「さぁ、言ってくれ。『この変態』と!!」
「ひいいぃい!」
「お、お許しを……っ」
俺はM字開脚の女中たちに力強く語りかける。
だが、彼女たちはひたすらに怯えたままだ。
「なぜ言ってくれないのだ? あの時は言ってくれたではないか」
俺は首を傾げる。
以前は言ってくれたのに、今はなぜか拒否される。
彼女たちの態度が理解できない。
「そ、そんな……恐れ多い……」
「あ、ああ……っ」
女中たちはブルブルと震えている。
ふんどしをさらけ出しながら震える姿は、なかなかにシュールだ。
話が進まないし、今日のところは引き下がってもらうか?
いや、まだだ。
若い少女から『変態』と罵倒される……。
それには特殊な快感がある。
もう一度味わうため、ここで引き下がるわけにはいかない。
「『変態』と発言してくれた者には、特別な褒美を与えよう。どうだ?」
「ひぃっ!?」
「そう言えば、そのときの『お礼』もまだだったな。あの感情は、今もしっかりと覚えているぞ。ちゃんと報いてやるからな」
「「ひいいぃい!!」」
女中たちがガクガクと震えだす。
うーん……。
どうしたこんな反応をするんだ?
よく分からない。
チートスキル『加護付与』で各人の忠義度は確認できる。
その忠義度を確認しつつ適切に接していけば、大抵の者とは友好関係を築けるのだが……。
あまりにも理解不能な反応を示す者が相手の場合、そういった対応が難しいこともある。
今の女中たちが、まさにそれだ。
俺はただ『この変態』と罵ってほしいだけなのに……。
「あの……高志様」
「……ん?」
俺が思考を巡らせていると、紅葉が恐る恐るといった感じで声をかけてきた。
「彼女たちは、その……高志様を恐れているのでは?」
「俺を? なぜだ?」
「高志様は、今や藩主となっておられます。そんな相手に、かつて『変態』と罵倒した件を蒸し返されたら……。萎縮してしまうのも無理はありません」
「ふむ……」
そういうものだろうか?
……いや、そういうものか。
落ち着いて考えれば、当然のことかもしれない。
俺にとって『変態呼ばわり』はご褒美だが、普通は違う。
むしろ逆だ。
どうしてこんな簡単なことに気付かなったのか。
(ここ最近、思考力や理解力が低下している気がするな……)
いったいいつからだ?
闇を受け入れ、桜花城攻めを決意したあの日からだろうか?
単純に考えれば、闇を受け入れたことが原因となるが……。
そんなはずはない。
闇は素晴らしいものだ。
今さら、闇を祓ってこの爽快感を手放すなんてあり得ない。
それに、闇を受け入れたからこそ思いついた秘策もある。
以前の甘い俺では、おそらく考えつけなかった作戦だ。
あの作戦を用いれば、景春を屈服させることができるはず。
闇には闇の素晴らしさがある。
……ま、それはいい。
とりあえず今は、目の前の女中たちの件だな。
適切に対処してやろう。
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