者がいるようだが……。
俺が張り切ったこともあり、補修作業にて石材を使っていくペースの方が段違いに早くなった。
そのため、全体としてのペース配分が乱れてしまったらしい。
「ふぅむ。そういうことなら……」
俺は考える。
アイテムルームを活用すれば、石材を一気に運ぶことも可能だろう。
俺の出番だ。
……いや、それはちょっと微妙か?
チートスキル『ステータス操作』で『魔力強化』などを伸ばしている影響で、俺のアイテムルームのスペースはかなり広くなっているが……。
今は、ヤマト連邦に向けた物資がたくさん入っている。
これまでの船旅でそれなりに食料などを消費してきたが、まだまだ入っている。
大量の岩をアイテムルームで運搬するには、まずはそれらの物資を出さないといけない。
ちょっと手間だし、盗難や紛失のリスクがないこともない。
ここは――
「【クリエイト・ブロック】」
俺は土魔法を発動し、石材を生成した。
アイテムルームを利用するより、こっちの方が無難だ。
「こ、これは……!?」
驚く作業員たち。
そんな彼らに向けて、俺は言う。
「どうだ? 防壁として利用できる水準に達しているか?」
「ああ……! 十分すぎるぜ!! これなら補修作業も捗る!!」
「そうか。それはよかった」
安心した。
俺の土魔法は、まだレベル3までしか伸ばしていなかった。
ステータス強化系の『魔力強化』などを伸ばしているので、そこらの中級土魔法使いよりも上だとは思うが……。
火魔法や水魔法あたりと比べると、あまり自信がない。
防壁として使えるレベルに達しているか、少し心配だったのだ。
「しかし、兄ちゃんはこんなこともできたんだな。最初からやってくれても良かったんだが……」
「いや、それは無理だった。左足に『魔封じの枷』をされていたからな。アビス・オクトパスとの戦闘でそれが取れてしまったから、こうして生成できるようになったんだ」
「なるほどなぁ……」
「ま、不幸中の幸いってやつだ」
俺は笑う。
エリオット王子が帰ってきたら、拘束が外れていることに対して小言を言われるかもしれないが……。
その時はその時だ。
「さて、作業を続けようか」
こうして俺は作業員たちと一緒に、防壁の補修作業を続けるのだった。
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