【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

865話 リンドウ会議

公開日時: 2022年12月8日(木) 12:25
文字数:2,390

 俺はヤックルという男を、『リンドウ』の治安維持隊隊長に任命した。

 ちなみにリンドウというのは、採掘場周辺に広がる街のことだ。

 ラーグの街に比べるとまだまだ小さいが、それでも少しずつ住民が増えてきた。


 最初は、俺たちが捕らえたブギー盗掘団にそのまま採掘を任せていた。

 その後トリスタなどの采配により、一般の鉱夫を追加した。

 『意外に悪くない労働環境だった』『いや、むしろ普通に街で働くよりも稼げる』などという口コミが広がり、腕力自慢の男たちが周辺の街からやって来るようになった。

 宿泊施設、道具屋、マッサージ屋、食堂などなど……。

 リンドウの施設はどんどん充実していっている。


 そして今回、黒狼団、白狼団、闇蛇団、灰狼団などといった無法者の鉱山奴隷たちを大量に追加した。

 領都であるラーグにはまだ及ばないものの、それなりの規模になってきたと言えるだろう。

 そろそろ治安の乱れが不安なところだった。

 ラーグの街の衛兵をシフト制で派遣してはいたが、どうしても限界があるからな。

 ヤックルが今後のリンドウの平和を守っていくことになる。


「さて。それでは、場所を移して話をしようか。とりあえず落ち着ける場所に案内してくれ。ヤックル、お前も来い」


「はい!」


「タカシ殿、こちらに部屋を取っております。ご案内します」


 俺たちは、ジョー副頭領の後について行く。

 群衆たちも、自然と道を開けるように左右に分かれた。


 案内されたのは、大きめの会議室のような部屋だ。

 中に入ると、既に数名の人間が席に座って待っていた。

 ブギー頭領、ジョー副頭領、ケフィ統括あたりに次ぐ、この採掘場の幹部クラスの面々だな。


 俺は上座に案内される。

 キサラとトパーズは、とりあえず俺の後方で待機だ。

 ちなみにマリア、リン、ロロ、ノノンは、会議には不参加でこの街を見て回っている。


「みんな、今日は集まってくれてありがとう。さっそくだが、報告を頼む」


「ハッハ! まずは採掘量の増減についてだが――」


 そこからは、ブギー頭領を始めとした幹部たちからの報告が続く。

 採掘量の増加傾向、予想外なトラブルの発生、周辺区域の開発状況など。

 一通り話を聞いて、俺は大きくうなずく。


「よし。それじゃあ、それぞれの対策を練ろう。まずは――」


 それから1時間ほどに渡って話し合いが行われた。

 採掘量を増やすための工夫や、新たな技術の導入、トラブルへの対処方法などだ。

 採掘場の未来を担う重要な案件だけに、みな真剣に取り組んでいるようだ。

 彼らは優秀なので、俺はかなりの権限を彼らに認めている。


 それなのに俺がわざわざやってきた理由は、大きく3つ。

 領主でしか判断できないような判断を行い許可を与えること。

 ちょっとした現代知識チートを活用して多少のアドバイスを行うこと。

 そして、実際に現場を視察して状況を確認することだ。


 なんでもかんでも俺が手を下すわけではないので、会議も極端に長引いたりはしない。

 一通りの議題を処理し、ヤックルの紹介も終えた。


「――よし。これで今日の議題は終了だな。明日以降も引き続き頼む」


「ハッハ! 任せておけ!」


「タカシ殿の援助のおかげで、ますます採掘が進むというものです」


「大頭領さまの采配があれば、このリンドウの発展は確約されたようなものです。私もがんばっていきます!」


 ブギー頭領、ジョー副頭領、ケフィ統括が口々に言う。


「おう。期待しているからな」


 俺がそう返すと、3人を始めとした幹部陣は笑顔を浮かべた。


「ところで、そっちの嬢ちゃんたちは一体誰なんだ? ただの見学か?」


「おっと……忘れるところだった。この2人は、それぞれ黒狼団と闇蛇団の構成員だった女たちだ」


「ふむ……。最近追加された、あの荒くれ者たちの仲間か」


「そうだ。先ほどの報告では、大きな問題はなく働いてくれているようだったな。この2人にも、今後はリンドウで働いてもらおうと思っている。――ほら、2人とも。自己紹介しろ」


 俺はキサラとトパーズを前に押し出した。

 すると渋々といった感じで前に出た。


「オレはキサラだ。タカシ親分の命令だから仕方なく働くが、オレはお前らの部下になんてなるつもりはないからな。そこをよく覚えておけよ!」


 ふんっと鼻息を荒くしながら、堂々と言い放つ。

 うーん……。

 まだまだ反抗的だな。

 俺は女に甘いから、厳しく指導するのは苦手なんだよなぁ……。


「私の名前はトパーズ。上司は男爵様です。それに、かつての上司であるロッシュ様もこちらで働いているはず……。いずれは私たち『旧・闇蛇団』の勢力がこの街を支配しますので、覚悟しておいてくださいな」


 にっこりと微笑みながら、朗々と語る。

 おおぅ。

 なんか凄いこと言ってるな……。


「おい、嬢ちゃんたち。それはどういう意味だ!?」


「はい? そのままの意味ですけど」


「あ、あなたねぇ!!」


 ケフィを始め、数人の幹部たちが激高して立ち上がった。

 あまり良くない雰囲気だ。


「やめろ、みんな」


「ぐっ……」


 俺は、今にも飛びかかりそうな勢いで立ち上がったケフィたちを制する。


「ケンカを売ってどうする。彼女たちは元盗賊なんだから、少々態度が悪いぐらいは許してやれ」


「し、しかし!」


「いいから座れ。これからは一緒に仕事をしていく仲間になるんだから、仲良くやっていこうぜ」


「……納得できません! いくら大頭領のご指示であっても、こんな人たちと……」


 ケフィを始め、他の幹部たちも不満げだ。

 まぁ、気持ちは分かる。

 というか、俺も計算外だった。

 キサラとトパーズが、まだこれほどの反抗心を持っていたとは……。


「なら、こうしよう。俺がこの2人を”説得”する。数時間後、生まれ変わった2人の様子を見て最終判断をしてくれ」


「……わかりました。タカシ殿がそこまで言うのであれば」


「ハッハ! 楽しみにしてるぞ!」


「大頭領のご命令なら、仕方ありませんね」


 幹部たちに見送られつつ、俺はトパーズとキサラを連れて、大会議室を後にしたのだった。

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