「……失礼いたします。『闇忍』三人衆が一人、黒羽(くろは)と申します」
「同じく、幽蓮(ゆうれん)です」
「水無月(みなづき)」
入ってきたのは、3人の女忍者だった。
いや、少女忍者と言った方が適切か?
黒い忍者装束を身に纏い、顔や手など肌が見える部分は全て布で隠している。
詳細な容貌は分からないが、無月よりは年下だろう。
「ずいぶんと若いな。闇忍は人材不足なのか?」
「……主にも一因はある。例の件で、心に傷を負った者が何人もいるからな」
「あー、あれか……」
俺が無月を撃破した際、彼女は自分の部下に始末されそうになっていた。
冷静になって考えれば、闇の組織として必要な行為だったのかもしれないが……。
その非道な行為に激怒した俺は、その場にいた闇忍を片っ端から撃破した。
自分で言うのも何だが、俺はかなり強い。
心的外傷を与えるのに十分すぎるほどに、圧倒的な実力差を見せつけてしまったのだろう。
「事情は理解した。だが、つまりはこの3人は半人前というだろう? 余り物の中から、有望な者を選べと?」
俺は無月に問う。
半人前を3人まとめて寄越されても、扱いに困るのだが……。
「確かに、そういった一面もある。だが、彼女たちが忍者として有望なのは確かだ。それに、若い少女の方が主の好みのはず」
「…………」
おいおい。
まるで、俺が片っ端から手を出す色情狂みたいじゃないか。
まぁ、オッサンよりは少女の方が部下に欲しいけどさ。
加護付与の件もあるし……。
おぼろげな記憶だが、若い異性の方が忠義度が上がりやすく、年上の同性の方が忠義度が上がりにくかったはずだ。
「加えて言えば、この三人は精神的に甘い面がある。従来の闇忍の長としては不適格だ。しかし、主の配下となった今ならばむしろ甘い方が都合がいいだろう。だから、この中から次代の長を選んでいただきたい」
「ふむ……」
俺は3人を見る。
彼らは無月の言葉を聞いても特に反応せず、ただ静かに控えている。
落ち着いているな。
これなら、今後の期待ができそうだ。
「分かったよ」
「おお、では……」
「だが、その前に。お前たちは桜花の新たなる藩主――高橋高志の配下として、忠誠を誓えるか? 謀反者たる俺の配下になるのだぞ」
俺は無月の言葉を遮り、3人の少女忍者に問う。
「は。我ら3名、藩主様に絶対なる忠誠を。闇忍の次なる長として誰を選定されようと、必ずお役に立ってみせましょう」
黒羽(くろは)が代表して答える。
他の2人――幽蓮(ゆうれん)と水無月(みなづき)も、特に異論はないように見受けられる。
……が、それは表面上のものだ。
「俺も舐められたものだな」
「は……? 主よ、いったい何を……。――っ!?」
俺の不穏当な物言いに、無月が驚いて声を上げかける。
しかし、そんな言葉で俺は止まらない。
「あぐっ!?」
俺は少女忍者の一人に、強烈な回し蹴りを喰らわせる。
少女の体は吹っ飛び、天守閣端の壁に叩きつけられたのだった。
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