【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

990話 あの人は何者【サーニャ視点】

公開日時: 2023年4月13日(木) 12:42
文字数:2,046

 タカシたちが『猫のゆりかご亭』をチェックアウトし、オルフェスの街中へと繰り出した頃――。

 従業員のサーニャは、タカシたちが泊まったスイートルームの後片付けに取り掛かろうとしていた。


「まったく、朝から大変な目に遭ったですにゃ……!」


 サーニャはため息をつく。

 タカシたちに対する第一印象は普通であった。

 20代の地味な男性、10代後半でモデル体型の兎獣人の女性、10代前半で芯の強そうな犬獣人の少女……。

 そんな3人が宿屋にやって来たのだ。


 それぞれ、単独の客として見れば何の変哲もない。

 ただ、3人組として見れば話は別だ。

 種族が違うので兄妹ではないだろうし、行商人の一行にしては手荷物が少なすぎる。

 そうなると、考えられる可能性は限られてくる。


 最初に考えたのは、単なる友人同士という間柄だ。

 古都オルフェスは、観光地としても人気が高い。

 英霊祭のないこの季節はやや閑散としているものの、下見などに来る客はいても不思議ではないのだ。

 しかしそれは外れであった。


 次に考えたのは、男性と兎獣人の女性が恋人同士であり、犬獣人の少女はその付き添いといったものだ。

 だがそれも間違い。


「まさか、あの地味な男の人がハーレムの主だったとは思いもしなかったですにゃ……」


 サーニャは思わずそう呟いた。

 ハーレムというのは、男性が複数の女性を囲う形態のことだ。

 男性には相応の魅力が求められるし、複数の女性を養うだけの稼ぎも必要である。

 サーニャから見て、タカシがその条件を満たしているようには思えなかった。


「でも、あんな姿を見たら信じるしかないですにゃ」


 昨晩の出来事を思い出すサーニャ。

 就寝時間の直前に、スイートルームへ濡れタオルを持っていったときの光景である。


「すごかったですにゃ……!」


 サーニャにとって、それは衝撃的な光景であった。


「あんなに大きいなんてビックリしたですにゃ!」


 思わず記憶を思い出して赤面するサーニャ。

 しかし、すぐに我に返って頭をブンブンと振った。


「い、いけませんにゃ……! お客様のモノを思い出してしまうなんて失礼ですにゃ……!!」


 そう思いつつも、脳裏に焼き付いて離れない記憶。

 昨晩に続いて、つい先ほども”モノ”を見てしまったのだ。

 タカシが放った『シャイニング・マグナム』なる必殺技だ。

 彼としては大失敗であり、実際にサーニャは大きく動揺してタカシとの心的距離を大きく広げてしまった。


 しかし同時に、ある意味では成功であったとも言える。

 なぜなら、サーニャに対して決して消えることのなり強烈なインパクトを残したからだ。

 彼女にとって、タカシはこれまでに出会ったことのないタイプの人間だった。

 それゆえに困惑してしまうのだが、不思議と嫌な気持ちにはならないのである。


「不思議な人ですにゃ……」


 彼女は改めてそう思った。


「それにあの人のアレ……凄かったですにゃ……」


 思い出しただけで顔が熱くなるのを感じた彼女。

 その気持ちを引きずったまま、タカシたちが去ったスイートルームの清掃に取り掛かろうと部屋に入ったのだが――


「にゃ、にゃんにゃんですかこれはぁ!?」


 そこには予想だにしていなかった光景があった。

 部屋が荒れている?

 いや、違う。

 3人組が一泊したため、それ相応には散らかっていた。

 しかしながら、それ以上に異常なことがあったのだ。


「ベッドが……どうしてこうなってるんですかにゃ!?」


 そこにあったのは、まるで台風にでも襲われたかのような惨状だったのである。

 いや、もっと酷いかもしれない。

 シーツがグチャグチャになり、あちこちにシミができていたのだ。


「ううぅ……。お詫びの金貨って、このためだったのですかにゃ……」


 タカシたちがチェックアウトする際、サーニャに対し詫び金と称した金貨を渡していたのだ。

 それはスイートルームの宿泊料金の倍以上の金額であったため、最初は断ろうとした彼女であったが――


『気になさらないでください。むしろこちらが申し訳ないくらいです』


 そう言って強引に渡されてしまったので受け取るしかなかったのである。


「はぁ……。本当にあの人は何者なんでしょうか……?」


 考えれば考えるほど分からなくなる謎多き人物について、サーニャは小さくため息をつく。

 掃除は大変だが、もらった額を思えば割のいい仕事でもあるので気合を入れて取り組んでいく。


「これは借金返済の足しになりそうですにゃ!」


 13歳にして、『猫のゆりかご亭』の看板娘兼オーナーとして働く少女サーニャ。

 彼女には借金があった。

 理由や背景は、今回は省略しておく。

 頑張って返済しているが、利子も含めてなかなか減らない状況にある。

 こういう臨時収入はありがたいものだ。


「――にゃっ!? にゃんかヌルっとしたですにゃ! このシーツ、変な液がついてますにゃ! 一体なんなんですかにゃあ!」


 彼女は13歳だ。

 年相応に性的知識を持っている一方で、年相応に持っていない部分もあったりする。

 彼女は、タカシたちが一晩中励んでいた後始末に悪戦苦闘する。

 なんとか部屋の片づけを終えた頃には、すっかり疲れてしまっていたのだった。

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