俺はフレンダと相思相愛の仲になった。
こうなれば、やることは一つだ。
経験豊富そうなフレンダなら、気軽に応じてくれるだろう。
俺はイソイソと服を脱ぐ。
「ふぇぇえええ!! な、なんでいきなり脱いでるの!?」
「フレンダ。俺の体を見てみろ」
「はい?」
「俺は今、裸だ」
「はぁ?」
「さっきのキスには、どんな効果があったんだ?」
「み、魅了の効果だよ。フレンダちゃんの得意な魅了魔法の一種で、対象を一定期間言いなりにさせるの」
やはりそうだったか。
ちょっと変な感覚があったんだ。
「見ろ。フレンダの魅了のせいで、俺のマグナムがこんなことになってしまっているじゃないか」
「ひ、ひゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
フレンダが、俺の股間を凝視しながら悲鳴を上げる。
「なんだ? 恥ずかしがっているのか? 男を手玉に取ってきたと噂されるBランク冒険者のくせに、初心なところを見せるなよ。可愛い奴め」
「こ、こういうことは、したことないし、させたことない……」
「なに? そうだったのか?」
意外だな。
魅了魔法で言いなりにさせた男たちで遊んだりはしてこなかったらしい。
あくまで、戦闘時に自分に協力させる程度だったのだろうか。
「う、うん……。だからね? こういうことはもっとお互いを知ってから……」
「いや、善は急げと言うだろう? 実戦を通して、お互いのことを深く知っていくのも悪くはないと思うぞ」
「だ、ダメだよぉ……。と、止まって!!」
フレンダの目が怪しく光る。
それと同時に、彼女の瞳に吸い込まれるような不思議な感覚を覚えた。
これは、フレンダの魔力による干渉か。
体の動きが阻害されている感覚がある。
「むぅ、これが魅了か……」
「ごめんなさい。でも、いきなりは……」
「まぁ、これぐらいの魔力干渉は、俺にとって大したことはない。気にするな」
「え?」
「さて、フレンダ。続きを始めようか」
「ぎゃー! ふ、フレンダちゃんの魅了が効かない!?」
フレンダが本気で驚いている。
どうやら、本当に珍しいケースのようだ。
正確に言えば効いていないんじゃなくて、効きが悪いだけだがな。
俺は魔力量が多い。
そのため、他者から干渉されにくいのだ。
「ふふふ、焦るお前も可愛いぞ……」
「あっ……だ、ダメぇ……」
フレンダを抱き寄せながら押し倒す。
彼女は甘い声を漏らしていた。
ダメとは言うが、本気で嫌がっている様子ではない。
本気で抵抗しているなら、忠義度ももっと下がっているはずだ。
これはアレだな。
魅了魔法によって男を言いなりにさせてきた彼女は、潜在的に男から強引に迫られたい欲望でもあったんじゃないだろうか?
「脱がせていくぞ……」
「あっ……ちょっとぉ……。二人共、見ないでぇ……」
二人?
この場に、俺とフレンダ以外の存在は――
「うわぁ……フレンダ姉さんがあんなことに……」
「す、すごい……私の前の彼氏よりも、ずっと大きい……」
ああ、彼女たちがいたか。
フレンダの取り巻きたちだ。
すっかり存在を忘れていた。
「ふふふ……。いいじゃないか。フレンダの可愛いところを見せつけてやろうぜ」
Bランクのフレンダと比べると、取り巻きたちは格下だ。
トミーやアランとの小競り合い、そして先ほどのリトルベア戦を見た感じでは、Cランクといったところか。
だが、そんな彼女たちの前で、フレンダは俺に組み敷かれている。
おそらく、普段のフレンダはパーティリーダーとして毅然と振る舞っていたに違いない。
余所のパーティに対してはもちろんのこと、取り巻きたちにすら弱い部分を見せないようにしていたのだろう。
それが今は、まるで少女のようにあられもない姿を晒している。
そのギャップに、俺の興奮は高まるばかりだ。
「ほら、フレンダ……。キスしよう」
「んっ……」
唇を重ねる。
フレンダは俺の首の後ろに手を回し、積極的に俺を求めてくれた。
「ふふ、フレンダ……。俺のことが好きなんだろ?」
「好き……? わかんないよぉ。こんなの初めて……」
フレンダの瞳が完全にハートマークになっている。
魅了魔法が効かない男が珍しいとは言っても、さすがに急すぎないか?
いや、これは――
「ほら、もう一度キスしよう」
「んっ……」
フレンダから俺に魔力が流れ込んでくるのを感じる。
そして、俺の膨大な魔力はそれを一度は受け入れたかと思うと、反撃するようにすぐさま追い返す。
これは半ばは意識的にやっていることだが、半ばは無意識にやっていることだ。
「俺に任せろ。全てを受け入れてくれ」
「うん……。フレンダちゃんは、タカシちゃんに身を任せます……」
俺は魅了魔法を使えない。
だが、『フレンダからの魅了魔法を反射させる』という形で擬似的に魅了魔法を再現できているらしい。
フレンダは俺にメロメロだ。
(これは……いただいてしまってもいいのか?)
俺は男だ。
据え膳食わぬは男の恥という言葉もある。
だが、今のフレンダは正常な判断能力を失ってしまっている。
元は彼女の魅了魔法とはいえ、それを反射して魅了状態にしてしまっているのは俺だ。
ここで手を出すのは、紳士としていかがなものだろうか?
現代日本でも、例えば泥酔状態にある女性に手を出すと準強姦罪が適応されると聞いたことがある。
誇り高きハイブリッジ男爵家の当主として、そのような行為は許されないだろう。
「タカシちゃん……来て……?」
「はい!」
理性の敗北であった。
こうして俺は、欲望のままに行動することにしたのだった。
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