【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1398話 東雲高志『サムライ・スタイル』

公開日時: 2024年5月29日(水) 12:29
文字数:1,411

「ま、まだだ……! 俺は、まだ……!!」


 俺はかろうじて立ち上がる。

 今しがた俺の脳内に流れた、存在しないはずの記憶……。

 復讐に囚わされた悲しさはあったものの、子どもも含めて3人仲良く暮らす幸せな記憶……。

 俺はその記憶を、とても尊いものだと思った。


 この世界の蓮華とも、そんな幸せを手に入れられるだろうか……?

 いや、違う。

 幸せは、自ら勝ち取ってこそだ!


「ふん……。まだ立ち上がるか」


 幻影が剣を構える。

 俺はそれに対抗するべくして、剣を握りしめた。


「俺は、こんなところで負けるわけにはいかない。愛する家族のために、俺はお前たちを打ち破る!」


「……その心意気は認めよう。だが、貴様では拙者に勝てぬ。拙者は東雲高志『サムライ・スタイル』。刀に生き、刀に死ぬ者。貴様の剣とは覚悟が違う。勝負にすらならぬぞ」


「やってみなけりゃ……分からないだろうが!!」


 俺は剣に魔力を込める。

 そして、幻影へと斬りかかった。


「愚かな……。潔く散れ」


 幻影が刀を構える。

 その刀身には、無駄なものが一切ない。

 魔力も闘気も、己の肉体にのみ注ぎ込んでいる。

 そんな彼が操るのは、純粋な剣技だ。


「――【無明斬】」


 またアレか!

 目にも留まらぬ斬撃……。

 今の俺の剣技では、受け止めることは難しいが――


「【ワープ】」


「なにっ……!?」


 俺はワープで幻影の背後へ跳ぶ。

 そして、その背中に向けて斬撃を放った。


「【魔皇炎斬】ん!!」


「ぐああっ!」


 幻影が吹き飛ばされる。

 俺はさらに追撃すべく、幻影へ迫った。


「くっ……!!」


 幻影が体勢を立て直す。

 だが、ダメージは大きいようだ。

 これも特化型の弱点と言えるだろう。

 治療魔法があれば、自分で回復できるから問題ないのだが……。

 彼は治療魔法を扱えないらしい。

 少なくとも、戦闘中に大ダメージを癒せるほどではないことは確かだ。


「トドメだ!! ――むっ!?」


 俺はさらに追撃をしようとする。

 だが、咄嗟に攻撃を中断して後方へ跳んだ。

 その直後――俺のいた場所に剣の雨が降り落ちる。


「次から次へと……!!」


 俺が歯噛みしていると、また別の幻影が現れた。

 執事服に身を包んだ幻影だ。

 彼は優雅に一礼する。


「ふむ……。なかなかの勘をしておりますな。今のを避けるとは……」


「また新手か……! お前は何の特化型なんだ? ちょっとやそっとじゃ、もう驚かんぞ!」


 俺は幻影執事に宣言する。

 すると、彼は含み笑いをした。


「これは失礼を致しました……。では、見せて差し上げましょう。完成されし私の力を……」


 幻影が魔力を高めていく。

 これは……何系統の魔力だ?

 火や水なら分かりやすいのだが、それ以外の属性はパッと判別できない。


「さて……貴方はどう動きますか? 受けるか、避けるか……。あるいは一目散に逃げ出すか……」


 幻影が優雅に微笑む。

 その表情からは余裕すら感じられた。


「ふん……。正面からの攻撃なんぞ、対処法はいくらでも――」


「否。貴方にそんな選択肢はありません」


「なに……? ――ぐっ……!!」


 幻影執事が訳の分からないことを言う。

 だが、それを追求する時間はなかった。

 次の瞬間、俺の腹に剣が突き刺さっていたからだ。


「ぐはっ……!」


 俺は血反吐を吐く。

 完全に油断していた。

 なんだ、今のは……?


「私の空間魔法を用いれば、このように……。回避も防御も不可能です」


「く……!」


「私はこの技を……こう名付けました。月夜に紛れ突き立てられる牙――【月牙】と」


 幻影が告げる。

 俺はなすすべもなく、そのまま崩れ落ちたのだった。

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