時は少しだけ遡る。
タカシが人魚の里を出発した頃――
「おや……? 皆さん、ようやく島が見えてきましたよ」
「あれがヤマト連邦ってことでいいのかな?」
サリエとアイリスが話す。
彼女たちの視線の先には、大きな陸地があった。
大陸なのか島なのかは不透明だが、方向からするとヤマト連邦の可能性が高い。
「そうでござるな。間違いないでござろう」
蓮華が答える。
ヤマト連邦出身の彼女がそう言うなら、間違いないはずだ。
「ど、どうしましょうか? 共鳴水晶によると、タカシさんはまだ時間がかかるようですが……」
「到着を待ってもいいですけれど……。海上での待機も、安全とは言い難いですわね……」
ニムとリーゼロッテが言葉を交わす。
ヤマト連邦は鎖国国家だ。
蓮華や雪月花以外によっては未知の国であり、リーダーのタカシ不在のまま上陸するのはリスクがある。
しかし一方で、海上で待機するのも安全とは限らない。
海の魔物が襲撃してくる他、食料や水の問題もある。
「もしよろしければ……私が先行して様子を見てきましょうか?」
そう提案するレイン。
彼女は空間魔法の使い手だ。
上級の『ワープ』を駆使すれば、1人で上陸して様子を見てくることも可能だろう。
しかし――
「やめておいた方がいいと思うよ~」
「ピピッ! 単独での偵察はリスクが伴うと警告します」
花が首を振る。
ティーナも同意した。
「ヤマト連邦は鎖国国家だからね。私たちも詳しいわけではないけど、外からの侵入者には厳しいわよ」
「……うん。出国は『少し面倒』くらいだけど、入国は『とても厳しい』……。特殊な結界魔法の他、海岸沿いに侍や忍者が配置されているから……」
月と雪も、レインに対して警告した。
彼女たちもヤマト連邦の出身だ。
全ての事情に精通しているわけではないが、いくらかの情報は持っている。
「なら……みんなで行くしかないね!」
「なんだか妙な気配も感じるし……その方が安全だと思うよー」
ドラちゃんとゆーちゃんが言った。
彼女たちはそれぞれ、ファイアードラゴンと幽霊である。
2人とも特殊な存在であるためか、勘が鋭い。
「皆さんがそう言われるのであれば……わかりました」
レインがうなずいた。
そして彼女は、他のメンバーたちを見渡す。
「どうでしょう? 他の皆さんは……」
「そうですね。タカシ様を置いていくのは気が引けますが……前もって面倒事の芽を摘んでおくのも大事ですし……」
「たぶん大丈夫でしょ。タカシなんだし」
「ふふん。今のうちに内情を探っておきましょう」
「マリア、たくさん観光したいなっ!」
ミティ、モニカ、ユナ、マリアがそう言う。
他の者たちも異論はないようだ。
「行きますよ! ヤマト連邦へ!!」
ミリオンズサブリーダーのミティが宣言する。
こうして彼女たちは、タカシの到着を待つことなく……ヤマト連邦に上陸するため船を進ませていくのだった。
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