【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1260話 修羅場

公開日時: 2024年1月10日(水) 12:04
文字数:1,895

 左手を解放された俺は、さっそくメルティーネを可愛がることにした。

 両腕で彼女を抱きしめ、頭を撫で、口唇にキスをする。


「はわわ……ナイ様ぁ……」


 メルティーネが真っ赤になって照れる。

 そんな反応も可愛らしいな。

 だが、俺の行動は少々迂闊だったようだ。


「ふざけるなよ! 人族などに、義兄上と呼ばれる筋合いはない!!」


 エリオットが激怒している。

 人族への偏見が控えめだった彼だが、やはり少しぐらいはあったのだろう。

 俺とメルティーネの急接近により、人族への拒絶反応を引き起こしてしまったらしい。


「まぁ待て、エリオット王子」


「黙れ! 貴殿の言葉など聞くつもりはない!!」


 エリオットは激昂する。

 だが、これで『はいそうですか』と引き下がるわけにはいかない。

 王子である彼から俺への評価は重要だ。

 ミッション『10人以上の人魚族に加護(微)を付与せよ』を果たしていくためにも、エリオットからの評価を回復しておく必要がある。

 俺はメルティーネの頭を撫でながら、彼女に問う。


「メルティーネ……。義兄上が怒っているぞ? どうしたらいいと思う……?」


「は、はい……。えっと……」


 メルティーネは少し悩むと、すぐに答えを出した。

 そして、エリオットに向かって言う。


「エリオット兄様! ナイ様をいじめちゃダメですの!」


「なっ……」


 エリオットが呆気にとられる。

 まさか、メルティーネに言い返されるとは思わなかったのだろう。

 だが、そのおかげで少し冷静になったようだ。


「いや……俺は別にいじめているわけでは……」


 エリオットはそう反論する。

 だが、メルティーネの勢いは止まらない。


「ナイ様は私の恋人ですの! とっても優しくしてくれますし……キスもしてくれましたの! 将来は子どもを何人もつくって幸せに暮らす予定ですの! そのナイ様に、エリオット兄様は意地悪をするんですの!?」


「お、おい……メルティーネ……?」


 今度は俺が面食らう。

 メルティーネがここまで饒舌に、しかも情熱的に語り出すとは……。

 意外な一面を見た気がする。

 だがメルティーネが語れば語るほど、エリオットの顔色が悪くなっていく。


(これはこれで、やりづらいな……)


 あくまで予定だが、エリオットは義兄になる存在だ。

 年齢は俺の方が少し上っぽいが、メルティーネの兄である以上は敬意を示す必要がある。

 エリオットからの評価を回復するためにも、ここは俺たちが引いておいた方がいいかもしれないな。


「メルティーネ、少し落ち着――」


「ふぁああ……。なんだか、騒がしいですね。何かあったんですか……?」


 メルティーネを落ち着かせようと声をかけたとき、そこに第三者の声が聞こえてきた。

 それは、人魚族の少女の声であった。


 彼女の声はどこから聞こえたのか?

 護衛兵たちの中?

 洞窟の入り口方面?

 いや、違う。

 彼女の声は、俺のベッドの方から聞こえてきたのだ。


 そこには、一人の少女がいた。

 彼女は俺のベッドの上に横たわり、俺やエリオットたちに目を向けている。


(……マズイ!!)


 俺の中で警報が鳴り響く。

 ベッド上の少女は全裸だった。

 そしてもちろん、知らない者ではない。

 メルティーネの侍女、リマである。

 俺は慌てて彼女に駆け寄り、毛布を掛ける。


(ナイト様……?)


(しっ! 静かに!)


 俺は小声でリマに指示を出す。

 だが、時すでに遅しだった。

 エリオットが叫ぶ。


「おい! 誰だ、その女は!?」


 エリオットの怒声が響き渡る。

 毛布の中のリマは、驚いた様子で身体をすくめている。

 そんな彼女をかばうようにして、俺は叫ぶ。


「待て! 誤解だ!!」


「何が誤解だ! 裸の少女を床に招いていたなど……」


 エリオットが追及する。

 だが、このまま押し切るしかない。

 俺はリマをかばいながら反論する。


「ただの種族間交流だ! お互いの体の仕組みについて、教え合っていただけだ! 人魚族と人族の体の仕組みがあまりにも違うから、勉強していたんだ!!」


「嘘だっ!!! いかがわしいことをしようとしていたに違いない!!」


 エリオットは聞く耳を持たない。

 他の護衛兵も、彼に同調するような声を発している。


(マズイな……)


 俺は心の中で焦る。

 こんなことなら、リマとの交流は控えておくんだった。

 エリオットの訪問が突然だったので、毛布の中で寝かしたまま放置するしかなった。

 彼との会話が白熱したせいで、リマが起きてしまうとは想定外である。


「……ええっと。ナイ様、エリオット兄様……」


「おお、メルティーネ! なんとか言ってくれ!!」


「メルティーネ、お前も許しがたいだろう!? この男はとんでもない浮気性だぞ!!」


 俺とエリオットは、それぞれメルティーネに加勢を求める。

 なかなかカオスな状況だ。

 次のメルティーネの一言はとても大きな意味を持つぞ……。

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