ミティの実力行使に乗じて、賭博場を制圧した。
「ちぃっ! せっかく手にしたお宝が……」
「あれだけ仕込みに手間を掛けたのによぉ」
「おいしいところを持ってかれちまうのか……」
ロッシュや五英傑が、何やら未練がましく呟いている。
「お前たち、この期に及んでまだ何か隠しているのか?」
「……お前には関係のないことだ!」
「そうやって怒鳴っていれば、俺たちが怯むと思っているのか? それが通じるのは、一般人か、せいぜい駆け出し冒険者くらいまでだ。俺がBランク冒険者であることは知っているだろう?」
「ぐっ……」
男たちが怯む。
この『闇蛇団』は、騎士団の目をかいくぐって活動していた点が厄介な組織だ。
しかしその一方で、戦闘能力においては『黒狼団』や『白狼団』には一歩劣る。
彼らが多少凄んだところで、俺には通じない。
……内心では少しだけビビっていることは内緒だ。
俺の戦闘能力はほぼほぼチートによって得たものだからか、格下相手でも結構怖いのだ。
「……そんなに気になるなら、見てくればいいさ。中にはとびきりの宝がある」
「ほう! それはそれは……。よし、見てみよう。みんな、ここの後処理は頼むぞ」
「ははっ! お任せください! タカシ様」
ミティが元気よくそう返事をする。
「残党がいるかもしれません。アタシもいっしょに……」
「不要です。タカシ様なら、残党程度に不覚を取ることはありません」
ナオミが同行を申し出たが、ミティがキッパリと却下する。
まぁ、こういう閉じられた空間内における戦闘において、俺が負けることはまずない。
野外における長期の旅路だとか、普段の寝泊まりなどであれば、警備の者は多いに越したことはないが……。
ここはミティの言う通り、俺ひとりで十分だろう。
「じゃあ、行ってくる」
俺は賭博場の隅にあった扉を開け、その奥へと進む。
扉の先はそこそこ長い廊下になっており、左右にはいくつかの扉があった。
扉のひとつを開けると、そこは倉庫のような部屋だった。
大きな木箱がいくつも積まれている。
廊下に戻ってまた別の扉を開けると、そこにはベッドや椅子などの家具が置かれた寝室が広がっていた。
俺は再び廊下に戻る。
「ふうむ。物置や休憩部屋が用意されているのか。さほどきれいではないし、『闇蛇団』のメンバー用のものか」
俺は独り言を呟きながら、さらにいくつもの扉を開けていく。
意外に広々とした間取りには驚いたが、金目のものは少ない。
男が言っていた『とびきりの宝』とやらを探してみたが、見当たらない。
「本当にここに宝物なんてあるのか? まさか、俺を騙しやがったのか?」
あんな状況から嘘をつく理由もない気がするが、現に宝は見つからない。
俺が疑念を持ち始めたときだった。
「うぅ……。ぐすっ」
「……!?」
泣き声が聞こえた。
「子どもの声か?」
トパーズが口を滑らせていた、例の奴隷堕ち少女だろうか?
だとすれば、一刻も早く救助して安心させてやる必要がある。
だが、もしかしたら『闇蛇団』残党の何かしらの罠とかの可能性もある。
俺はとりあえず足音を立てないよう注意しながら、ゆっくりと歩く。
(ここか)
1番奥の部屋。
他より豪華な装飾が施されたドアを、そっと開けた。
部屋の中は薄暗く、わずかに漏れる光の中に人影が見える。
「…………」
「ひぐっ! ふぇええん! ……ぐすっ!」
俺は、一瞬言葉を失った。
泣いている女の子。
百歩譲って、それはいい。
問題は、その子の姿だ。
薄切れ一枚すら身につけていない。
真っ裸で、イスの上に拘束されていた。
しかも、ご丁寧に足がM字に広げられており、大切なところが丸見えとなっている。
「これは……」
どう見ても、乱暴をされていた最中にしか見えない。
そう言えば、ロッシュや五英傑たちは『いいところを邪魔された』とか『とびきりの宝』とか言っていたな。
ひょっとすると、この子を辱めて楽しもうとしていた途中だったのかもしれない。
そこに俺やミティがカジノ荒らしをしているという連絡があり、この子を放って慌ててカジノの方に顔を出したといったところか。
「おい。大丈夫か? 今助けてやる」
「……ひっ! いやあああっ!!」
「おっと! 落ち着け! 俺は、君を助けに来たんだ」
「や、やだあああぁっ! 騎士様、助けてぇっ!!」
俺の言葉が届いていないのか、少女は悲鳴を上げて暴れる。
見たところ、少女に外傷はない。
顔も肌も、きれいなものだ。
ロリコン揃いの『闇蛇団』は、少女を無闇に傷つけるのは避けたのだろうか。
だが、心は別だ。
全裸でイスに縛り付けられて、恥部を晒しているこの状況は、かなり精神的にキツイものがあるはずだ。
(あのクソ野郎どもが……!)
俺は内心で怒りを募らせる。
イエスロリータノータッチの精神にはギリギリ則っていると言えなくもないが……。
明らかにこれはやり過ぎだよ。
同じロリコンとして恥ずかしい。
俺は思わず、魔力と闘気を練り上げる。
「あっ……。ひ、ひいぃっ……!」
少女が怯えたように、小さく叫ぶ。
俺が放つ殺気に気づいたようだ。
「あ、すまん。俺は怖くないからな。すぐに解放してやる」
怒りの余り少女を怖がらせるなんて、本末転倒じゃないか。
『闇蛇団』の鬼畜変態ロリコンどもには、相応の報いを受けさせてやる。
だが、それはそれとして今は怒りを鎮め、少女を救わなくては。
俺は優しい足取りで少女に近づいていくことにしたのだった。
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