【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第32章 事後処理、三日月の舞やサーニャとの交流

1072話 オルフェスの浜辺にて

公開日時: 2023年7月4日(火) 12:16
文字数:1,969

「しっかりしてください……。絶対に死なせませんの……!」


 聞き覚えのある声が耳に入ってくる。

 誰の声だったかな……?


「お願いです……。私の初恋の御方……。目を覚まして……」


(初恋?)


 いったい何の話だろう?

 それにしても、この温もりは心地よい。

 冷たい海水の中だというのに、まるで太陽の下にいるみたいだ。

 ずっとこのまま微睡んでいたいような――


「――ハッ!?」


 俺はガバッと身を起こす。

 一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。

 しかし、すぐに状況を把握する。


「ここは……オルフェスの浜辺か……」


 どうやら、俺は海岸まで戻って来れたらしい。

 隣にはリオンも横たわっている。

 まだ薄暗いが、もうすぐ日が明ける時間帯だろう。


「思っていたよりも時間がかかったな……」


 俺は小さく呟いた。

 昨晩に決行した、ダダダ団の掃討作戦――。

 俺はダークガーデンの首領『ナイトメア・ナイト』としてアジトに乗り込んだ。

 輩下の『テルティウム』ことモニカ、『クァルトゥス』ことニムを影魔法で呼び出した。

 そして、幹部ヨゼフを撃破し、エレナたち『三日月の舞』や魔導工房の少女を助け出した。

 ここまでで一段落といったところか。


(その場はモニカとニムの2人に任せ、俺はダダダ団の頭領リオンがいる地下室へと足を踏み入れたのだったな)


 彼はダダダの頭領だけじゃなくて研究者の側面も持っており――いや、むしろ研究者がメインなのかもしれないが――なかなかに多彩な戦闘手法を持っていた。

 その1つが、アーティファクトを全身にバランスよく装備した『アーティファクト・チャンピオン』という戦闘形態だ。

 それなりに強かったが、俺の敵ではない。

 追い詰められたリオンは、『マジック・ドレイン』で吸収した俺の魔力を使って『英霊召喚』を試みた。

 その結果現れたのが龍神ベテルギウスだったわけだ。


(あのときは本当に驚いた……)


 強大なオーラを持つ者が、リオンに力を貸すとは思わなかったからな。

 とはいえ、戦闘を行うのはあくまでリオン。

 空間魔法を使って舞台を海上に移したが、特に苦戦はしなかった。

 ベテルギウスの力を宿したリオンを圧倒し、最後は『アイ・アム・ダイナマイト』の一撃で仕留めることができた。

 戦闘後には人魚メルティーネという美女との出会いもあり、ファーストキスをされるという素敵な出来事もあった。


(しかし、それで一件落着――とはいかなかったんだよな)


 不甲斐ないリオンに不満を覚えたベテルギウスが、肉体の主導権を彼から奪ったのだ。

 直後の猛烈なラッシュで俺はあっさりと敗北し、海に落下した。

 人魚メルティーネのキスの恩恵により、俺は水中でも窒息しない能力を得ていた。

 リンドウの古代遺跡の一件で俺に宿っていた炎精サラマンダー。

 その協力を得られることになった俺は、龍神ベテルギウスを打倒する活路を見出した。


(新たな纏装術である『炎精纏装・サラマンダー』は、俺の目論見通りとても強かった)


 俺はベテルギウスを圧倒。

 最後は彼の『ドラゴニック・ノヴァ』を俺の『飛龍・火焔』が打ち破り、勝利を手にしたのだった。

 まさに会心の勝利と言っていいだろう。

 その後、ベテルギウスのおまけみたいな感じで紛れ込んでいた亡霊3人との戦闘になったが、これもあっさりと撃破。

 だが、さすがに連戦に次ぐ連戦は堪える。

 俺は海に漂っていたリオンを回収した後、力尽きて気を失ってしまった。


「そうだ……。俺は海に落ちたのだった……」


 ようやく記憶がはっきりしてきた。

 あの後、いい感じに漂流してここに着いたのだろうか?

 あるいは、誰かが助けてくれたのか……?


「運んでくれたのだとしたら、ありがとう。誰かは知らないが命の恩人だ」


(どういたしましてですのよ。次に会うときは……私と結ばれるときですの。それが人魚族の掟……)


「――ん?」


 ポチャン……。

 視界の隅で、海面に小さな水音が鳴った気がした。


「なんだ……? 魚が跳ねた音か……?」


 俺は視線を音の方向へと向ける。


「…………」


 そこには誰もいなかった。

 ただ、朝の静かな海が広がっているだけだ。


「今のは……空耳か? ……疲れているんだな」


 俺は首を振って立ち上がった。

 徹夜で戦っていたわけだし、幻聴の一つや二つが聞こえてもおかしくはない。


「さてと、そろそろ街に戻ろう。モニカとニムなら、上手く後処理をしてくれていると思うが……。なにせ、想定以上に時間がかかってしまったからな」


 俺はオルフェスの街の方角を見る。

 夜明け前ということもあり、街の明かりはほとんど消えている。

 街の一角にあるスラム街にてダダダ団アジトが壊滅したわけだが、少なくとも街全体が騒ぎになったりはしていないようだ。


(待っててくれ。モニカ、ニム、サーニャちゃん……。エレナ、ルリイ、テナ……。そして、名も知らぬ魔導工房の少女よ……)


 俺は彼女たちの顔を思い浮かべながら、ゆっくりと歩き始めたのだった。

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