【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

490話 開墾作業

公開日時: 2021年11月25日(木) 12:27
文字数:2,634

 みんなでラーグの街の外にまでやってきた。

 柵に囲まれた畑が点在しているエリアだ。

 水利、魔力、魔物、交通などの関係で、広範囲全てを開墾するわけにはいかないと聞いている。

 しかし、それでも若干の開発の余地は残っている。

 今回開拓するのはその残りの部分だ。


「ここら辺でいいだろう」


 俺はそう言って、目の前の地面を指さす。

 周囲の畑から程よく離れている。

 地下を走る魔力の流れも、なんとなくいい感じだと思う。


「は、はい。いいと思います」


 ニムがそう同意する。


「わかりました。では、さっそく俺たちで耕していきます」


 ニルスがそう意気込む。


「うむ。よろしく頼む」


「はいっ」


「はい」


「…………(こくっ)」


 ニルス、ハンナ、ロロが鍬を持って作業を始めようとする。

 しかし、それを制するようにニムが口を開いた。


「あ、あの。ちょっといいですか?」


「ん? どうした?」


「わ、わたしの土魔法で、まずは大きくならしておくのがいいと思います。それ以降の作業が楽になるでしょう」


「ふむ……。確かにな。では、頼めるか?」


「は、はい。いきますね」


 俺たちは、ニムの邪魔にならないように後方へ退避する。

 彼女が土魔法の詠唱を進めていく。


「……母なる大地の精霊よ。我が求むるように地を隆起させよ。グラウンド・アップ!」


 ニムが魔法を発動させる。

 彼女の前方20メートルくらいの範囲が少しだけ隆起した。


「ほう。これはすごいな」


 俺は思わず声を出してしまう。

 一見地味だが、実はかなりの力量が必要な魔法だと思う。

 これほどの範囲なら土の質量だけでもかなりのものだ。

 消費するMPも多い。


 しかし一方で、ただ力任せにぶっ放せばいいというものでもない。

 今後畑として使うために、適度に隆起させて耕していく必要があるのだ。

 豊富なMPと高い出力に加えて、繊細な魔力制御が合わさった高度な魔法である。


「え、えっと。まだ、こんなものじゃないですよ? これからが本番です」


「そうなのか?」


「はい。もう少し派手にやりますね」


「…………」


 俺は無言で先を促す。


「……従順なる土の兵士よ。我が求めに生まれ出よ。クリエイト・ゴーレム!」


 ニムがそう唱えると、今度は離れたところの地面が盛り上がり巨大なゴーレムが生成された。

 高さは5メートルほどだろうか。

 ゾルフ砦の近郊やアヴァロン迷宮で戦ったゴーレムよりも大きい。

 彼女は強敵との戦いでゴーレムをよく生成しているが、徐々にサイズ感や操作性能が上がっているように見受けられる。

 俺のステータス操作による恩恵もあるだろうし、彼女自身の努力による上達も関係しているはずだ。


「おおぉ……」


「……」


 ニルスは呆気に取られている。

 ハンナに至っては無言で目を見開いている。


「ほ、本気で長時間詠唱すればもっと大きくもできますが……。耕すだけなら、これでも問題ないでしょう」


「うむ。そうだな」


 俺はそう返事をする。


「……」


「…………」


「ひいぃ……」


 パリンとその妻は、ハンナと同じように呆然としている。

 リンは怯えた様子だ。

 まあ、いきなりあれを見たら、そうなるのも仕方ないか。


「では、始めてくれ」


「わ、わかりました」


 ニムがゴーレムを操作し、作業を進める。

 ドゴーン!

 ザクザクッ!

 ドゴオーン!!

 ザクザクッ!!

 ゴーレムが大きな腕を力強く振るい、隆起していた土をさらにいい感じに耕していく。

 ニムの魔力制御はさすがだ。

 特にミスもなく作業をこなしていく。


「よし、こんなものでしょう」


 ニムがそう言う。

 彼女の言った通り、魔法で大雑把に耕せるのはこれぐらいが限度だろう。


「うむ。ありがとう。もう十分だ」


「は、はい」


 ニムが魔法を解除した。

 すると、すぐにゴーレムの姿が崩れて土に還った。


「さて、次は人手で耕して仕上げていかないとな」


「…………」


「よ、ようやく俺たちの出番ですね。がんばりますよ」


 ハンナは無言のままだが、ニルスが気を取り直してそう言う。


「ああ、頼むぞ」


 俺、ニム、ニルス、ロロが鍬を持ち、土を耕し始める。

 少し遅れて、ハンナも合流した。

 あとは……。


「…………はっ! いかん。あまりの光景に、呆けてしまっていた」


「そ、そうね。とんでもないものを見てしまったわ。さすが、貴族様の重鎮はとんでもないわね……」


 パリンとその妻がそう言う。


「……あ、あうぅ……」


 リンは腰を抜かしている。


「こうしちゃおれん。俺たちの畑になるんだ。任せっきりにするわけにはいかない」


 パリンがそう言って鍬を持ち、耕し始める。

 さらに、その妻とリンも合流した。

 こうして、ラーグの街における彼らの生活基盤を作るための開墾が始まったのだった。


 体力自慢のニムと、次点で高い身体能力を持つ俺が中心となって作業を進めていく。

 ニルス、ハンナ、パリンとその妻もがんばっている。

 リンは……幼いながらに奮闘している。

 サリエは傍らで俺たちを見守りつつ、時おりエリアヒールで体力を回復してくれている。


「畑の雰囲気が出てきたな」


「そ、そうですね。ついでですし、周囲を塀で囲んでおきましょう」


「ああ。頼んでいいのか?」


「も、もちろんです。わたしの土魔法なら簡単なことです」


 ニムがそう言って、塀の作成に取り掛かる。

 その他の者は引き続き畑を耕していく。

 そして、ついに――


「こ、これで終わりですっ!」


 ニムが声を上げる。

 簡易的な塀の作成、そして畑が完成したのだ。


「いい畑ができましたね。皆さん、お疲れ様でした」


 サリエがそう言う。


「お疲れ様でした」


「終わったー」


 ニルスとハンナから声が上がる。


「…………(ふう)」


「ふ~」


 ロロと俺は一息ついてその場に座り込む。

 かなり広い面積が耕せたと思う。


「パリン。この広さで足りるか?」


「じゅ、十分でございます。ありがとうございます」


「本当に、何から何まで……。お礼の言葉もありませんわ」


 パリンとその妻が頭を下げてそう言う。


「まぁ、気にするな。これから領民となる者に対して、適切に取り計らうのは領主としての務めだ。しかも、お前たちはリンの家族だしな」


「ええ。リンはまだ小さく気弱なところがありますが、がんばり屋さんです。きっと、ハイブリッジ騎士爵様に貢献することができるでしょう」


「リン。今後も精一杯お仕えするのよ。困ったことがあったら、いつでもお母さんたちに相談するのよ。何でも手伝うからね」


 パリンとその妻がそう言う。


「うん。わたし、がんばるよ」


 リンがそう意気込む。

 やや気弱な彼女だが、さすがに両親と接するときは普通の態度だな。

 いつか俺と接する態度もこのような普通のものになる日が来るだろうか。

 期待したいところだ。

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