「ふぅ……」
「お疲れ様です、高志様」
紅葉がコップに入った水を差しだしてくる。
俺はそれを受け取り、一気に飲み干した。
「うまい……。生き返るな」
「ふふ、高志様が事前に魔法で用意してくれていたお水ですからね。純度が違いますよ」
「そうだったな。だが、紅葉がコップに注いでくれると、格別にうまい気がする。ありがとう、紅葉」
「そ、そんな……。えへへ……」
紅葉が嬉しそうにはにかむ。
そんな俺たちを見て、流華が言った。
「なぁ、あんたは子ども好きなのか?」
「そうだ。俺は子ども好きだ」
俺は即答する。
子どもというのは素晴らしい。
未来への無限の可能性を秘めている。
それに、単純に可愛い。
庇護欲をそそられる。
まったく……子どもは最高だぜ!
「そ、そうか……」
そんな俺を、流華は複雑な顔で見ている。
何かおかしなことを言っただろうか?
まぁいい。
とにかく、これで今回の治療は終了だ。
「あんたがオレを同行させるのって……『そういうこと』なのか?」
「ん? ああ、『そういうこと』だな」
さっきも説明した通りだ。
部位欠損は、一度や二度の魔法で治すことはできない。
継続的に治療していく必要があるのだ。
そのため、彼には同行してもらう必要がある。
「……お、お手柔らかに頼むぜ……」
流華が上目遣いで言う。
そんな流華を、俺は改めて見つめた。
彼は全体的にやや痩せ細っている。
栄養不足だ。
全身のアザは治ったものの、右手首はまだ欠損したまま。
少しでも早く、万全の健康的な少年に戻してやらないと……。
俺はそんな決意を固め、あえて厳しい言葉を口にする。
「甘ったれるな。厳しくいくぞ」
「ひぇっ!? き、厳しく!?」
「当然だ。俺は甘やかすつもりはない」
「……うぅ……」
流華が涙目になる。
我ながら、なかなかの鬼教官ぶりだ。
「でも、オレは初めてなんだ……」
「初めて? 誰だって最初は初めてだ。甘ったれる理由にはならない」
部位欠損からの復活は、普通の治療ではない。
当然、ほとんどの患者は初めての治療体験となる。
多少の配慮は必要だろうが、なるべく早い完治を目指すならば適度な厳しさも必要だ。
「うぅ……。が、がんばるよ……」
「ああ、その意気だ。……とはいえ、今日の治療はもう終わり。このまま部屋でゆっくりと休もう」
俺の言葉を聞いて、流華がほっと息を吐く。
だが、すぐに彼は俺に言った。
「別の街には行かないのか?」
「いずれは移動するかもしれないが、まだいい。そこまで急いでいないからな」
「でもよ……。オレは元お尋ね者なんだ。街の連中から嫌われてる。あんたたちの迷惑をかけるかもしれねぇ」
「ふむ……」
流華はすでに罰を受けた。
スリの常習犯への刑罰として、右手首切断をされたのだ。
かなり重い罰である。
さらに、刑罰の一部によるものなのかは不明だが、全身にアザもあった。
これ以上の罰は不要のように思える。
だが、それはあくまで制度上の話だ。
スリの被害にあった者からすれば、流華は憎き犯罪者。
この街に滞在する限り、彼に対する風当たりが強いままな可能性はあるだろう。
実際、この宿屋の息子は流華に文句を言っていた。
「そうだな……。早めの出発も視野に入れておこう。……ん?」
「あ……」
俺は妙な気配を感じ、立ち上がる。
少し遅れて、流華も立ち上がった。
彼も感じ取ったらしい。
スリの常習犯だけあって、気配察知の能力にも長けているようだ。
「ど、どうされましたか?」
「シッ!」
俺は紅葉を手で制して、部屋の隅に移動する。
これは……慎重な対応が必要になりそうだ。
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読んでいただければ幸いです!
対象作品のタイトルが投稿先サイトによって異なるため、ここで整理しておきます。
アルファポリス及びカクヨム:
TS少女の猫耳ライフ ~チート装備を得て最強になったのはいいけどよ……なんで女の体になってんだ!? しかもその装備も何か変だしよお! こうなりゃヤケだ! 無双しまくってこの世界を満喫してやるぜ!~
小説家になろう:
チート装備で最強! TS少女が猫耳で繰り広げる無双冒険 ~俺が女になった理由~
ノベルピア:
弱々TSっ娘、最強の猫耳装備で無双する ~昼は最強の冒険者、ただし装備を脱いだベッド上の戦いは最弱~
作品内容は……上記の各タイトルからだいたい分かりますね笑
日本のヤンチャ少年が異世界に転移(転生)して美少女となり、チート装備で無双する感じです。
装備を脱いだら弱いので、寝込みを襲われての貞操ピンチ(主に百合)もあります!
ぜひ読んでみてください!
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