【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1582話 ワニ型の妖獣【マリアside】

公開日時: 2024年11月29日(金) 12:27
文字数:1,153

「あそこだ。あの中州に、例の子がいるんだ」


「ほう……。確かに、只者ではなさそうじゃの……」


 若者に案内され、老人は川の中州へと辿り着く。

 そこには……


「ふぅ。いっぱい食べた……。ちょっと眠いかもー……」


 一人の少女が寝転がっていた。

 年齢は12歳前後だろうか。

 その少女は、川の中州でのんびりと昼寝をしていたのだ。


「な、なんだありゃ……。獣人……なのか?」


「でも、耳とか尻尾はないぞ」


「馬鹿、爺さんの話をちゃんと聞いてなかったのか? 鳥系の獣人ってことだろ」


「どれどれ……。まずは儂が行こう」


 周囲の村人たちが困惑する中、老人が動いた。

 彼は川岸から浅瀬を通り、中州へ向かっていく。

 そのときだった。


「っ! 爺さん、危ねぇ!!」


「むっ!?」


 バシャッ!

 川の深い場所から、突然何かが飛び出してきたのだ。

 それは……鋭い歯を持つワニ型の妖獣だった。

 老人が咄嗟に回避したため、その牙は空を切る。


「あ、危ないところじゃった」


「爺さん、大丈夫か!?」


「大丈夫じゃ! お主たちひよっ子は、そこを動くでないぞ!」


「だ、だがよ……!」


 若者が不安そうな声をあげる。

 彼は老人のことを侮っているわけではない。

 昔は強かったという彼の武勇伝を何度も聞いている。

 かつて『不死武士隊』に在籍していた実力は、伊達ではない。

 しかし、それはあくまで『現役時代』の話である。


「はぁっ! どりゃあっ! ……ぐむっ!? ひ、膝の古傷が……!」


 やはり、全盛期には程遠いようだ。

 古傷の痛みもあり、老人の動きはどこか鈍い。

 妖獣の鋭い歯が、徐々に彼を追い詰めていく。


「こ、ここまでか……」


「爺さん!」


 妖獣が大口を開ける。

 若者たちが慌てて駆け寄ろうとするが、間に合わない。

 老人が覚悟を決め、目を閉じたその時だった。


「【風翼防盾】」


 そんな声と共に、少女が老人と妖獣の間に入る。

 そして、羽を大きく広げて妖獣の攻撃を防いだ。


「……っ! お主、身を挺して儂を……?」


「大丈夫? 怪我はない?」


 少女が老人の方を向き、そう尋ねる。

 やはり、遠目で見て推測していた通り、鳥系の獣人のようだ。


「あ、ああ……儂は問題ないわい。じゃが、お主の翼が……」


 老人が少女の翼に目を向ける。

 妖獣の鋭い歯に噛みつかれたためか、少女の羽はボロボロになっていた。


「あ、これ? これぐらい、大丈夫だよっ!」


「いや、大丈夫なわけが……」


「お話はあとにしよっ! まずはあいつをやっつけちゃうねっ!」


 少女が言う。

 そして、彼女は足を大きく曲げ……。


「えいっ! 【マリア・バーニングタックル】!!」


 自らの体に火を纏い、そのまま妖獣に体当たりを食らわせた。

 その一撃で、妖獣の体は吹き飛ぶ。


「なっ!? す、すげぇ……」


「とんでもないな……」


 村人たちから感嘆の声が漏れる。

 そんな中、老人はあることに気づく。

 少女の翼が……いつの間にか元通りになっていることに。

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