【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1720話 報告と相談

公開日時: 2025年4月17日(木) 12:10
文字数:1,186

「今日はどうした? 紅葉」


 問いかける俺の声に、紅葉は伏せていた顔をわずかに上げた。

 その双眸は真剣な光を湛え、冗談の一つも差し挟む隙を与えない。


「まずは流華の方からご報告を。そして、今後の方針を相談させていただきたいと思いまして」


 紅葉が流華に視線を向ける。

 彼女は普段、彼のことを『流華くん』と呼ぶ。

 あえて呼び捨てにするということは、この話し合いが公的な性質を帯びていると認識しているのだろう。


「いろいろ情報が集まったんだぜ、兄貴」


 紅葉の視線を受け、流華が口を開く。

 紅葉とは対照的にどこか砕けた雰囲気を纏っているが、その目には同じような緊迫の色が宿っていた。

 彼は中規模の町の出身で、かつてはスリの常習者だった。

 しかし今は違う。

 無月の手ほどきを受け、今や一流の忍びとして、俺たちの一翼を担う存在だ。

 妖術の才においては紅葉に譲るが、情報収集の腕は一目置かれている。


「情報か。具体的には?」


 問い返す俺に、流華はわずかに身を乗り出す。

 語るべき内容が、彼の中でいかに重いものかが、その仕草からも伝わる。


「まずは、翡翠湖だな。情報を集めた結果、そこには櫛名田比売(くしなだひめ)っつう神がいることがわかった。それを祀らった迷宮があるらしい」


「クシナダか……」


 俺はその名を口にしつつ、思わず記憶の底を探るように目を細めた。

 脳裏に霞のように浮かぶ日本の記憶は、いまだに断片的だ。

 記憶喪失の影響で、確かさには欠ける。

 だが、完全に失われたわけでもない。


 ツクヨミという神と出会ったときと同じように、クシナダという名前には何か既視感があった。

 本来の日本神話について、俺はほとんど知らない。

 ただ、ソーシャルゲームや和風ファンタジー小説には触れたことがある。

 ツクヨミやクシナダは、それらでチラホラと見聞きした名前だ。

 全体的な傾向として、強キャラとして設定されていることが多かった気がする。

 単純に考えれば、この世界においても格の高い神である可能性は高い。


「ありがとう、流華。よく調べてくれたな。翡翠湖への諜報活動は大変だっただろう?」


 俺は労う。

 流華は肩をすくめて苦笑した。


「いや、大変は大変だったけどさ。櫛名田比売の情報自体は、簡単に手に入ったんだ」


「そうなのか?」


「ああ。桜花七侍の樹影さんが知っていてな。どうやら、あの人もかつて翡翠湖の迷宮に潜り、加護を得ることができたらしい」


「おぉ……。そんなところに情報源があったとは。灯台下暗しというやつか」


 思わず感嘆の声が漏れる。

 桜花七侍は、それぞれが十分な実力を持つ。

 とりわけリーダー格の樹影は、異質ともいえる妖術を使いこなしていた。

 彼女がクシナダの加護を受けていたというのなら、その実力にも納得がいく。

 だが、そこには拭いきれない違和感もあった。


「うーん……」


「どうした? 兄貴」


 流華が不安げに俺を覗き込む。

 俺は視線を床に落とし、思考をまとめるように指を組んだ。

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