【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1655話 人質

公開日時: 2025年2月11日(火) 12:10
文字数:873

(ならばやはり、政治的な支配が最有力になるよな)


 那由他藩の支配層をそのまま存続させることで、住民の生活は一見変わらず、余計な混乱を生じさせない。

 だが、その支配層をこちらが支配することで、実質的には完全な掌握が可能となる。

 この方法なら、即時に支配を確立できる。


 問題は、どうやって支配層を従わせるかだ。

 やり方はいくつかある。

 統治者のスキャンダルを掴んで脅す。

 金銭的なメリット・デメリットを提示し、懐柔する。

 あるいは――本人や近親者の生命を握る。


 今回は、最後の手段が最も有効だろう。

 人質――それが今、俺たちと共にいる5人の子供たちだ。


 那由他藩の有力者たちの近親者。

 武僧たちは命を捨てる覚悟を持っていた。

 だが、子供を道連れにする覚悟はなかったらしい。


 だからこそ、彼らは俺たちの言うことを聞くしかない。

 湧火山藩に対しても、同じような手段で支配の確立を目指している最中だ。

 これが、最も確実で、最も手っ取り早い。


「……分かっているとは思うが、大人しくしていろよ」


 俺は、後ろを歩く5人の子供たちに声をかけた。


 彼ら彼女らは、那由他藩の上層部の近親者たちだ。

 中には、老僧の孫息子も含まれている。

 全体的に年齢は低く、最年長でも10歳に届かないほどだ。

 まだ、物事の善悪や、この戦の本質を理解するには早すぎる年頃だろう。


 それでも――彼らの目には、敵意がある。

 恐怖の色が混じりつつも、時折、俺を睨みつける視線が刺さる。

 当然だ。

 俺は彼らの故郷を奪い、親を脅し、そして今、こうして人質として連れ歩いているのだから。


 年齢は全体的に低めなので、根気よく友好的に接していけば、将来的に加護の付与も狙えなくもない。

 だが、現状の忠義度はかなり低めだ。

 ここから加護(小)以上まで持っていくのはかなり大変だろう。

 彼ら彼女らから嫌われるのはある程度受け入れて、いずれ加護(微)まで持っていければ御の字と考えよう。


 今はそれでいい。

 俺の目的は彼らに好かれることではないだから。


 子供たちは俺の言葉に反応しなかった。

 誰一人として声を発さず、ただ、静かに歩を進める。

 沈黙が、梅雨の湿った空気に溶けていく。

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