「ぐ……! ごごご……」
『ム?』
俺が力を込めてもがくと、ポセイドンの石像が怪訝そうな声を上げた。
そして――。
「だあああああっ!!」
俺は水流を撥ね除ける。
俺はポセイドンに対して油断なく構えた。
『ホウ……呪鎖ガ解ケタヨウダナ。ヨクゾ耐エタモノダ』
ポセイドンの石像が感心したように言う。
俺はそれを無視して、剣を構えた。
「はぁ……ぜぇ……」
『見事ナ魔力ト闘気ダ。矮小ナル人ノ子ニシテハ、見ドコロガアル』
「……」
俺は無言で構えている。
エリオットが国宝を用いて俺に発動した『海神の呪鎖』。
なんやかんやあって、あれはずっと俺についたままだった。
それが今、ようやく解除された感じだ。
魔力と闘気が解放されて、身体は絶好調である。
しかし――
『フフ……。自分デ自分ノチカラガ信ジラレナイカ?』
「……ああ。確かにな」
俺はポセイドンの石像に同意した。
さっきまでの俺は力を抑え込まれており、解除された今は力が増している。
当たり前の話ではある。
しかしそれにしても、魔力や闘気の出力が段違いな気がした。
まるで、身体に羽が生えたような感覚である。
いや、ここは海中だから……手足に水かきが付いたような感覚と言ったほうが適切か。
「呪鎖を纏いながら戦うことで……知らず知らずの内に、魔力や闘気が鍛えられていたのか?」
俺はそう分析する。
バトル漫画などでよくあるアレである。
スポーツ漫画とかでもたまにあるか。
重い道着を着たり、手足にウェイトを付けたり……。
その状態で日常生活を送り日々のトレーニングをすることで、外したときに動きが良くなるのだ。
しかし、あんなのは現実ではありえないと思っていたのだが……。
『部分的ニハソウダ。シカシ、ソレガ全テデハナイ』
「ん?」
ポセイドンが語る。
俺は首を傾げた。
『貴様ハ、人ノ身ニ余ル程ノチカラヲ身ニ付ケテイル……。ソレモ、通常ノ鍛錬デハ到達デキナイ程ノ領域ニ、ダ』
「ああ。そうかもしれないな」
俺はうなずく。
チートスキル『ステータス操作』の恩恵が大きすぎる。
もちろん、俺なりに努力はしてきた。
しかし、それだけでは説明のつかないレベルの力なのだ。
『過ギタルチカラハ破滅ヲモタラス……。貴様ノ魔力回路ヤ気門ハ、酷イ詰マリヲ起コシテイタ』
「詰まり? そんなことが……」
いや、あり得ない話ではないのか。
オルフェスでも、魔導技師ムウの魔力回路に異常が発生したことがあった。
チートによって急成長を続ける俺の体に異常が発生していたとしても、おかしいことではない。
『ソノ詰マリヲ解放シテヤッタ。我ガ『海流爆陣』ニヨッテナ』
「……なるほどな」
つまりあの激しい攻撃は、俺の魔力回路の詰まりを解消するためのマッサージだったのだ。
四方八方から水流を受けることで、凝りが解消された。
結果、俺の魔力回路が正常化し、魔力などの出力が増したわけだ。
メチャクチャにされた甲斐があったと言えるかもしれない。
『サテ……準備ハ整ッタ』
ポセイドンはニヤリと笑う。
『今度コソ本気デ行クゾ! タカハシタカシ!!』
ポセイドンの石像が吠えると同時に、凄まじい水流が俺を襲う。
だが……俺はそれを斬り裂いた。
「今なら何でもできる気がする。俺は今、最強の力を身に付けたんだからな」
俺は油断なく剣を構える。
そして、ポセイドンに突撃していくのだった。
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