ミリオンズ会議が開かれている。
俺は『影魔法』や『気配隠匿』を自力で強化したことをみんなに伝えた。
「他には上げたスキルは――」
「はいはいっ! 私、分かります!!」
レインが元気よく手を挙げる。
これほど多くのスキルを持っている俺の些細な変化を見逃さないとは……。
俺としても、少し嬉しくなる。
女性で言うところの『どこが変わったか分かる』みたいな感じかな?
美容院で毛先を数ミリ切っただけ……みたいな。
気付くのは至難の技だが、その分だけ気づいてもらえたときの嬉しさが増す。
「おお、言ってみてくれ」
「ズバリ! お館様は『空間魔法』を強化されたはずです!!」
レインが目を輝かせている。
見事に的中だ。
「ふむ……。よく分かったな」
俺は素直に称賛した。
確かに、俺は『空間魔法』をレベル3から4に上げている。
首領リオン戦では、空間魔法による転移で戦いの場を移したりもした。
これがなければ街中で戦うはめになっていただろう。
その場合、周囲に被害が出たり、俺の正体がバレたりするリスクが高まっていた。
「えへへ……。空間魔法は、私とお館様を繋ぐ絆ですから……」
「ふむ。確かに、そう言われればそうだな」
レインの言葉に納得する。
俺は多種多様なスキルを持っている。
ミリオンズの面々も、俺ほどではないがそれぞれが複数のスキルを揃えている。
しかしその中でも、『空間魔法』を持っているのは俺とレインだけだ。
彼女が特別性を感じるのも理解できる。
「ま、とにかく正解だ。俺は『空間魔法』をレベル3から4に上げたぞ」
「わぁい! お揃いです!!」
レインが喜ぶ。
そう無邪気に喜ばれると、俺も嬉しくなってくるな。
「むぅ……! ひ、卑怯ですよ!!」
「ミティ?」
「私だって……私だって! タカシ様が『槌術』や『鍛冶術』を強化されたら、すぐにでも分かります!! たまたま今回は『空間魔法』だっただけで……!!」
ミティがレインに対抗意識を燃やしている。
いや……別にそんな張り合わなくても……。
「あ……。その……ごめんなさい……」
レインが萎縮してしまった。
彼女もミリオンズの一員ではあるのだが、加入時期は最も遅い。
俺以外のミリオンズ10人の内、蓮華とレイン以外は俺と結婚している。
その上、第一夫人ミティ、第二夫人アイリス、第三夫人モニカは子どもまで生んでいる。
さらに言えば、レインは今も昔もメイドとして仕えてくれている。
そのため、レインはどうしても一歩引いた態度を取る傾向があるのだ。
ミティもその辺りは分かっているから、彼女に対して強く当たることはない。
ただ、例外はある。
「いえ……私も言い過ぎました。タカシ様のこととなると、カッとなってしまって……。ごめんなさいね、レイン」
「は、はい……」
ミティがレインに謝る。
ミティは俺のことが絡むと、たまに感情的になってしまう。
愛ゆえの暴走なので、俺は微笑ましいと思うようにしているが……。
レインとしては、第一夫人のミティに怒られて気が気じゃないだろう。
「2人とも、すまないな。俺の愛が足りないため、物足りない思いをさせてしまって」
俺は2人に謝罪する。
こういうのは男が悪い。
俺の愛がもっと大きければ、愛する女性たちが張り合う必要もなくなるのに……。
「いえ! お館様は何も悪くありません!!」
「ええ、そうです! 偉大なタカシ様がたくさんの女性を侍らせるのは、自然なことではありませんか!!」
ミティとレインが慌ててフォローしてくれる。
俺は彼女たちの頭を優しくなでる。
「ありがとう。2人とも」
「はいっ!」
「はい……」
ミティとレインが嬉しそうに目を細める。
ミリオンズの最古参と最新参だが、2人も可愛い。
「ふふっ……。でも、タカシさんは本当に女性関係にだらしないですわよね」
「その通りだと思います。ヤマト連邦では、あまり増えないと良いのですけど……」
リーゼロッテとサリエが感想を漏らす。
むむ……。
確かに、そういう面はあるかもしれないが……。
「『あまり増えないと』って、少しばかり増えること自体は確定事項なのか?」
「だってそうでしょう? タカシさんですもの」
「そうですね。タカシさんは、女性を惹き付ける力がありますから……」
リーゼロッテとサリエがあっさり頷く。
ひどい言われようである。
だが、そうか。
ヤマト連邦でも、ハーレムメンバーを少しぐらい増やしていいのか……。
気が楽になったぜ。
より万全の状態で潜入するため、引き続きミリオンズ会議で情報共有をしていくことにしよう。
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