【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1459話 極楽浄土はここにある!

公開日時: 2024年7月29日(月) 12:58
文字数:1,243

「景春様!」


「宴の準備はできております」


「景春様、どうぞこちらに!」


 景春は桜花城の一室で、女たちにかしずかれていた。

 彼は上機嫌な様子で畳の上を歩いていく。


「くくく……。苦しゅうない、苦しゅうないぞ!」


 景春は宴の会場である大広間に足を踏み入れる。

 そこには、大勢の侍と女たちがいた。

 女たちは、いずれも美女ばかりだ。


「景春様!」


「お慕い申して……」


「わらわを可愛がってくださいませ」


 そんな声が、景春の耳に届く。

 彼はニヤリと口元を歪ませつつも、表情はすまし顔でこう言った。


「皆の者、大義であるぞ! 我が家臣として、永遠の忠誠を誓うがいい! さすれば、この通り酒も女も思うがままだぞ!!」


 景春の言葉に、侍たちは色めき立つ。

 代替わりによって急激な方針転換をした景春に対して、表立って不満を述べる者はいなかった。

 そういった者はすでに排除されていたからだ。


 当初から景春に付き従っていた側近。

 代替わり直後は桜花藩の未来を憂いていたが、目先の利益を前に恭順した者。

 あるいは、いまだに不満を持ちつつも、景春を恐れて大人しく従っている者。

 そういった者が、今の桜花藩の中枢を担っているのだ。


 そして、宴の時間が始まる。

 料理が運ばれ、酒が注がれていった。


「今夜の献立は何だ?」


「桜花の名物料理、『蛸炎珠(たこえんじゅ)』でございます」


「蛸炎珠だと? 今日は蛸の気分ではない!」


「はっ! すぐに廃棄します!」


 料理番が慌てて頭を下げる。

 蛸炎珠――要するにタコ焼きは、桜花藩の郷土料理である。

 中に蛸と紅しょうがを入れることで、絶妙な味わいを生むのだ。

 だが、今日の景春はタコ焼きの気分ではなかった。


「他には?」


「はっ! 採れたての野菜を……」


「野菜は嫌いだ! それより、肉はないのか?」


「化け猪の肉がございます! ご賞味ください!」


「ふむ、いいだろう。持って参れ!!」


 景春が鷹揚に頷く。

 化け猪は、いわゆる魔物の一種だ。

 凶暴で、人間を見れば襲いかかってくる危険な存在である。

 山村などにおいては恐怖の対象として、また農作物を荒らす害獣としても恐れられている。

 しかし、『藩』という集団から見れば、ただの肉に過ぎない。


「飲み物は?」


「はっ! 四神地方より取り寄せた、朱雀酒がございます」


「酒は飲めんと言っているだろうが! 果汁水を持って参れ!!」


「は、はっ! それでは、重郷地方の名産である『重水(じゅうすい)』を……」


「うむ、それでよい。余は檸檬重水が好きだ。持って参れ!!」


 景春が頷く。

 すると、すぐに女中が駆けてきて、レモンの果汁を絞った重水を彼に差し出した。


「ふはははは! 余は幸せだ!! この世の春を、今この瞬間に生きている!!!」


 景春の高笑いが、大広間に響く。

 そして、彼は上機嫌のまま続けた。


「皆も楽しむがいい! ここは大和連邦の中心、桜花城! 極楽浄土はここにある! 大いに飲み、大いに歌え! そして、この桜花景春を崇めるがいい!!」


「うおおおおっ!! 万歳!!」


「桜花景春様、万歳!!」


 大広間に歓声が上がる。

 景春は上機嫌で、重水をあおったのだった――。

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