外にいる男性騎士たちは、イリーナによって気絶させられた。
彼女が裸のレティシアを担いで隊長室に帰還する。
だが、ミティはまだ許していないようだ。
「はぁ……、はぁ……。こ、これ以上はキツイって……」
「落ち着いてください、ミティさん。話せば分かりあえるはずです」
「話す? 私からタカシ様を奪う者とは、話し合うことなどありません」
「だから奪わないってば!」
ミティたちが言い争いを始める。
俺はそのスキに――
ジャララ。
バキッ!!
(よしっ! 取れた!!)
俺を拘束していた最後の鎖を破壊することができた。
これで俺は自由である。
アイテムルームから服を取り出し、素早く着替える。
これで状況はかなりマシになった。
隊長室でパンツ一丁で大の字に拘束されているのは、見る人が見れば特殊プレイが丸わかりだ。
しかし、隊長室で普通の服を着て普通に立っているのであればどうか?
オパンツ戦隊の件で騎士団を訪れるという話はしてあったし、何も不自然な点はない。
「部屋の奥から、何やら物音のような声が聞こえました。誰かいるのでしょうか?」
「ええっと。それは……」
「まぁいいです。自分の目で見れば済む話ですから」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい。隊長室の奥は機密情報が……」
「関係ありません」
レティシアがミティを制止するが、ミティは止まらない。
彼女の超パワーによる行進を物理的に止められる者は、そうそういないよな。
止めようとするなら、言葉で説得して止める必要があるのだが……。
俺に関することになれば、彼女は多少の言葉では止まらない。
まぁ、俺は既に着替え終えたから、もう隠れ続ける意味もないんだけどな。
タイミングを見て、俺は何気ない感じで部屋の奥からミティの方へ歩いていく。
「よう。誰かと思えば、ミティじゃないか」
「あっ! タ、タカシ様!!」
「お前も隊長室に来たのか。気付かなくて悪かった」
俺はとぼけてそんなことを言う。
隊長室とは言っても、それほど広くはない。
いくら部屋の奥にいたとしても、出入り口付近で人が話していて気づかないわけはない。
特に俺の場合は、聴覚強化のスキルも持っているしな。
しかしまぁ、気づかないと絶対におかしいとも言い切れないぐらいの距離感でもある。
出入り口付近の会話の音量が小さめで、奥にいる者がうたた寝でもしていたのなら、ギリギリ気付かなくとも不自然ではないだろう。
「い、いえ……。タカシ様に会えただけで、私は幸せです」
「そうか? なら良かった」
「はい……。ええと、タカシ様はこちらで何をされていたのですか?」
「ああ。例のオパンツ戦隊の件で、イリーナやレティシアたちと話をしていたんだ」
「話……ですか。それにしては、ずいぶんと時間が掛かっておられたようですが」
俺が出かけたのは昼過ぎ。
今は夕方くらいか。
確かに、結構な時間が掛かっているな。
彼女たちと尋問プレイを楽しんでいたせいだが。
半ば浮気みたいなものだし、ここはいい感じに誤魔化さないと……。
「それがな。実は俺がオパンツ戦隊・レッド仮面なんじゃないかと疑われたんだ。厳しい尋問を受けていたんだよ」
「ええええぇっ!?」
ミティが驚く。
「なっ……」
「ちょっと、タカシちゃん。その件は……」
レティシアとイリーナが非難の目でこちらを見ている。
ああ、しまったな。
これはミティに言う必要のないことだったか。
指名手配は取り下げてもらえるという話だったし。
ううむ。
やはり、ミティを前にしたら俺は正常な判断力を失いがちだな。
第一夫人である彼女に浮気をバレたくないという気持ちもあるし、単純に超絶怒涛のパワーを持つ彼女の制裁が怖いという気持ちもある。
いや、俺は彼女に殴られたことなど一度もないんだけどな。
どうしても、素手で巨岩を粉砕したり、鉄の棒を折り曲げたりするイメージを引きずってしまうのだ。
「タカシ様を……尋問……? このベッドの周りにある拘束具は……?」
「それで拘束されて、地獄を見ていたところだよ。全く酷い目に遭ったぜ……」
「…………」
ミティは沈黙する。
無表情だが、全身からは怒りのオーラが出ている。
「……でしょうか」
「ん?」
「偉大なるタカシ様を拘束するとは……。そんなことをするのは、どこのどいつでしょうか?」
「あー……。それは、だな……。うん。ええっと……」
やべ。
自分が悪くない方向に話を転がしている内に、いつの間にかマズい方向に話が進んでいる。
このままだと、イリーナとレティシアが悪者になる。
そして、怒り狂ったミティが彼女たちの頭部を剛腕で粉砕して……。
いやいや、それはさすがにマズいぞ!
「失礼しました。愚問でしたね」
「あ、ああ……」
良かった。
思い直してくれたか。
無罪放免になった今、イリーナやレティシアに対して誤認逮捕の責任を追及する意味はあまりない。
というか、そもそも誤認でも何でもないしな。
「状況で一目瞭然でした。この2人がタカシ様を苦しい目に遭わせたのですね?」
「へ?」
「そうですね?」
「あ、ああ……。そうであるとも言えるし、そうでないとも言えるような……」
苦しい目か。
寸止めプレイを苦しいと表現すべきかどうか……。
あれはあれで、気持ちよかったんだよな。
最後の満足感だけは味あわせてもらえなかったが。
うん。
まぁ、苦しい目に遭ったと言っても過言ではないかもしれない。
「分かりました。では、この2人には報いを受けてもらいます」
ミティが闘気を解放し、イリーナとレティシアを睨んだのだった。
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