「……はっ! ここは……?」
気がつくと、暗い空間にいた。
なんだか海の底にいるような感覚だ。
『ココハ海神ノ大洞窟……ソノ最深部デアル。矮小ナル者ヨ、貴様ノ力ヲ見セテモラオウ』
重苦しい声が響く。
間違いない。
これは海神ポセイドンの声だ。
そして、ここは『海神の大洞窟』の最深部らしい。
俺が拠点としていた場所の奥に、こんな場所があったとは。
『我ノ試練ヲ受ケヨ……。見事、コノ試練ヲ突破スルコトガデキレバ……我ノチカラヲ貸シ与エヨウ……』
「おお……?」
俺は今、ポセイドンに存在を認知してもらっているらしい。
仮にも『神』の名を持つ存在から個別に認識されるというだけでも、結構な偉業なのではないだろうか?
「力を貸してもらえるのか。それは助かるぜ」
『試練ヲ突破スレバノ話ダ……。人ノ子ヨ……』
「ああ、分かってる」
ポセイドンの言いたいことは分かる。
誰にでもホイホイと力を貸す神はいない。
ポセイドン自身も、『試練』を乗り越えられない人間には力を貸さないのだろう。
「……それで、試練ってのはなんだ?」
『戦闘ダ……』
「ほう? バトルか……。それはいいな」
俺は好戦的な笑みを浮かべてみせる。
神と戦うなど、滅多にない機会だ。
いい経験になるだろう。
『勘違イスルナ……。貴様ガ戦ウノハ我ガ眷属達ダ……』
「なに?」
『出デヨ……。我ガ眷属達ヨ……』
ポセイドンの声に応えるように、周囲の海水が脈動した。
現れたのは――リトルクラーケンとアビス・オクトパスだった。
「これが眷属?」
こいつらは魔物だ。
これらを眷属として従えているということは……海神ポセイドンも魔物なのか?
いや、あれか。
ポセイドンの眷属は海の精霊とかで、それらが魔力でリトルクラーケンの姿を再現しているのかもしれない。
「まぁ、なんでもいいか」
相手が魔物だろうが精霊だろうが関係ない。
俺はただ戦うのみだ。
「やってやるぜ!」
俺は剣を構えた。
ちなみに、エリオットにやられた『海神の呪鎖』はまだ解除できていない。
まぁこれぐらいの相手なら何とかなるだろう。
「はっ! せいっ! うりゃあああ!!」
リトルクラーケンとアビス・オクトパスに斬りかかる。
2体の魔物は、あっという間に黒い粒子となって霧散した。
「ふん……。余裕だな」
俺は剣先をポセイドンがいるであろう方向に向ける。
「さぁ、次の相手はどいつだ!?」
『見事ダ……人ノ子ヨ……』
ポセイドンの声が脳内に響く。
『見込ミ通リ、最低限ノ実力ハアルヨウダ……。シカシ、コレカラガ本番デアル……!』
「なに?」
次の瞬間――強いプレッシャーが俺に降り注いだ。
『グオオォオオオッ!!』
「うおっ!?」
俺は思わず飛び退る。
いつの間にか、目の前に巨大な生き物が2体も現れていた。
こいつらは――まさか!?
「アビス・サーペント……? それに、クラーケンか?」
俺はつぶやく。
先ほどのリトルクラーケンやアビス・オクトパスもそこそこ強い魔物だ。
アビス・サーペントやクラーケンは、そのさらに上位に位置する魔物である。
どちらも強敵だ。
……普通なら。
『サア、倒シテミヨ……人ノ子ヨ。チカラヲ振リ絞ルガイイ』
ポセイドンは余裕たっぷりに告げる。
だが――
「力を振り絞る? その必要はない」
俺はニヤリと笑ってみせた。
「こいつらなんか、俺の敵じゃないんだよ」
俺はあっという間にアビス・サーペントとクラーケンを倒した。
ぶっちゃけ、今の俺の敵ではない。
アビス・サーペントは、ついさっきも倒したしな。
「どうした? もう試練とやらは終わりか?」
『……見事ナリ。マサカ、我ガ現世ニ出向クコトニナルトハ……』
「ん? 現世に出向く?」
『久々ノ現世……。楽シマセテモラオウ……』
ポセイドンが告げる。
それと同時に――
周囲をまばゆい光が包み込んだのだった。
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