「まず、『植物妖術』は伸ばすんだよな?」
「はい。高志様が仰っていた通り、植物妖術は今のところ私しか使えないので……。桜花七侍の一人を倒したときのように、今後も活躍できるかもしれません」
「そうだな。上手く使えば、植物妖術は強力だ。特殊な効果を持つ植物を生成して攻撃に使ったり、逆に味方を守ったりもできる」
紅葉の言葉に、俺は同意した。
攻撃力だけなら火魔法や火妖術の方が上だし、防御力だけなら土魔法の方が優れている。
だが、植物魔法や植物妖術ならではの良さもある。
「一気にレベル5――いや、五等級まで上げるか?」
俺は途中で言葉を言い換えた。
俺には『異世界言語』のチートがある。
だが、それも万能ではない。
相手の話す言葉がカタコトに聞こえたり、逆に自分の話す言葉がカタコトに聞こえてしまうことだってある。
このあたりの細かい仕様は不明だが、後者については意識的に多少の歩み寄りをすることで解決できることが多い。
紅葉たちには『レベル』よりも『等級』という言葉の方が通じやすい。
「言い直されずとも、レベルという表現で問題ありませんよ。高志様にとってはそちらの方が自然なのでしょう?」
「だが……」
「これまでに教えていただいた言葉は、ちゃんと覚えています。高志様は普段通りの言葉遣いで話してくださって大丈夫です」
「そうか、分かった。では改めて……植物妖術をレベル5に上げるか?」
俺は確認する。
スキルレベル2から3まで10ポイント。
スキルレベル3から4まで15ポイント。
スキルレベル4から5まで30ポイント。
紅葉の残りスキルポイントは55なので、ぴったり足りる。
「いえ、まずはレベル4までに留めていただこうかと」
「ほう? どうしてだ?」
「『過ぎたる力は身を滅ぼす』と言いますから」
「なるほどな。聡明な紅葉に限ってそんなことはないと思うが、確かに一理ある」
俺は頷いた。
おぼろげな記憶だが、俺も最初の頃はそんな感じだった。
というか、今もか。
桜妖術だって、その気があればレベル5まで上げられたところ、実際にはレベル3までに留めたしな。
それに、その他のスキルについてもレベル3~4に留めているものが多い。
主に、『レベル4から5に上げるためにはスキルポイントが30も必要』という事情が大きい。
しかし同時に、『スキルレベル5の効果の強力性に対して慎重になっている』という要素も多少は影響している。
「では、レベル4までだな。他には……採集術か? しかし、桜花城を拠点とするこれからはさほど有用ではないか……」
山村で生きていた頃なら、紅葉にとって有用なスキルだっただろう。
だが、今の彼女にとっては……
「いえ、採集術も伸ばしたいと考えています」
「うん? それはまた、どうしてだ?」
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