【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1058話 海上での戦い

公開日時: 2023年6月20日(火) 12:10
文字数:1,878

 俺はリオンと共に、オルフェスの沖合に転移した。

 月明かりのみが周囲を照らす海上。

 俺は重力魔法で空を飛びながら、リオンと向かい合っている。


「ハァッ!!」


 リオンが拳を突き出す。

 俺はそれをサッと避けた。


「チィッ! ちょこまかと!!」


 リオンが苛立った様子で言う。

 さっきまでは、そこそこ狭い地下室で戦っていた。

 その状況でも、彼は俺に有効打を与えられなかったのだ。

 ましてや、今は縦横無尽に飛び回っている状態である。

 英霊ベテルギウスの力を宿した彼の潜在能力こそ脅威だが、使いこなせてない今は相手にならない。


「この……っ!」


 リオンが俺から少しばかり距離を取った。

 そして――


「くらえっ! 【ドラゴニック・バースト】ぉっ!!!」


 両手から闘気を放った。

 凄まじい闘気弾がこちらに向かってくる。


「ほう。龍神ベテルギウスの必殺技というところか。面白い」


 リオンの判断は理にかなっていると言える。

 近接戦闘では、慣れない力を制御することは難しい。

 だが、遠距離攻撃ならば話は別だ。

 力任せにぶっ放せば、とりあえずは形になる。


「――【影壁・三連】」


 俺は素早く魔法を唱えた。

 奴の闘気弾の威力は高そうなので、最初から三連だ。

 しかし――

 バリンッ!

 バリバリンッ!!

 3枚の壁が、あっさりと打ち破られてしまった。


「なかなかの威力だ……」


 俺は防ぐことを諦め、回避に専念することにする。


「逃がすかっ! ――【龍神波動】!!」


 リオンが腕を振りかざし、そこから闘気を飛ばした。

 一発目よりも威力は低そうだが、狙いはきっちりと俺を捉えている。


「甘いな」


 俺はその攻撃を、急下降しながらヒラリとかわす。


「まだまだぁ!! ――【龍神脚】!!」


 リオンが上空から蹴りを放ってきた。

 これは――避けきれない。


「ぐっ……!」


 ドッパーン!

 リオンの蹴りを受けた俺は、海へ叩き落された。


(ダメージは……さほどでもない。水面の方向は……)


 俺は冷静に状況を把握する。

 ステータス操作のチートにより様々なスキルを取得している俺は、水中での活動能力も常人に比べれば高い。

 特に有用なのは『視力強化』だ。

 単に遠くのものが見えるようになるだけでなく、他にも様々な副次的恩恵がある。

 海水の中で目を開けても、特に問題なく視界を確保できるのもそのおかげだ。


 バシャッ!

 俺は水中から脱出し、再び海上へ浮上した。


「ふむ……。意外にやるじゃないか」


「クッハッハ! ようやく龍神ベテルギウスの力が馴染んできたようだ!! お前のような怪しいザコなど、敵ではないぞ!!」


 リオンが笑う。

 実際、彼の動きは少しずつ良くなってきている。

 今の俺にはやや厳しい相手かもしれない。


「…………」


「クッハッハ! どうした? 強大な力を前にして、言葉も出ないのか!?」


 リオンが勝ち誇ったように言う。

 だが、俺は至って平静だ。


「――そんなに嬉しいか?」


「当然だ! この最強の力があれば、お前に勝てる! ゆくゆくは『ラウンド・ワン』の座を手に入れることすら――」


「そんな借り物の力で有頂天になるとは、ずいぶんと安い男だな」


「なにぃ!?」


 リオンが怒りの形相を浮かべた。

 どうやら、図星だったらしい。


「お前のその力は、あくまでも『英霊』の力に過ぎない。英霊の力を借り受けて変身しているだけで、お前自身は何も変わってはいない。ただの劣化版だ」


「黙れっ! この私を侮辱したこと、必ず後悔させてやる!!」


 リオンがまた襲いかかってきた。

 俺はそれを避けつつ、思案する。


(ダダダ団のアジトで戦っている時、俺は力を抑えて戦っていた。俺の正体がタカシ=ハイブリッジ男爵だとバレないようにするために……)


 得意の火魔法や水魔法を封印。

 自慢の武器『紅剣アヴァロン』も不使用。

 普通の鉄剣や拳を使いつつ、影魔法をメインに戦ってきた。

 リオンごときはそれで十分に対処できると思ったのだが――


 ドゴォッ!

 彼の拳が俺の脇腹を直撃する。


「ぐはっ……!」


 俺は大きくふっ飛ばされる。

 重力魔法により空中で体勢を整えるが、ダメージはそれなりにある。


「クッハッハ! たとえ借り物の力だろうと関係ない! お前を倒せるなら、なんだっていいんだよ!!」


 リオンが叫ぶ。

 その顔は自信に満ち溢れていた。


「……そうか」


「なんだぁ? やっと諦めがついたのか? まぁ、潔く負けを認めると言うのであれば、命だけは助けてやらんでも――」


「英霊の力に対抗するには、今のままではダメらしい。ならば、対処法は一つ」


 幸い、ここは海の上だ。

 ダダダ団のアジトでは全力を出せなかったが、ここなら大丈夫。

 周囲に被害は出ないし、目撃者もいない。


「俺の真の実力――その一端を見せてやろう」


 俺はリオンを見据え、静かに宣言したのだった。

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