【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1562話 血統妖術・散り桜

公開日時: 2024年11月9日(土) 12:32
文字数:1,087

「っ……!!」


「なんだ?」


 景春が首筋を手で押さえる。

 薄くとはいえ、俺が刀で斬りつけたのだ。

 当然と言えば当然の行為。

 だが……。


「血が出ていない? それは……桜の花びら? なぜ……」


 俺はそう呟いた。

 首筋から桜の花びらが散ったのだ。


「見たな? 余の『血統妖術』を」


「『血統妖術』だと……?」


 景春の首筋に、傷はない。

 しかし、彼の首筋から桜の花びらが散っている。

 それらの花びらはしばらく宙を舞ったあと……景春の体に吸い込まれるように消えた。


「見られてしまっては仕方ない……。この桜の花びらが、余の力だ。『血統妖術・散り桜』という」


 景春が言う。

 その体からは、先ほどよりも強い妖力が感じられる。

 俺が少しばかり動揺している隙を突き、彼は俺から距離をとった。


「『散り桜』……。それがお前の力か」


「そうだ。桜花家は、代々『桜系の血統妖術』を受け継いでいる。藩主たる余は、とりわけ強い力を持っているのだ」


「ほう? だが、強いとは言っても――」


 言葉の途中で、俺は素早く景春の懐に潜り込む。

 そして、彼の太ももを斬りつけた。


「この程度か」


 俺は景春に言う。

 太ももは深々と斬れている。

 放っておけば、出血多量で命を落とすだろう。

 そういうレベルで斬りつけた。

 偉そうなこいつも、命の危機を感じれば従順になるはず。

 さっさと紅葉たちの居場所を吐いてもらおう。


「クソガキめ、実力の差が分かったか?」


「なっ……!? い、今の速度は……?」


 俺が刀を納めると、景春は信じられないと言わんばかりに目を剥いた。

 そして、呆然とした表情を浮かべる。


「紅葉たちを返し、桜花城を明け渡せ。そうすれば、俺の治療妖術で止血ぐらいはしてやる」


「……一つ目の条件はともかく、二つ目の条件は飲めん。余は桜花藩の藩主だ。藩を明け渡すなど、できるはずがない」


「現実が見えていないらしいな。そのままだと、お前は死ぬぞ?」


「死にはしない。余は傷を負っておらぬ」


 景春が言う。

 そして、切り裂かれた太ももを見せてきた。

 かなり深めに斬りつけたはずだが……。

 そこには傷がなかった。

 代わりに、その周囲に桜の花びらが舞っている。


「余には、一切の攻撃が通じぬ。桜花家に伝わる血統妖術……いや、大和の地に伝わる血統妖術の中でも、とりわけ防御性能に優れた妖術。それが……」


「それが『血統妖術・散り桜』……というわけか。なるほどな」


 俺は呟く。

 攻撃に対する絶対防御。

 いや、防御というよりは『受け流し』に近いか?

 単に強固な鎧なら、いつかは耐久力を超える攻撃で破壊される。

 だが、肉体そのものを桜の花びらに変えられれば、斬撃や打撃で突破するのは難しい。

 宙を舞う花びらは、捉えどころがないからだ。

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