「いきなりレベル4まで上げるのか? それだと、剣術レベル5と闘気術レベル4しかスキルがないことになるぞ」
「……うん。私は剣術に特化する。中途半端に上げても、搦め手では植物妖術使いの紅葉ちゃんに及ばないし、諜報活動や襲撃者の察知では忍者の流華ちゃんに及ばない。なら、私は正面戦闘に特化した方がいい……」
「ふむ……」
俺は思案する。
確かに、その考え方も間違ってはいない。
いろいろなスキルを上げても器用貧乏になってしまう。
一人の力で生きていくのならそれもいいが、俺たちは仲間だ。
お互いの弱点を補い合う形でスキルを強化するのは悪くない。
「だが、桔梗は夜叉丸を倒したんだろ? しかも、正面戦闘で」
桜花七侍の蒼天、巨魁、夜叉丸。
それぞれ紅葉、流華、桔梗によって撃破されている。
紅葉は頭脳を活かした挑発からの搦め手で、流華は思い切りの良い金的攻撃で、相手を倒したと聞いている。
それはそれで立派だ。
しかし、桔梗は桔梗ですごい。
正面戦闘で夜叉丸を倒したのだ。
並外れた戦闘能力だ。
「うん……でもそれは、相手の油断に乗じただけ。実力だけで勝ったわけじゃない」
「そうなのか?」
「あのときの実力のまま、相手が油断していない状態で100回戦ったら……。少なくとも90回は負けると思う。全敗しちゃう可能性もある。それぐらいの差があった」
「ふむ……」
なかなかに危ない戦いだったんだな。
そんなバランスだったのであれば、桔梗が正面戦闘の能力に拘ることにも納得だ。
「……それに、あの後は樹影さんに負けちゃった。せっかく勝ったのに、頑張りが意味なかった……」
「それは違うさ。桔梗たちが夜叉丸たちを消耗させてくれていたから、俺はすんなりと桜花城を支配できたんだ。樹影だって、大技の反動が多少なりともあったはずだ」
俺は告げる。
桜花城天守閣に踏み入った俺は、まず樹影と戦った。
桜花七侍の実質的なトップだった彼女だが、俺はあっさりと撃破した。
元々の実力差が大きかったことも一因だろうが、彼女が紅葉たちとの戦闘で大技を使い消耗していたことも大きな要因だった。
もし、樹影が万全な状態だったら……。
俺は少しばかり苦戦し、その後の景春戦に影響が出ていたかもしれない。
夜叉丸たちについても、似たようなものだ。
景春戦のあと、俺は夜叉丸たちと対峙した。
俺は威圧感と闇のオーラだけで、すんなりと彼らを無力化したのだが……。
仮に彼らが万全な状態だったなら、ちょっとした戦闘になっていただろう。
「そう……かな?」
「ああ、そうだとも」
俺は力強く頷く。
結果だけを見れば、桜花城を落としたのは俺一人の功績のように見える。
しかし、実際には彼女たちの活躍も大きかったのだ。
「……そう言ってもらえるのは嬉しい。でも、強化方針は変わらない。これからは、さらに強くなったこの刀で、高志くんを守っていきたい」
「意志は固いようだな。分かったよ」
俺は桔梗の決意を受け入れる。
彼女のスキルポイントを消費し、剣術と闘気術を強化した。
1対1の近接戦闘なら、もはや俺に対してすら多少の勝機はある……。
そんな境地まで、彼女の戦闘能力は到達していた。
「高志くん……」
「うん?」
「これからもよろしくね。今度は私が守るから……」
桔梗が静かに言う。
俺はそのお礼に、笑顔で応えたのだった……。
レベル11、柊木桔梗(ひいらぎききょう)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:剣士
ランク:ー
武器:木刀
防具:道場着
HP:80(61+19)
MP:44(34+10)
腕力:51(39+12)
脚力:47(36+11)
体力:47(36+11)
器用:47(36+11)
魔力:47(36+11)
残りスキルポイント:5
スキル:
剣術レベル5
闘気術レベル4
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
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