アイリスとモニカの出産から1週間ほどが経過した。
「アイリーン。パパだよ」
「あうー」
「ママもいるよー」
「あうあー」
アイリスが我が子の頭を撫でると、アイリーンと名付けられた赤ん坊が嬉しそうな声をあげる。
アイリスはすっかり親バカになっていた。
毎日のように自分の子供に話しかけ、世話を焼いている。
今日の俺は早めに仕事を終えた。
俺はリビングのソファーに座って、みんなとお茶を飲みながらくつろいでいる。
「モコナも元気だよ。ほら、お父さんに挨拶して」
「あううー!」
「うんうん。可愛いなあ」
「あうー!」
モニカが抱っこしているモコナを覗き込むと、彼女は嬉しそうに笑った。
「タカシ様。ミカもいます。抱っこしてあげてください」
「ああ。しかし、赤ちゃんを抱っこするのはまだ緊張するな……」
「大丈夫ですよ。この子も喜ぶと思います」
ミカはそう言って、俺に娘を渡してくる。
「あっ……。ふう。よしよし……」
俺はおっかなびっくりといった感じで、娘の体を抱きかかえる。
優しく背中をさすってやると、娘がキャッキャと笑い出した。
どうやらご機嫌のようだ。
「か、かわいいですね。わたしにも抱かせてください!」
「ふふん。次は私の番よ!」
「マリアもしたいっ! 順番だよっ!」
ニム、ユナ、マリアも俺の側にやってきて、順番に娘の体を触ったり、抱っこしたりし始める。
サリエ、リーゼロッテ、蓮華も、それぞれアイリーンやモコナに構っている。
彼女たちは、自分に娘や妹ができたかのように可愛がっていた。
「ミカ。こっちが妹のアイリーンちゃんとモコナちゃんですからね。数日差ですが、あなたがお姉ちゃんとしてしっかりするのですよ」
ミティがそう言うと、彼女は満面の笑顔になる。
確かに数日差とはいえ、ミティの子どもであるミカがハイブリッジ家の第一子だ。
異母姉妹ということになるが、仲良く育ってほしいものである。
「あうー!」
「はいはい。どうしたの?」
「あうー! あうー!」
「はいはーい。分かったよー」
モニカに抱き抱えられているモコナと、アイリスに抱かれているアイリーンが楽しげに声を上げる。
今のところは赤ちゃんは3人とも元気に育っている。
それに、ミティ、アイリス、モニカの産後の健康状態にも問題ない。
産後の経過は極めて良好と言える。
「それにしても、本当に可愛いですね。溺愛したくなる気持ちがよく分かります」
サリエが微笑む。
「そうだな。目に入れても痛くないとは、まさにこのこと」
「先日晴れて正式に結婚しましたことですし、私にも子どもがほしいですね」
「わたくしも少し興味がありますわ。タカシさん、ぜひご一考を……」
「うむ」
サリエとリーゼロッテの言葉に、俺はうなずく。
まあご一考も何も、普段からやることはやっているのだが。
念のため、結婚式が終わるまでは妊娠しないように処置を行ってきた。
今はそれらの処置を取り払っている。
もういつできてもおかしくない。
「そ、そういうことならわたしにもぜひ……」
「ふふん。負けてられないわね」
「マリアもたくさんお勉強したから、いつでもいいよっ!」
ニム、ユナ、マリアまでがそんなことを言う。
どうしようか?
ミティたちの妊娠により、ここ最近は冒険者活動を縮小していた。
領主として内政にも注力したい時期だったので、それはちょうど良かった。
無事に出産を終えて彼女たちの体調が戻りつつある今、冒険者活動を本格的に再開してもいい頃合いだろう。
そこでまた妊娠者が出たら、さすがに困る気もする。
だが……。
「俺に否やはない。みんなの意思を尊重するとも」
子どもを望んでくれるのは、男冥利に尽きるというものだ。
世界滅亡の危機に立ち向かうという使命があるにせよ、まだ27年以上残っている。
私生活を極端に犠牲にすることもないか。
それに、子どもが将来的な戦力となる可能性も高い。
ミカ、アイリーン、モコナたちは、生まれた瞬間から俺の加護(微)の対象者となっている。
子どもが親に忠義を感じるということに少しだけ違和感を覚えなくもないが、加護の対象者になっていること自体は喜ばしいことだろう。
「ふふん。じゃあさっそく……」
ユナがそう言いながら、勢いよく服を脱ぐ。
彼女のスレンダーな体があらわになった。
「ちょっとユナさん! 抜け駆けは禁止ですよ!」
「そ、そうです!」
サリエの言葉にニムが同調する。
「でも、みんなで一緒にっていうのも悪くない気がするっ! タカシお兄ちゃんに選んでもらうのもアリかも……?」
「たまにはよろしいかもしれませんわね」
マリアとリーゼロッテも参戦し、服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。こんな真っ昼間から!?」
「だ、だいじょうぶです。痛くしませんので」
ニムの怪力に俺の体はあっさりと組み伏せられる。
ミティに次いでパワフルなのが彼女だ。
そのまま、みんなの手が伸びてきた。
「あ~あ……。また始まった……」
「ふふふ……。賑やかですね」
モニカとミティはその様子を見て、苦笑している。
子どもができた今、彼女たちは精神的に余裕ができた様子である。
「ちょっと。赤ちゃんたちが見てるんだけど」
アイリスが顔を赤らめながら注意するが、彼女たちの手は止まらない。
「ふふん。アイリスだって、本当は参加したいくせに!」
「そ、そうですよ。最近ご無沙汰で、溜まってるのでしょう。素直じゃないですね」
「なっ! そ、そんな事ないしっ!」
ユナとニムが言うと、アイリスは慌てて否定する。
だが、その顔は赤い。
産後で体力が戻りきっていないこともあり、まだ彼女とは致していない。
確かにずいぶんとご無沙汰だ。
「「「「「ぎゃー、ぎゃー」」」」」
みんなが騒ぎ始める。
俺の服もどさくさに紛れて脱がされてしまった。
全裸だ。
ユナやニムも全裸となり、さらにはリーゼロッテやサリエも服を脱ぎつつある。
自邸とはいえ、リビングで昼間からおっ始めるのか?
俺は大歓迎だが……。
そんなことを考えているとき、廊下から話し声が聞こえてきた。
セバスが何者かを押し留めているようだ。
「失礼。もう少々お待ちいただきたく……。お館様は取り込み中でして……」
「我を待たせるとは、良からぬことでも企んでいるのか? 勝手に入らせてもらうぞ!」
ドアの向こう側から、大声で怒鳴りつける声が聞こえる。
この声は……あのバカ王女か。
そして、リビングのドアが勢いよく開けられた。
そこには予想通り、第三王女のベアトリクスがいた。
部屋の中には、全裸で抱き合っている俺と妻たち。
「「「「「…………」」」」」
一瞬、場が静まり返った。
そしてみるみるうちにベアトリクスの頬が赤く染まっていく。
「き、貴様ら、日も沈まぬ内から、何をやっておるかーーー!!!」
ベアトリクスの大絶叫が屋敷中に響き渡ったのだった。
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