リールバッハとの1対1の対談を終えた。
俺はメイドさんに案内され、客室に向かう。
中に入ると、ミティたちがくつろいでいた。
「お疲れ様です。タカシ様」
「お疲れー。リールバッハさんとの話はどうだった?」
ミティとアイリスがそう言って、出迎えてくれる。
「ええと……。アヴァロン迷宮攻略やファイヤードラゴンの件であらためてお礼を言われたよ」
「それだけ? 他にもあったんじゃないの?」
モニカが重ねてそう問いかけてくる。
あるにはあったが……。
この場で話すような内容かどうか。
「ふふん。まどろっこしいわね。リーゼ、こっちに来てタカシの前に立ちなさい!」
「わ、わかりましたわ……」
リーゼロッテが緊張した面持ちで俺の前に立つ。
なんだか部屋が緊迫した空気に包まれている気がする。
これはどういうことだ?
俺に何をしろと?
「タカシさん……。話は聞いていますよ。殿方なら、ビシッと決めてください」
「そ、そうですね。期待しています!」
サリエとニムがそう言う。
これは、ひょっとすると……。
俺とリーゼロッテの結婚の話が、彼女たちに根回しされていたのか?
俺がリールバッハと対談している間に、リーゼロッテの母マルセラあたりが話にきていたのかもしれない。
こうなった以上、俺も腹をくくる必要がある。
「リーゼロッテ」
「は、はい。タカシさん」
彼女がこちらに視線を向ける。
美人であり、かわいらしさもある顔つきだ。
水色の髪が美しい。
「俺と初めて会って間もない頃、高級なポーションを惜しみなく使ってくれたことがあったな。あれがなければ、俺は死んでいたかもしれない。あらためて礼を言わせてもらう。ありがとう」
「いえいえ。当然のことをしただけですので。それに、元はと言えばこの家から持ち出しただけのものですし」
リーゼロッテがそう謙遜する。
彼女は伯爵家の長女なので、金銭や資産の面では確かに余裕があったことだろう。
とはいえ、あの頃の彼女は伯爵家から家出中の状態だった。
そんな中で高級なポーションを迷わず使用できるのは、彼女の優しさゆえである。
「普段から、おいしい料理を幸せそうに食べているよな。その様子を見ると、こちらまで幸せな気持ちなる」
「ええと……。少し恥ずかしいですわね。好きなものを好きなだけ食べているだけですので……」
彼女の顔が赤くなる。
「俺は、そんなリーゼとともに人生を歩んでいきたいと思っている。リーゼ……、俺と結婚してくれ!」
俺はリーゼロッテにそう言う。
公開プロポーズだ。
本当は2人きりのときに言うつもりだったが、こうまでお膳立てされていてはな。
「……あらあら。まあまあ……」
彼女の顔がさらに赤くなり、何やら挙動不審になっている。
体がふらついている。
そんな彼女に、ユナが近づく。
「ふふん。リーゼ、ここが踏ん張りところよ。照れている場合じゃないわ」
ユナがリーゼロッテを支えつつ、そう言う。
少し落ち着いたリーゼロッテを見て、ユナが彼女の背中を軽く押す。
「タカシさん。こちらこそ、ふつつか者ですがよろしくお願いしますわ」
リーゼロッテがそう返答をする。
よし!
これで、プロポーズ成功だ。
周囲からお膳立てされていたし、彼女の忠義度は高いし、ほぼ間違いなく受けてくれるとは思っていたが。
それでも、やはり緊張するものだ。
「へー。リーゼお姉ちゃんとタカシお兄ちゃんが結婚かー」
「うふふ。英雄は色を好む……。タカシさんのハーレムの拡大は止まることを知りませんわね」
マリアと千がそう言う。
「ピピッ! 個体名:リーゼロッテをマスター:タカシの婚約者として登録します」
ティーナが無機質な声でそう言う。
「おめでとうございます」
「めでたいでござる!」
サリエと蓮華がそう言う。
他のみんなも祝福してくれている。
「ま、また奥さんが増えるのですね。婚約はわたしが先でしたが、ご結婚はリーゼロッテさんが先になるのでしょうか?」
「時期についてはまた相談しよう。リールバッハさんとも相談したのだが、俺に少し考えがある」
具体的には、ニム、ユナ、マリア、サリエあたりと合わせて結婚式を開こうという考えだ。
俺とニムは婚約済みだ。
しかし、ユナ、マリア、サリエは俺と本人たちとの間でそういう話が出ただけにとどまる。
まだ両親に結婚のあいさつには行っていない。
この国の法律から判断すれば、本人の希望と同意により、結婚できる。
しかし、できるだけ両親にあいさつはしておいたほうがいいだろう。
「みんな、祝福してくれてありがとう。このままお祝い会をしたいところだが、今日はもう遅い。慰労会でたくさん食べたし、海洋温泉では温まることができた。今日はもう寝ようか」
「ふふん。そうね。なら、私たちは隣の部屋に戻るわ」
「そうだね、ユナお姉ちゃん」
ユナとマリアがそう言う。
彼女たちは、最近よくいっしょにいる。
同じ火魔法使いとして気が合うのかもしれない。
「隣の部屋? 全員がここで寝るんじゃないのか?」
「さすがに1つの部屋に全員は手狭ですよ。二部屋用意していただきましたので、私たちはそちらで寝ます」
俺の問いに、サリエがそう答える。
俺がリールバッハと面談している間に、部屋割についても彼女たちの間で相談済みだったようだ。
俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、リーゼロッテが、この部屋。
ユナ、マリア、サリエ、蓮華、ティーナ、ドラちゃん、千が隣の部屋だ。
「では、また明日でござる」
「うふふ。わたくしもゆっくりさせてもらいましょう」
蓮華と千がそう言う。
彼女たちは少し仲が悪いが、同じ部屋でだいじょうぶなのだろうか。
まあ、さすがに貴族の屋敷に招かれて暴れるほど愚かな2人でもないだろうが。
「みんな、また明日な」
俺はそう言って、ユナやマリアたちを見送った。
俺もゆっくりと眠らせてもらうことにしよう。
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