「さぁ、答えろ。俺に従うか、逆らって死ぬか」
「く……っ!」
景春は歯ぎしりをするが、何も言い返してこない。
どうやら、完全にビビっているようだな。
まぁ『生首』を目にしたので無理もないが……。
「どうした? 答えられんか?」
「う、うるさい! 余に指図するな!」
景春が叫ぶ。
明らかに恐怖心が強まってきている。
だが、まだ足りない。
いまだに一人称が『余』のままだ。
自分が藩主であるかのように振る舞い続けている。
「残念、時間切れだ。お前は未来は決まった。幽蓮のように晒し首にしてやろう」
「ま、待て! 余は……」
俺の言葉を受けて、景春が何か言おうとした。
しかし……
「おい、そいつを拘束しろ。過去の身分に囚われた反逆者だ。遠慮はいらん」
「「はっ!」」
俺の命令に従い、俺に恭順している家臣団の一部が動いた。
その中には、桜花七侍も含まれている。
「景春様、お覚悟を」
「御免!」
「な、何をする! 金剛、夜叉丸! 放せっ!」
景春は元家臣たちに押さえつけられながら叫ぶ。
しかし、その叫びに力はない。
心が折れつつあるようだ。
「景春様……」
「おお、樹影!! 余を助けよ!!」
「貴方を見損ないました。この上は潔く……」
「ま、待てっ! 待ってくれ!!」
景春は必死に叫ぶが、樹影は取り合わない。
樹影は前藩主の時代から桜花七侍を務めていた。
景春の右腕だ。
そんな彼女にさえ見限られた今、景春は孤立無援だ。
「景春様、みっともない姿をお見せにならぬよう……」
「う……っ!」
樹影を含めた元家臣たちが、景春の手足をヒモで結んで拘束する。
そして、目隠しをした。
動けない状態で視界までふさがれた景春は、いよいよ恐怖心を強めていく。
「や、やめろ! 放せっ! 余を誰だと思っている!? 桜花景春だぞっ!」
「「……」」
景春は叫ぶが、もはや誰も相手にしない。
事前の根回しは済んでいる。
「樹影――いや、叔母上! 余を見殺しにするおつもりですか!? 余は血統妖術を受け継いだ正当なる後継者ですよ! 桜花藩はどうなるのです!?」
景春が叫ぶ。
そろそろ藩主としてのメッキが剥がれてきたか?
藩主として配下に命じるのではなく、血の繋がりに訴えかけている。
それに、樹影への言葉遣いが丁寧語になった。
「景春様……。貴方は……」
樹影の声が震える。
どうやら、景春への感情が頂点に達しつつあるらしい。
事前の根回しは済んでいるとはいえ、最も怪しいのはやはり樹影か。
このまま自由に会話させるのは危険だな。
「それではこれより、大戦犯である桜花景春の罪を裁定していく。景春よ、言い訳があるなら言ってみるがいい」
俺は景春と樹影の会話を遮るように宣言する。
さぁ、仕上げに入っていこう。
成功すればいいのだが……。
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