「お、おい! 返事をしろって! ほ、本当に死んだのか!?」
「…………」
「嘘だろ……? こ、これは何かの間違い――」
「ばあああああぁっ!!」
「うおおおおぉっ!?」
突如、死んだはずの幽蓮が飛び起きた。
思わずのけぞり、尻もちをついてしまう。
「ぬああああぁっ!?」
ケツの穴に何か刺さった。
痛い。
いや、これは……メチャクチャ痛い!
俺はチートによって増強された身体能力を活かし、素早く海老反りのような体勢になって尻を浮かせる。
そして、そのままバク転の要領で距離を取った。
「も、物凄い身のこなしですね……。さすがは高志殿……。で、ですが……」
「なんか……格好良いのか悪いのか、微妙なところね……」
樹影と景春が何か言ってる。
だが、今はそれどころじゃない!
俺のケツ穴に刺さったのは、マキビシだった。
犯人など分かりきっている。
「幽蓮! これはどういうことだ!?」
「てへっ! 高ちゃん、ビックリした? したでしょ?」
幽蓮は生首モードを解除し、可愛らしくペロッと舌を出す。
先ほどまで、完全な死に顔だったのに……。
豹変ぶりが凄まじい。
今の彼女の様子は、イタズラが成功したことを喜ぶ少女そのものだった。
「て、てめぇ……」
俺は幽蓮を睨む。
驚かされた瞬間、ちょっと漏らしそうになってしまった。
ここには限られたメンバーしかいないとはいえ、人前で藩主がお漏らしでもしたら一大事だぞ。
しかし、彼女はどこ吹く風である。
「きゃははっ! 高ちゃん、怒っても怖くないよ~! むしろ、可愛い!」
「何だと? 藩主を舐めたらどうなるか、教えてやろうか!?」
生首演技の件を打診した際に、俺は彼女とそこそこの親睦を深めている。
だが、距離を詰めすぎたようだ。
完全に侮られている。
忠義度から判断するともう翻意はなさそうだが、どちらが本当に上なのか分からせる必要はある。
「きゃーっ! 高ちゃんが怒ったぁ!!」
「待て、この野郎!!」
幽蓮は笑いながら逃げ出す。
俺はそれを追いかけていった。
「……なによ、これ? どういう状況?」
「はぁ……。高志様は素晴らしい方ですけど、敵味方関係なく女性を虜にするのは困ったものですね……」
「ま、ちょっと抜けていて舐められがちなのも兄貴の良いところさ。完璧超人だと、近寄りがたいし」
「……藩の統治には、清濁併せ持つ必要がある。高志くんなら、きっと立派な藩主になれる……」
背後で景春たちが何かを言っているが、よく聞こえない。
今は幽蓮を捕まえて、お仕置きすることが重要だ。
こうして、桜花城にはまた新しい日常がやって来たのだった。
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