【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1026話 三日月の舞vsヨゼフ【エレナside】

公開日時: 2023年5月19日(金) 12:27
文字数:2,032

 エレナ率いる『三日月の舞』が、路地裏にて『ダダダ団』と対立している。

 集団のリーダー格であるヨゼフは、Cランクのエレナたちに対して気圧されている様子がない。


「ハッ! Cランク程度で粋がってんじゃねえ! 破門さえされてなきゃ、俺はBランクまで上がっていたはずだ!!」


「まぁ、それはどうかしらね。井の中の蛙大海を知らず、っていう言葉もあるわよ?」


「なんだと!?」


 挑発的な言葉に激昂するヨゼフ。

 実際、エレナの言うことにも一理ある。


 冒険者ランクはS、A、B、C、D、Eの6段階に別れている。

 駆け出しランクであるEを除いたS~Dランクは、ピラミッド型に上位層が狭くなっていくシステムになっているのだ。

 そのため、ランクが1つ上がる度に壁に当たることになる。

 仮にヨゼフが冒険者として活動を続けていたとして、今頃Bランクになっていたのかどうかは怪しいところだ。


「なら、体で分からせてやるぜ! はあああぁっ!! 【剛拳流・動かざること山の如し】!!!」


 ヨゼフが闘気を開放する。

 これはゾルフ砦で広く指導されている技の一つだ。

 特に門外不出というわけではないのだが、その発動難易度はそれなりに高い。

 ヨゼフが身に纏っている闘気が、まるで岩石のように硬度を増した。


「あら……。なかなかの闘気じゃない。でも、イキっている割には最初から防戦の構えなの?」


 エレナがそう指摘する。

 彼女の言う通り、『剛拳流・動かざること山の如し』は防御の技だ。

 耐久力を高め、相手の攻撃をひたすら耐えるのである。


「ふん……。俺の本領はこれからだ。行くぞぉっ! ――うおおおおっ! 【剛拳流・山津波】!!」


 今度は攻撃の技を使うヨゼフ。

 彼が繰り出したのは、闘気を右脚に集中させて放つ蹴りだ。


「なっ!? 防御の闘気を維持したまま攻撃を……?」


「はっはぁ! その通りさ! 防御を固めたまま思う存分に攻撃をしていく! この分野においちゃ、俺は天賦の才があると言われたことがある!!」


「くぅ……っ!」


 エレナの目算は少しばかり外れた。

 どうせ口だけのチンピラだと思っていたのだが、ヨゼフというこの男は確かな実力を持つようだ。

 しかし――


「ふふふー。わたしの存在を忘れちゃダメだよー? 【パラライズ】!」


「ぐあっ!? か、体が痺れやがる……っ!」


 ルリイの雷魔法によって、あっさり動きを封じられてしまう。

 ヨゼフの防御力はなかなかのものらしかったが、状態異常攻撃には弱いようだ。

 彼が痺れているその隙に、『三日月の舞』の3人が態勢を立て直す。

 そして――


「いくわよ! 『三位一体』!! ――我が敵を滅せよ! ファイアトルネード!」


「我が敵を撃て! ライトニングブラスト!」


「我が敵を砕け! ストーンレイン!」


 3人の放った魔法が、ヨゼフを襲う。

 火魔法、雷魔法、土魔法の協奏曲だ。


「ぐああああぁっ!!」


 ドゴーン!!!

 激しい爆発音とともに吹き飛ばされるヨゼフ。

 彼の体はボロ雑巾のように転げ回りながら地面へと激突した。

 彼がしばらく立ち上がってこないのを確認し、エレナは少女に話しかける。


「あなた、大丈夫?」


「あ……ありがとうございます。助かりました……」


「いいのよ。困った時はお互い様だから」


 エレナはスラムの出身である。

 少女のように身寄りのない子どもが、泥に塗れながら生きるしかない状況はよく知っていた。

 だからこそ、目の前の少女を放っておくことができなかったのだ。


「ヨゼフの兄貴! 大丈夫ですか!?」


「ちっ! クソがぁ……! 俺を舐めやがってぇっ!!」


「まだ動けるなんて……。本当にタフな男ね」


 エレナは呆れてしまった。

 威力は控えめにしておいたとはいえ、『三日月の舞』の奥義である『三位一体』を受けてなお立ち上がるとは。


「もう許さねぇ……。お前ら全員ぶっ殺してやる!」


「できるものならやってみなさい。今度は私たちも手加減しないから」


「調子に乗るなよ! 小娘が!! お前らなんか、魔法が使えなきゃ何もできねぇだろうが!」


「はぁ? 魔法も実力の内でしょうが。言い訳してんじゃないわよ」


「へへっ。せいぜい粋がってな。いくぜ、【魔法封じの芳香】!!」


 ヨゼフは魔道具を発動させる。

 すると、辺り一面に甘い香りが立ち込めた。


「これが何よ? ……少なくとも、毒ではないみたいね。あなたも吸っているもの」


「へへへ。毒なんてチンケなもん使うわけねぇだろ? これは俺のとっておきさ」


「とっておき?」


「そうだ。俺の切り札だ。これを使えば、てめえらはなす術もなく無様に負けるんだよ!!」


「何を言っているのかしら? バカなの? いい香りだけど、それが何だって言うのよ」


 エレナは全く理解できないという顔をしている。

 魔道具というものは、千差万別の効果を発揮するものだ。

 ただし、強力な効果を発揮するものはそれだけ希少価値も高いし、高価でもある。

 ましてや、戦闘中に使用できるような便利で強い魔道具など、チンピラが持っているはずがない。


(何なの、コイツの自信は……? 嫌な予感がするわね……)


 エレナは油断なく構えつつも、不吉な未来を感じてしまうのだった。

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