俺は魔導技師ムウの治療に取り組んでいる。
見たところ、彼女の心臓付近の魔力回路が乱れている様子だ。
今回の事故以前より、負担が蓄積されていたのかもしれない。
「では、いくぞ」
俺はムウの服のボタンに手をかけ、一つ一つ外していった。
すると、胸を覆っていた下着が露わになった。
「ほう……。黒のレースのとは……。やるな」
「へぇ……。ムウちゃん、大人っぽいの付けているんだ……」
「い、意外と大胆ですね」
「え、えっちぃです……」
俺、モニカ、ニム、メルルの順で感想を述べた。
ムウは意識を失った状態なので、もちろん無反応である。
(ムウって……どんなタイプだったかな?)
なかなかに可愛い子だとは思っていた。
だが、残念ながら親睦を深められてはいない。
初めて会ったのは、俺が『ナイトメア・ナイト』として『ダダダ団』のアジトに潜入したとき。
少し緊迫した状態だったので、雑談などはしていない。
次は、『Dランク冒険者タケシ』が泊まっている部屋に彼女が訪れたときだ。
俺が頭領リオンを介抱しており、男色だと勘違いされた。
あのときのムウは、目を輝かせていたな。
いわゆるBL的な趣味を持っているのかもしれない。
そして、この秘密造船所にて『タカシ=ハイブリッジ男爵』として再会した。
3つの顔を明かしたことだし、ちゃんとした親交がようやく始まったと言ってもいいだろう。
だが、彼女には隠密小型船の魔導回路を仕上げるという仕事がある。
そのため、あまり長時間の雑談などはできていない。
いまだに、彼女がどういう子なのか分かっていない。
分かっていることとしては、やや元気な子で、BL的な趣味を持っていることぐらいか。
ブラジャーのイメージ的には、清楚系で白、元気っ子の黄色やオレンジを想像していたが……。
黒とは予想外だった。
「ふふ……。さぁて、この下はどうなっているのかな~?」
「えっ……」
俺の言葉を受け、メルルが声を上げた。
どうしたのだろう?
「ま、まだ脱がせるのですか?」
「ん? 当然だろう? 魔力回路を正常化するには、繊細な作業が必要となる。少しでも抵抗を減らすために、素肌を露出させる必要があるんだ」
「そ、そうですか……。でも……」
「繰り返し言うが、安心してほしい。俺に、やましい気持ちはない。これは医療行為の一環だ」
俺は真剣な表情で言った。
メルルたちは俺のことを疑っていたが、これは必要な処置だ。
別に、黒のブラジャーの下にどのような光景が広がっているのか知りたいというわけではない。
ムウの体を保護するために、必要としているのだ。
決して、胸に興味があるわけではない。
「……分かりました。ムウさんのためにも、頑張ってください」
「おう」
メルルの応援を受けて、俺はムウのブラジャーをずらした。
完全に脱がせるのではなく、ずらしただけである。
意識不明のまま胸を露出してしまうことになった少女への、せめてもの配慮である。
これはこれで、なかなかの背徳感があるが……。
「……うむ。素晴らしいぞ」
俺は思わず呟いた。
小ぶりなサイズで、とても美しい。
俺は感動を覚えずにはいられなかった。
「では、魔力を注入する。集中するから、静かにしていてくれ」
「うん」
「はい」
モニカとニムが返事をした。
メルルも小さくうなずいている。
俺はムウの胸元へ右手を置いた。
そして、体内の魔力を指先に集めるイメージで放出していく。
放出先は、ムウの胸の先端だ。
「……よし、うまくいったな」
俺の狙い通り、魔力はムウの胸の先端に集まっている。
あとは、これを心臓付近に送り込めばいい。
「では、行くぞ……」
モミモミ……。
俺は、ムウの胸に手をマッサージする。
こうすることで、先端に集まった魔力を循環させているのだ。
決して、胸の柔らかさを楽しんでいるわけではない。
「ちょっ!? ダーリン!?」
「兄さん!?」
「えっ!? 何しているんですか!?」
モニカ、ニム、メルルの順番で叫んだ。
彼女たちは驚いていたが、今は説明している暇がない。
「しっ! 静かにしてくれ! ムウの治療中だ!!」
「で、でも……。その……」
「ダーリン! 変なことしないって言ったじゃん!!」
「兄さん、まさかムウさんにいかがわしいことを……」
「俺を信じろ! 本当に治療をしているんだ!!」
俺は叫ぶように言い返した。
胸を揉んでいるだけに見えるかもしれないが、これも立派な治療だ。
さて、引き続き集中してムウの体を楽し――じゃなくて、治療していかないとな。
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