俺はエレナに対し、将来的に混浴しようと約束を取り付けた。
だが、その直後に強烈な蹴りを喰らい、地面に転がる。
それも、エレナやルリイと一緒にだ。
「痛たた……」
俺は痛みに耐えながら顔だけを起こす。
すると、目の前に真っ白なものが広がっていた。
「ん……? なんだこれは?」
「ひゃんっ……」
頭上から、ルリイの小さな声が聞こえた。
同時に、視界に映るものが動き出す。
「えっ? ――もがっ!?」
それは俺の顔に覆い被さり、呼吸を妨げるほどに密着した。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
ただ、本能的に危険を感じたため、俺は抵抗を試みる。
だが――
(くっ……! 離れねぇ!?)
それはとても柔らかく、良い匂いがした。
俺の顔面に押し付けられているせいで、形を変える。
「そ、そこはダメだよぉーっ! はぁはぁ……。た、タケシさん……」
ルリイが荒い息遣いをしている。
なんだ?
いったい何が起きているんだ!?
俺はパニックになりながらも、必死にそれを掴んで引き剥がそうとする。
だが、それが逆に刺激になったらしく――
「あっ……! も、もう! エッチなのはダメだよぉー……」
ルリイが艶っぽい声で抗議する。
そして、俺の眼前から白い物体が消え去った。
「ぷはっ……! な、何がどうなっていたんだ……」
俺は酸素を求めて喘ぎつつ、状況の確認をしようとする。
だが、その必要はなかった。
なぜなら――
「た、タケシさん……。ごめんなさいー……。わたし……!」
ルリイが真っ赤な顔をして、申し訳なさそうに謝ってきたからだ。
(なに? まさかさっきの柔らかいものは……!)
俺はハッとなって、ルリイの服装を確認する。
今さらだが、今日の彼女はスカートを履いていた。
冒険者を休む際のオフスタイルといったところか。
おそらくだが、スカートの下にスパッツなどは履いていないだろう。
ルリイはそういうタイプに見えない。
(ま、まさか……!)
俺の視線に気付いたのか、ルリイは恥ずかしそうに手で身体を隠してしまう。
そして、俺から目を逸らすように横を向いた。
だが、俺は見逃さなかった。
俺の眼力と経験、そして妄想力をもってすれば、スカート越しでも彼女の下着の色を推測できる。
その予想色は――
「ルリイさん!」
「ひっ……!? な、なにー?」
俺は倒れた姿勢のまま、ルリイに話しかける。
「さっきの感触と色合いは……!! もしかして、あなたは純白のパンティを――」
「きゃああっ!! やめてぇーっ!!」
「ぶへっ!?」
俺の言葉は途中で遮られた。
ルリイの足によって、思い切り脇腹を蹴りつけられたのだ。
「な、ナイスキック……」
ルリイは雷魔法使いだ。
俺のチートの恩恵などを受けているわけではないので、魔法専門。
近接戦闘は不得手としているはずだ。
しかしそれでも、長い間Cランク冒険者として活動してきただけはある。
足腰はしっかりと鍛えられていたようだ。
なかなかに素晴らしい蹴りだった。
「うぅ……。もー! タケシさんのバカァッ!!」
ルリイは泣きそうな顔になって、走り去っていく。
当然、俺はそれを追いかけようとするが――
「くっ……!? 足が動かねぇ……! ――って、エレナさん!?」
「…………」
俺の下半身に、誰かが絡みついていた。
視線を向けると、そこにはエレナがいた。
転倒時、ルリイは俺の上半身側に姿勢を崩した一方、エレナは俺の下半身側に倒れたようだ。
おかげで、ちょうど俺の股間の上にエレナの顔がある形になる。
「あ、あの……。エレナさん……?」
「…………」
俺が言葉を掛けても、エレナは反応を示してくれない。
ただ俺の上にエレナが倒れ込んでいるだけなら、別に問題はないだろう。
無理やり起き上がれば、エレナを半ば振り払いつつルリイを追いかけることも可能だ。
しかし、エレナは俺の下半身をガッチリと掴んでいた。
これでは、俺は身動きが取れない。
しかも――
(やべっ……!?)
エレナの鼻先が俺の股間に埋まっていた。
まるで犬のようにスンスンと嗅いでいる。
「すぅ……はぁ……。こ、この匂いは……まさか……!」
「ちょっ……。エレナさん……!?」
何が『まさか』なのだろうか?
俺の股間の匂いを嗅いだところで、何かがわかるはずもないと思うが……。
ともかく、このままではマズイ気がする。
どうにかしなければならない。
俺は思考を巡らせるのだった。
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