「うわあああぁっ! ぐおおおおぉっ!!」
俺は声を張り上げるが、両手両足を拘束されているので何もできない。
「タカシちゃん。いくら叫んでも無駄だよ。ここは防音対策バッチリだからさぁ」
「さぁ、続きをどうぞ」
「む、無理だ! これ以上は――ぬおっ!?」
俺の言葉の途中で、イリーナの手が伸びて俺の乳首をつまんだ。
「ふふっ。男なのにここが弱いんだねぇ」
「や、やめろ! 触るなっ!!」
「はいはーい。それじゃあ、次は私ですね。えいっ!」
「ぐあああぁっ!?」
レティシアまで加わり、左右同時に責められる。
俺は悲鳴をあげて身を捩るが、二人を振り払うことはできない。
「うへぇ。ちょっと摘んだだけでこんなになるなんて、タカシちゃんってば敏感だね」
「男のくせに情けないですね。ほれほれほれ……」
「ぐおおおぉぉぉっ!!」
二人の指が俺の乳首を刺激する。
そのたびに、俺は悲鳴を上げることしかできない。
体も全力で抵抗しているのだが、両手両足と首が鎖によって拘束されているため、まともに動けないのだ。
しかも、ご丁寧に『魔封じの枷』まであるからな。
これでは、いくら膨大な魔力を持つ俺でも脱出は厳しい。
(ミティが好みそうなシチュエーションだな……)
俺はそんなことをぼんやりと思ってしまう。
彼女はミリオンズで一番力が強い。
もちろん俺よりも上だ。
初体験のときもそうだったが、彼女に力づくで迫られると抵抗は難しい。
(いや、厳密に言えば、ミティの剛腕に対しては魔法で抵抗はできるんだよな。それに比べれば、今の方がより厳しい状況か。魔力が抑え込まれてしまっているのだから)
魔力は、基本的には魔法の行使に影響するものだ。
しかし、俺ぐらいの上級者になれば、身体能力の向上に転嫁することもできる。
魔力が抑え込まれてしまうと、身体能力も下がってしまうことになる。
「くっ! ぬおおおっ!!!」
力を入れてみるが、やはり鎖が引き千切れたりする様子はない。
「ふふっ。だから無駄だって」
「いくらハイブリッジ男爵でも、『魔封じの枷』があってはどうにもならないでしょう」
イリーナとレティシアがそう言う。
「うおおおぉっ!!!」
俺は叫びながら、もう一度全力で抵抗する。
本当に全力を出しても拘束が引き千切れないのかどうか。
それを確認しておかないと、安心して先に進めないからな。
「やれやれ。タカシちゃんは諦めが悪いなぁ。だから無駄――」
バキッ!!!
「――え?」
「はい?」
俺が全身全霊の力を込めた瞬間、何かが壊れるような音がした。
「えええええええええっ!?」
「こ、これはいったい……」
イリーナとレティシアが驚きの声をあげる。
彼女たちが驚くのも無理はなかった。
俺の右手を拘束していた鎖が、引き千切れてしまっていたからだ。
「そ、そんな……。まさか、こんなことが……」
「し、信じられません……。『魔封じの枷』を装着された状態で、これほどのパワーを出せる人がいるなんて……」
二人が呆然とした表情で言う。
「ほらな。俺の心配した通りだ。全力を出せば解けてしまうような拘束は、拘束じゃないんだ」
「うわっ! タカシちゃんのドヤ顔ウザッ!」
「くぅ……。やはりハイブリッジ男爵は規格外の存在ですね……」
イリーナとレティシアが悔しげに言う。
「ほら、何を突っ立っている?」
「へ?」
「俺の右手をもう一度拘束してみろ。今度は千切れないような鎖でな」
「あ、はい……」
レティシアが俺の指示通りに動き出す。
拘束プレイには、大きく2種類ある。
『ガチで身動きが取れない拘束』と『動こうとすれば動けるなんちゃって拘束』だ。
俺とミティのお楽しみにおいて、俺はミティの剛腕によってまともに抵抗はできない。
アグレッシブな彼女に良いようにされてしまう。
だが、隙を突けば何とかならないこともないし、魔法を使えばどうとでもなる。
そういう意味で、俺とミティのお楽しみは『動こうとすれば動けるなんちゃって拘束』のプレイに類似していると言えなくもない。
そのような状況においては、ガチの抵抗をしないように留意する必要がある。
ガチの抵抗をしない範囲で無難に抵抗して、緊迫感を演出するのがコツだ。
一方で、『ガチで身動きが取れない拘束』をして楽しみのももちろんアリだと思う。
こちらの場合、全力で抵抗しても本当にどうにもならないので、緊迫感が段違いとなる。
もちろん、責め手を受け手に信頼感は必要なので、お手軽には楽しめないのが難点なのだが。
「こちらの鎖でよろしいでしょうか?」
レティシアが新しく用意した鎖は、元々のものより一回り太いものだった。
これなら、俺が力を入れても千切れることはなさそうだ。
「いいだろう。それで拘束してくれ。――ああ、それと一つ注意事項があるのだが……」
「は、はい」
「責めに少し遠慮が見えていたぞ。俺は被疑者で、レティシアは尋問官だ。だから、もう少し強めでもいいと思う」
「えっと……、具体的にはどうすれば?」
「もっと強くつねったり、引っ張ってくれて構わない。あるいは、鞭で叩いてくれてもいいぞ」
「いや、それはさすがに……」
「遠慮することはない。俺が許可しているのだからな。あと、視線ももっと冷たくしてくれ」
「……分かりました。では――」
鎖による再拘束が終わり、プレイの再開準備が整った。
レティシアが顔を引き締める。
「……あのさぁ。タカシちゃん」
「なんだ?」
「このアタシの尋問をプレイ扱いしてない?」
ギクッ!
俺は一瞬、動揺してしまう。
「そ、そんなことは無いぞ」
「そうかな? なんか変なこと考えてなかった?」
「気のせいだ」
「ふーん」
イリーナがジト目で見てくる。
「まあいいか。じゃあ、尋問を再開するよ!」
「はいっ! イリーナ大隊長!」
「ぐおおおおぉっ! ヤメテクレー!!!」
こうして、地獄のような尋問の時間は過ぎていったのだった。
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