【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1033話 タルの中の不審者

公開日時: 2023年5月26日(金) 12:06
文字数:1,838

 俺は襲撃者の3人を尋問し、情報を得た。

 注意すべきは、お頭の『ダン・ド・リオン』、幹部の『剛体のヨゼフ』、そしてヨゼフが使ってくる古代魔道具『ナントカの芳香』あたりだ。

 特に古代魔道具には要警戒だな。

 エレナたち『三日月の舞』は、魔法を封じられて敗北したようだし。


(まぁ、俺なら大丈夫だとは思うが……)


 魔法に大きく依存している『三日月の舞』に対し、俺は剣での戦いも得意とする魔法剣士だ。

 しかも、魔法や剣だけではなく、素手による格闘術も修めている。

 魔法を封じられたからといって、一方的に負けるとは思えない。


(くく……。待っていろ、ダダダ団……。必ず根絶やしにしてやる……)


 俺は内心で闘志を燃やす。

 ダークガーデンのボス『ナイトメア・ナイト』として黒衣を纏った状態で、気配を消しつつ歩みを進めていく。

 そして――


「しまった……。迷ったぞ……」


 俺はオルフェスのスラム街で途方に暮れる。

 うっかりしていた。

 ダダダ団のアジトがどこにあるか分からない。

 尋問ではボスや幹部、魔道具の情報を聞きだした。

 しかし、最も重要と言ってもいいアジトの場所は聞いていなかったのだ。


「どうしたものか。――ん?」


 闇雲に路地裏を歩いていると、妙な気配を感じた。

 俺は周囲を見回す。

 すると、建物の陰にあるタルの中が不自然に揺れた。


「そこに誰かいるのか?」


 俺は問いかける。

 だが、返事はなかった。


「出て来ないのであれば、剣を刺して殺すぞ」


 もちろん脅しだ。

 いきなり強い言葉で脅しすぎたかもしれないが、ここがスラム街であることを考えれば妥当だと思う。

 タルの中に隠れた謎の人物……。

 ダダダ団の構成員の可能性もある。

 道行く人を奇襲して、身ぐるみでも剥ごうとしていたのだろうか。


「……」


 やはり反応はない。

 まぁ、普通に考えて出てこないか。


「忠告はしたぞ」


 俺はアイテムボックスから普通の鉄剣を数本取り出す。

 ミティの一番弟子であるロロにもらった剣だ。

 紅剣アヴァロンやドレッドルートに比べ、性能的には劣る。

 しかし、『ナイトメア・ナイト』として隠密行動を取る際にはこうした普通の剣の方がいい。

 紅剣アヴァロンを使おうものなら、見る人が見れば一発で俺の正体が『紅剣のタカシ』だとバレるからな。


「死ぬがいい」


 ズバッ!

 ズババッ!!

 俺は数本の鉄剣を、次から次へとタルに突き刺していく。


「――ッ!?」


 すると、タルの中から声にならない悲鳴が聞こえてきた。

 そりゃそうだ。

 自分が隠れている場所を狙って剣を刺されれば、凄まじい恐怖を感じるよな。


 まぁ、俺は『気配察知』スキルのおかげでタルの中にいる人物の姿勢を把握できる。

 武士の情けで、体に直接突き刺すのは勘弁してやった。

 ありがたく思ってほしい。


「さて、俺の本気が分かっただろう? もう一度言う。そこから出てこい。そして、正体を見せろ」


 俺はタルに向かって声をかける。

 これほど過激なことをすれば、相手も出てくるはずだ。

 そう思ったのだが、タルの中から人が出てくる気配はない。


「やれやれ、強情な奴だ。悪党にしては度胸がある。――ん?」


 俺はふと異臭に気づく。

 なんというか……アンモニア臭いというか……。

 まさか!


「なんだ、漏らしたのか? くくっ、情けない奴だ。剣は直撃しないようにしてやったのに、体をかすめただけで漏らすほどの恐怖を感じたとは。ガキみたいな奴だ」


 俺はタルの中の奴を挑発する。

 どうやら、中にいる人物は相当なビビリらしい。

 俺は再び『気配察知』のスキルを活用して内部の様子を伺う。

 恐怖のためか、小刻みに震えているようだ。

 しかし、相変わらずタルから出てくる様子はない。


「まどろっこしいな。とりあえず剣を回収してからの――【焼失】」


 俺は鉄剣をアイテムボックスに回収した後、オリジナルの火魔法を発動させる。

 比較的初期の頃から使用している魔法だ。

 攻撃対象を非生物に限定するイメージを付与することで、火力を増強させることができる。

 ボオオォッ!!

 激しい炎がタルを包む。


「――ッ!!!」


 俺が魔法を発動させると、タルの内部から再び声にならない悲鳴が響いた。

 だが、今さらだ。

 超火力により、タルはあっという間に灰となっている。

 不審者が何かしらの武具を持っていたとしても、同じく灰になっているだろう。

 無事なのは、本人の肉体だけだ。


 やや手荒かもしれないが、スラム街の路地裏でタルなんかで身を隠しているのが悪い。

 恨むなら不審な行動をした自分を恨め。

 俺はそんなことを考えながら、炎に包まれた不審者を眺める。

 はてさて、隠れていたのはどんな人物なのやら……。

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