王都にある高級宿。
俺の部屋にて、メイドのレインとくつろいでいる。
思えば、彼女のことはやや蔑ろにしてしまっていた。
この機会に、望みがあるなら叶えてあげようという話をした。
レインはちょっと考える素振りを見せると、遠慮がちに口を開く。
「その、お、お館様さえよろしければ、またご寵愛を賜りたいと思っております」
「寵愛? つまり……」
「は、はい。こういうことです……」
レインが顔を赤くしながら、スカートを捲り上げる。
すると、彼女の綺麗な下着が露わになった。
清楚な印象を受ける白い下着だ。
「おお……。これは……」
俺は感嘆の溜息をつく。
「あの、どうでしょうか?」
「凄く可愛いぞ」
「あ、ありがとうございます」
レインはスカートを戻しつつ、恥ずかしそうにうつむいた。
そして、チラリと俺の様子を窺うように視線を上げる。
「レインが望むなら、俺に否やはない」
美少女からの誘いを拒むことなどあり得ない。
……ん?
待てよ?
今、ミティやアイリスたちはいろいろと活動してくれているんだよな。
それは彼女たち自身のためでもあるが、ハイブリッジ騎士爵家の名声を高めるためでもあるはずだ。
妻に働かせておきながら、俺はメイドと浮気をするのか?
我ながら、最低のクズ男だな……。
いやしかし、レインにここまで言わせておいて断るのもそれはそれで……。
レインはいずれ通常の加護の対象者になるだろうし、忠義度が下がってしまうリスクは避けたい。
「お館様。あ、あの……」
「ん?」
「加えて1つ、厚かましいお願いをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、何でも言ってくれ」
乗りかかった船だ。
レインの望みは何でも叶えて、通常の加護を狙っていこう。
「今から、私がわざとお茶をお館様にこぼします」
「ああ。……ん?」
「お館様はそれに激怒し、私を折檻してください。具体的には、スカートをめくり上げてお尻を叩いていただきたく……。後は流れでお願いします」
「お、おう……。わかった」
レインの被虐趣味は相変わらずだな……。
どMと言ってもいい。
悪い男に引っ掛からないか心配だ。
いや、俺こそがその悪い男なのか。
「じゃあ、来てくれ」
「はい!」
レインは嬉々として返事をする。
そして一度部屋の隅に下がったかと思うと、新しいお茶を持って戻ってきた。
「あっ!?」
レインが何もないところに足を引っ掛ける。
もちろんそういうフリだ。
足さばきはしっかりしているし、宙に投げ出されたコップの行方も正確に俺を捉えている。
そして、その中身が俺の頭の上に降り注いだ。
「あっちゃあああぁ!!!」
俺は熱湯を浴びて叫ぶ。
演技ではなくてマジで熱い。
別に、淹れたてホヤホヤである必要はないだろ!
「も、申し訳ありません! お館様、大丈夫ですか?」
彼女は慌てる演技をしながら、俺の方に駆け寄ってくる。
「レイン! 貴様ぁ! 許さんぞぉ!」
「ひぃっ! お、お館様! どうかお慈悲を!」
「問答無用だ!」
俺はレインの胸ぐらを掴む。
そして乱暴にテーブルの方に突き飛ばし、尻をこちらに突き出させたポーズを取らせる。
スカートをめくると、白い下着が再び姿を現した。
「ああっ! お館様、いけません。そんなことをしては……」
「黙れぇ! このポンコツメイドが!」
俺は力一杯レインの尻を叩き始める。
……というわけではない。
もちろん加減はする。
パァン、バシィッと小気味良い音が部屋に響く。
「ああっ!! お館様。申し訳ありませんでした! お許しを、お許しを……!」
レインは謝罪の言葉を口にする。
目には涙。
感情が高ぶって演技もノッてきているな。
だが、その声色には隠しきれない悦びが含まれていた。
「謝るだけでは済まんぞ! こうしてくれるわぁ!!」
俺は手を止めない。
ただひたすらにレインの尻を打ち続ける。
すると、彼女の股間からはポタリポタリと液体が垂れてきた。
「ああん……。お館様、お止めください……」
「何を言っているんだお前は! こんなに濡らしおってからに!」
「だって、お館様がとても激しく叩くからぁ……」
「叩かれて悦ぶ奴があるか! これではご褒美ではないか!」
いやまあ、そもそもが彼女を労うためにやっていることなので、間違いではないのだが。
プレイが特殊過ぎて頭が混乱する。
「あううぅ……。んんんっ!!」
レインがビクンと身体を震わせる。
彼女はテーブルに上半身を預け、ぐったりとした様子を見せた。
「ふん。まだまだ仕置きが足りぬようだな」
俺はレインの下着をずり下ろす。
そして、さらに次の段階に進もうとした。
その時だった。
バタン!
俺の部屋の扉が勢いよく開かれ、1人の女性が入ってきた。
「失礼する! ハイブリッジ、叙爵式の日程が決まったぞ! 1週間後の……」
その女性……ベアトリクス第三王女は、そこまで言ったところで俺とレインの状況に気づいたようだ。
「……は?」
彼女が固まった。
俺とレインも固まる。
沈黙が流れる。
やがて、ベアトリクスが口を開いた。
「き、貴様ぁ! 8人もの妻がいながら浮気だと!? しかも、その少女はまだ若いメイドではないか!」
「ベアトリクス。これは……」
「むっ!? 少女の尻には手で打ち付けたような赤い跡……。目には涙……。床に散乱したティーセット……。まさか貴様、些細な粗相への処罰にかこつけてそのような行為をしたのか!?」
「ち、違うんだ……」
動かぬ証拠が多々ある。
これはマズイぞ……。
「何が違うのだ! このクズが!!」
「うう……」
「言い逃れできると思うのか? 覚悟するがいい!」
「待ってくれ! これには深いわけがあって……」
「問答無用! この我ベアトリクス=サザリアナ=ルムガンドの名において、タカシ=ハイブリッジ騎士爵、貴様に決闘を申し込む!!!」
ベアトリクスがそう叫ぶ。
こうして俺は、誤解によりベアトリクスから決闘を申し込まれてしまったのであった。
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