「おらおらぁ!!」
流華が蒼天に攻撃を仕掛ける。
麻痺毒を塗った短剣での攻撃は、効かなかった。
何らかの事情で毒耐性を持っている上、斬撃に対する耐性も備えているらしい。
だが、打撃ならどうか?
「おらぁ!!」
流華が蒼天を殴りつける。
しかし……。
「ふぁあ……。効かねぇな。お前、桜花七侍を舐めちゃいねぇか? 平民のガキなんざに負けるかっての」
蒼天は眠そうな目で流華を見ている。
そのダメージはゼロに思える。
「ちっ……! なら、これはどうだ!?」
流華が蒼天の背後から、彼の首元にしがみつく。
そして、そのまま絞め落とそうとした。
「毒、刺突、打撃……。どれも効かないなら、絞め技はどうだ!?」
「おっと……止めておけ、ガキ。その技は俺に効く」
「……!!」
「止めてくれ」
蒼天が口にする。
だが、流華は無視した。
全力で蒼天の首を絞め続ける。
「へへっ、正直な奴だな! このまま絞め落としてやるぜ!!」
「ああ、意識が遠くなってきた……。このまま二度寝するのもいいが……。……ふぅ、仕方ねぇな」
蒼天が嘆息する。
そして、彼は流華の腹部に肘打ちを喰らわした。
「がっ……!?」
流華は蒼天から手を放し、その場にうずくまる。
腹部を手で押さえ、苦しそうに悶えた。
「げほっ! げほっ!!」
「痛いか? ガキが大人に逆らうからこうなる。女どもの前で良いところを見せようと、粋がった結果がこれだ」
「な、なんだと……!? 別に良いところを見せようとしてなんか――」
「俺は面倒事が嫌いなんだ。降参するなら、悪いようにはしない。その激痛も消えるぜ?」
「い、痛ぇわけあるか……! オレはまだまだ戦える!!!」
「そうかい……。なら、もう2・3発くらっとけや」
蒼天が流華の腹部を蹴り飛ばす。
彼は桜花七侍の一人だ。
新任ということもあり、歴代七侍のそれぞれの全盛期には及ばない。
だが、その実力は本物だ。
あらゆる攻撃に対する高い耐性を持つ上、その他の分野においても平均的な侍以上の能力を持っている。
得意分野ではない肉弾戦においても、まだ若い流華に遅れを取ることはない。
「ぐはっ!!」
流華が吹き飛び、武神流の道場の壁に叩きつけられる。
そのまま意識を失ったようだ。
「ふぅ……。嫌な仕事だったぜ。ま、女のガキどもを相手にするよりはマシだが……」
蒼天は流華が気絶したのを確認し、大きくため息をつく。
そして、他の戦闘に目を向ける。
そのときだった。
「【爆裂昇脚】!!」
「お、おごぉおおおお!?」
蒼天が悲鳴を上げる。
股間部を押さえ、その場に膝をついた。
「お……お前……」
蒼天が震えながら視線を向けた先にいるのは、流華だ。
先ほどは気絶したフリをして、蒼天の隙を伺っていたらしい。
「お、男の急所を躊躇いなく蹴り上げやがって……。ひ、人の心とかないのか? お前も男なら、この痛みは分かるはず……」
「知るか!!」
「ぐふぉっ!?」
流華の追撃を受け、蒼天はそのまま地面に倒れ伏す。
どういう事情か、流華は男性の股間部への打撃にさほどの躊躇いがないらしい。
「姉御に教えてもらった技が役に立ったぜ。兄貴は渋い顔をしていたから、できれば使いたくなかったけど……。仕方ねぇよな」
流華は自分に言い聞かせるように呟く。
気絶したフリをする作戦や股間を蹴り上げる技は、少なからず無月の影響を受けているようだ。
こうして、流華は桜花七侍の一角を打ち破ったのだった。
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