【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1001話 ダダダ団

公開日時: 2023年4月24日(月) 12:25
文字数:1,869

 俺はチンピラのリーダー格であるヨゼフを倒した。

 彼の攻撃に合わせて怯えたようにしゃがみ込み、金的攻撃を行ったのだ。

 それを二回も繰り返した上、四つん這い状態の彼の股間部真下から土魔法で追撃を行った。

 彼は完全に戦闘不能だ。


「急病みたいですねぇ……。ここは一度お引取りいただいた方がよろしいと思いますよ」


 俺は心配そうな声を出して問いかける。

 我ながら見事な演技だ。


「て、てめぇのせいだろうが! お前が変な動きで急にしゃがむから……」


「し、しかし……。それにしては、この苦しみ方は明らかに異常では……?」


 俺はそう言う。

 実際、二回の金的攻撃では不十分だった。

 デリケートな部分とはいえ、相手の勢いを利用しただけの頭突きだからな。

 ヨゼフのように精神力の強い者なら、気合いで耐えきることも可能だ。


 そこで俺は、土魔法によりひっそりと攻撃を加えたわけである。

 この攻撃には誰も気づいていないため、ヨゼフの苦しみ方は不自然に見えるはずだ。


「くっ……。こうなりゃヨゼフの兄貴の弔い合戦だ!」


「おうよ! 兄貴の仇は必ず討つ!!」


「そうだ! このまま手ぶらで帰れるかってんだ!1」


「野郎ども、一斉にかかるぞ!!」


「「おおっ!!!」」


 チンピラたちが叫ぶ。

 この方向に転がってしまったか。

 リーダー格を倒されたチンピラの取る行動として、最もありがちな展開だ。

 もう少し賢ければ、『とりあえず撤退』という選択肢もあったはずなんだけどな。


(仲間意識が高いというか、単純にバカなのか……)


 どちらにせよ、このままではマズイ。

 いくらチンピラと言えど、これだけの数が暴れるのは危険だ。

 早急に無力化する必要がある。

 しかし、ここで俺が実力を見せれば目立ってしまう。


(逃げるか……? いや、ダメだな)


 自分の身だけを考えるのならばそれもありだが、そもそもの目的が達成できなくなる。

 俺という異分子を排除した彼らは、次にサーニャちゃんに手を出す可能性が高い。

 それは避けたいところだ。


(とはいえ、この人数を叩きのめすのはもっとマズイし……。ヨゼフのように事故に見せかけた金的攻撃で無力化するのが一番楽だが、さすがにこの人数全員を金的攻撃で悶絶させると不自然だ。目立ってしまう……)


 俺は頭を悩ませる。

 何かいい方法はないだろうか。

 ……うーん、ないなぁ……。


「げひゃひゃ! 死ねやぁっ!!」


 1人の男が拳を振り上げ、俺に襲いかかってくる。

 その男の動きは、それなり程度だ。

 俺の動体視力と反応速度なら問題なく対応できるレベルだが――


「ぎゃあああぁっ!!」


 俺は男の拳で殴られ、悲鳴を上げる。

 悲鳴はもちろん演技だが、殴られたのは見せかけではない。

 この場を上手く切り抜けるいい選択肢が思い浮かばなかったので、大人しく殴られることにしたのである。


「へっ! ザコが調子に乗りやがって!! オラァッ!!」


 別のチンピラも殴りかかってくる。

 俺はあえて抵抗せず、されるがままに攻撃を受け続けた。


「ぐっ……! がふっ……! はぁ……はぁ……」


 俺は苦痛の声を上げ続ける。

 俺の体はみるみると傷ついていく。


(実際、そこそこ痛いなぁ……。身を守る闘気も、常時治療魔法の『リジェネレーション』も切っているし……)


 こんなことになるなら、スキルの『痛覚無効』を取っておくべきだったかもしれない。

 いや、どちらかと言えば『触覚強化』の方が汎用性があるか……?

 触覚を強化すれば、感覚が鋭敏になって痛みに弱くなるように思えるかもしれない。

 だが、おそらくその心配は無用だ。


(五感強化系のスキルは、俺はすでにいくつかを取得しているからな……。ある程度、仕様は把握している)


 俺が持っている五感強化系のスキルは、『視力強化』と『聴覚強化』である。

 それぞれの感覚が鋭敏になるのが主な効果だが、それ以外にも副次的効果がある。

 眩しい光や大きな音に対する耐性の向上、目や耳の物理的な耐久度の向上などだ。

 ならば、『触覚強化』を取得した場合はどうなるか?

 感覚が鋭敏になるのは当然として、『強い痛みに対する耐性の向上』や『各部位の物理的な耐久度の向上』などが期待できるはずだ。


(まぁ、そこまでするほどでもないか……。他にも役に立ちそうなスキルはあるし……。ここは気合いで我慢しよう……)


 俺がそんなことを考えている間にも、チンピラたちの暴力は止まらない。

 体にどんどんダメージが蓄積していく。


「へへっ! 思い知ったか?」


「まだまだ、こんなもんじゃねぇぜ? 泣く子も黙る極道マフィア……俺たちダダダ団の力を思い知らせてやる!」


「ヒャハハ! 覚悟することだなぁ?」


 チンピラたちはそう言って、ニヤリと笑ったのであった。

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