【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1621話 幽蓮の件

公開日時: 2025年1月8日(水) 12:10
文字数:1,117

「俺の理解が不十分だったようだ。無闇にお前たちを怖がらせてしまった。すまない」


 俺は頭を下げ、素直に謝罪する。

 藩主としての威厳を保つため、過度にへりくだる必要はないが……。

 必要以上に怖がらせる必要もない。

 この女中たちは異常に怯えてしまっているし、下手に出てあげるぐらいがちょうどいいはずだ。


「い、いえ! そんな滅相もない!!」


「そ、そうです! お顔をお上げください!!」


 女中たちは慌てて言う。

 下手に出る作戦は、そこそこ成功か?

 少し恐怖心が薄れているように見える。


 しかし、まだどこかぎこちない。

 藩主と平民の関係性とか、過去に『変態』と罵っただけではこうはなるまい。

 この反応のぎこちなさは、いったいどこから来ているのだろう?


「高志様、彼女たちは……」


「ん?」


 紅葉が何かを耳打ちしてくる。

 ふむ……。

 ああ、そういうことか!

 俺はようやく納得する。


「幽蓮の処刑を耳にして、怯えているのか」


「は、はい……」


 女中が小声で答える。

 なるほどな。

 彼女たちのこの反応は、幽蓮の件が原因か。


「しかし妙だな? 情報統制はしていたはずだが……」


「あ、あの……遠目ですけど、首だけになった幽蓮殿を見てしまって……」


 あー、あれか。

 そうか。

 あのシーンを目撃してしまっていたのか。

 ならば、ここで言うべきは……


「お前が見た通り、幽蓮は反逆罪で処刑した。しかし、お前たちはただの女中だ。過去の出来事を蒸し返して処罰するつもりはない」


「ほ、本当ですか?」


「ああ、もちろんだ」


 俺は力強く断言する。

 城内の治安を維持するため、俺に歯向かった者を放置することはできない。

 幽蓮のように直接的な武力行使をしてきた者は重罰の対象だ。

 俺に向けて罵詈雑言を放った者がいれば、多少の罰は必要だろう。

 しかし、藩主になる前の出来事を処罰するつもりはない。


 これは……あれだ。

 確か、法の不遡及というやつだな。

 藩主や法律が変わる度に過去を蒸し返して処罰されるとなると、人々が安心して暮らせない。

 法にはいくつかの原則があるが、その中でも不遡及は重要度の高い項目だ。


「あ、ありがとうございます!!」


「礼には及ばない。当然のことだ。ただし――」


 俺の言葉を聞いて、女中たちは安心したかのように大きく息をつく。

 そんな中、俺は言った。


「俺を襲ってくるなら、話は別だがな。ほら、やってみるか? 心臓に短刀でも突き刺せば、謀反者の俺を殺せるぞ?」


「い、いえ……っ」


「そ、そんな……」


 女中たちは顔を青くする。

 彼女たちの忠義度は低くないが、それでも恐怖心の方が強いか。

 これでは仲良くなれそうもない。


 まぁいい。

 今はこれでいいだろう。

 幽蓮の件は、確かに効いている。

 桜花七侍の懐柔も順調に進行中。

 そろそろ……景春の処遇について決定を下そうかな。

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