メルビン大会の続きだ。
「続きまして、2回戦第4試合を始めます! ニム選手対、ジルガ選手!」
司会の人がそう叫ぶ。
「で、では、行ってきます」
「がんばってね! ニムちゃん」
「悔いのないように全力を出し尽くしてくれ」
モニカと俺がそう言う。
「わ、わかりました。がんばります!」
ニムがコロシアムのステージに上がる。
対戦相手のジルガと対峙する。
「両者構えて、……始め!」
試合が始まった。
「たとえ子どもだろうと、容赦はせん! いくぜ! 先手必勝!」
ジルガがそう言って、ニムに駆け寄る。
「ぬうう! マシンガンパンチぃ!」
「くっ。なんの!」
ジルガとニムが激しい攻防を繰り広げる。
ニムはこの1か月でかなり実力を付けた。
しかし、さすがにジルガには少し及ばないようだ。
苦戦している。
「ガハハ! 今のままでは俺には勝てんぞ! 嬢ちゃんの全力を見せてみろ!」
「わかりました。わたしの本気を見せてあげましょう」
ニムが闘気を解放する。
「剛拳流、動かざること山の如し」
ニムの奥の手だ。
耐久力が大幅に向上する。
「ガハハ! その技を待っていたぜ! 俺の全力と勝負だ!」
ジルガが腕と拳に闘気を集中させていく。
「いくぜ! ギガント……」
「負けません! はああ……! ”鉄心”」
ニムが闘気の出力をさらに上げて、防御を固める。
「ナックル!」
「…………!!!」
ジルガのパンチがニムにヒットする。
彼女の闘気を込めたガードにより、威力は大幅に減退しているはず。
「き、効きませんね」
ニムがそう言う。
やはり、あまり効いていなかったようだ。
……いや、あれはやせ我慢かもしれない。
口元が引きつっている気がする。
「ガハハ! 俺の奥義を耐えやがるとは。将来有望な嬢ちゃんだぜ!」
「そ、それほどでも……」
ジルガの言葉に、ニムが頬を緩める。
「だが! 今回は俺が勝たせてもらうぜ! 嬢ちゃんのその技には致命的な弱点がある!」
「じゃ、弱点……? そんなものはありません!」
ジルガの指摘に、ニムがそう反論する。
動かざること山の如しの弱点か。
何かあったかな?
ニムの闘気の出力はそれなりに大きい。
闘気術をレベル3まで上げているからな。
彼女に生半可な攻撃は通らない。
先ほどもジルガのギガントナックルを耐えきっていた。
「ガハハ! 今からそれを教えてやるぜ!」
ジルガがそう言う。
弱点とやらを教えてもらおう。
俺は彼を注意深く見る。
……………………。
…………。
……。
ん?
おかしいな。
ジルガが動く気配がない。
何か仕掛けるんじゃなかったのかよ。
「くっ。はあ、はあ……」
何もしていないニムの息が乱れてきた。
…………!
なるほど。
そういうことか。
「ガハハ! それが弱点だ! 常にその技を発動していれば、闘気の消費量が半端ない! 理想は相手の攻撃に合わせて都度発動することだろうが、さすがの嬢ちゃんでもそこまではまだ無理だろう!」
ジルガがそう言う。
確かに、ニムにはまだそこまでの力量はない。
単純な闘気の出力や身体能力は優れているものの、実戦経験が少ないからな。
「こ、こうなったら! 玉砕覚悟です! ……フィジカル・パンク!」
ニムがそう言って、ジルガに突進する。
まっすぐなタックルだ。
猪突猛進、猪突猛進!
「ガハハ! 破れかぶれか!」
ジルガがそう言って、ニムのタックルを受け止める。
「ぬ? うおっ!?」
ジルガが体勢を崩す。
ニムのタックルの威力が想定以上だったようだ。
彼女の身体能力はかなりのものだからな。
このままニムの流れに持ち込めるか?
と思ったが、さすがにその考えは甘かったようだ。
「……どりゃあああっ!」
ジルガが踏ん張り、ニムをステージ外に投げ飛ばす。
「ニム選手場外! カウントを取ります! 1……2……3……」
審判が場外カウントを始める。
10カウントがされればニムの負けとなる。
彼女は投げ飛ばされたとはいえ、ダメージはまだ軽微だ。
意識もはっきりとしており、立ち上がっている。
しかし。
「……8……9……10! 10カウント! ニム選手の場外負けです! 勝者ジルガ選手!」
ニムは試合を諦め、ステージ上には戻らなかった。
少し残念ではあるが、妥当な決断だ。
身体的なダメージは少ないとはいえ、闘気は大量に消耗している。
また、彼女は防御主体の戦法なので、こういう大会ルールとは相性が悪い。
今回のジルガのように待ちの戦法をとられると、有効な手がなくなってしまう。
まあ、彼女の本職は冒険者だし、土魔法もある。
今後の魔物狩りでの活躍を期待しよう。
1回戦を突破して、2回戦のジルガとも接戦だっただけでも十分だ。
彼女はまだ10歳と少しだしな。
「ガハハ! 俺の勝ちだぜ!」
ジルガがそう勝利宣言をする。
もう少し敗者に配慮してくれ。
ニムが少し暗い顔をしている。
まあ、ジルガは細かいことを気にしない性格だ。
悪気はないのだろうが。
ニムがトボトボと控室に戻ってくる。
「ま、負けてしまいました」
「ドンマイ! いい試合だったよ」
「よくがんばったね。ニムちゃん」
アイリスとモニカがニムをねぎらう。
「まあ俺も2回戦負けだしな。ニムは十分がんばったよ」
「そうですね! すごいと思います!」
俺とミティで、さらにニムを励ます。
「そ、そうでしょうか。えへへ……」
褒められて、ニムもまんざらではなさそうだ。
さて。
これで、2回戦はこれで全試合が終了した。
×Aブロック1番、タカシ。
×Aブロック2番、ミッシェル。
○Aブロック3番、アイリス。
×Aブロック4番、ババン。
×Bブロック1番、ミティ。
×Bブロック2番、レナウ。
○Bブロック3番、エドワード。
×Bブロック4番、ギムル。
○Cブロック1番、モニカ。
×Cブロック2番、ハルトマン。
×Cブロック3番、ギルバート。
×Cブロック4番、カルロス。
×Dブロック1番、ニム。
×Dブロック2番、ビリー。
○Dブロック3番、ジルガ。
×Dブロック4番、エルメア。
準決勝戦は、次の2試合となる。
アイリスvsエドワード。
モニカvsジルガ。
4人中、俺たちミリオンズから2人も残っている。
うれしい結果だ。
30分の休憩の後、3回戦が始まる予定である。
アイリスとモニカのさらなる奮戦に期待しよう。
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