【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1667話 永遠の絆を誓う

公開日時: 2025年2月23日(日) 12:10
文字数:1,222

「よし、これでバッチリだな」


 俺は満足げに頷いた。

 夕暮れの橙色に染まる山の頂、静寂の中にわずかな風が吹き抜ける。

 ちょっとした作業の末、岩に刻まれた文字を見て、達成感が込み上げる。

 だが――紅葉は何か言いたげに、じっと俺を見つめていた。


「え? ええっと……」


「どうした? 何か問題でも?」


 言葉に詰まる彼女の様子に、俺は首を傾げる。

 彼女は少しためらいがちに唇を噛み、それから意を決したように俺の目を見据えた。


「あの……、不躾ですけど私の名前も刻んでもらえませんか?」


「おっと、それもそうだな。よし、任せろ」


 再び刀を握り直し、鋭く振るう。

 金属音が響き、岩の表面に新たな文字が刻まれていく。

 削られた石の破片がさらりと舞い、やがてくっきりとした文字が浮かび上がった。


 ――『高志と紅葉、ここに眠る』


「これでよし、と」


「……あの~……。それだと、まるでお墓のようですよ?」


 紅葉の困惑した声に、俺は目を瞬く。

 そして、刻まれた文字を見て愕然とする。


「え!? あ、そうか……。すまん、間違えた」


 我ながらとんだ勘違いだ。

 闇の瘴気を受け入れて以来、たまに思考力や判断力が鈍ることがあるんだよな。

 これもその影響だろう。

 いや、それ以前からの問題かもしれないけど。


「よし、今度こそ間違えないように……」


 再び刀を振るい、大岩に慎重に最後の言葉を刻む。


 ――『高志と紅葉、ここに永遠の絆を誓う』


 刀を納め、汗を拭いながら紅葉を振り返る。


「これでどうだ?」


「あ、ありがとうございます……!」


 彼女は満足げに微笑んだ。

 風がそっと彼女の髪を揺らし、その横顔を美しく見せた。


 ……しかし、二度も失敗したせいで、岩の表面は文字でごちゃごちゃだ。

 まるで落書きのようになってしまったが、まぁ問題はないだろう。

 別にこの大岩は神聖なものでもないし、貴重な遺跡でもない。

 ちょっと固いだけの、ただの岩である。

 俺たちが少し削ったところで誰も文句は言う者はいない……はずだ。


「よし、今度こそ下山するか! ……ん?」


 異変に気づいたのは、その瞬間だった。


「あれっ……?」


 紅葉もまた、不思議そうに大岩を見つめる。

 刻まれた文字から、かすかに淡い光が漏れ始めていた。

 最初は気のせいかと思ったが、次第にそれは強さを増していく。

 まるで何かが目覚めるように――。


「なんだ? どういう……」


 言葉を最後まで言う暇もなかった。

 次の瞬間、大岩が眩い閃光を放ち、そして――爆ぜた。


「うおっ!?」


 反射的に紅葉を抱き寄せ、地面に転がる。

 轟音が辺りに響き、飛び散る石片が周囲に降り注ぐ。

 土煙が巻き上がり、視界が一瞬奪われる。


「高志様っ!!」


 紅葉の悲鳴が耳元で響く。

 俺は彼女をしっかりと庇いながら、慎重に周囲の状況を確認した。

 ――ただの大岩だと思っていた。

 だが、砕けた岩の中から、何かが姿を現そうとしている。


「これは……!?」


 俺は目を見開き、思わず息を呑んだ。

 岩の破片の中で、黒い霧のようなものが渦巻いている。

 得体の知れない何かが現れようとしているらしい……。

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