俺は『三日月の舞』の部屋に入った。
中には全裸のテナがいた。
何やら、一人で慰めていたらしい。
(テナ、精神力強いなぁ……)
エレナは結構大きな精神的ダメージを負っていて、ルリイもそこそこ落ち込んでいる様子だったぞ。
そんな中、一人で致す余裕があるとは……。
このパーティの打たれ強さ最強はテナと言っていいだろう。
それに――
「テナさんって……」
「なんすか?」
「ボーイッシュな方だと思ってましたが、結構いい体をしているのですね」
「えっ!?」
テナが顔を真っ赤にする。
彼女は胸を隠すように腕を組んだ。
「そ、そんなに見つめないで欲しいっす……。恥ずか死ぬっす……」
「あ、すみません」
言われてみれば、確かに失礼だったかもしれない。
……でも、綺麗だと思うんだよなぁ。
俺はテナに声を掛ける。
「テナさん。実は差し入れがあるのですが……」
「差し入れ? ……あの、それって後でもいいっすか? とりあえず服を……」
「いえ、今渡したいと思います」
「えっ? いや、でも……」
テナが困惑している。
そりゃそうだ。
一人で致しているところに突入したまでは不慮の事故としても、その後もずっと居座るのはどうかと思うだろう。
だが、これは譲れないところだ。
俺はテナに告げる。
「これをどうぞ」
「これは……野菜……? ナスっすか?」
俺はテナにナスを渡した。
もちろん、彼女へのプレゼントだ。
「はい。その……、お近づきの印に……」
「えっ? オレっちにくれるんすか?」
「ええ。テナさんに受け取ってもらいたくて持ってきました」
「……」
テナが満面の笑みを――浮かべていない!
むしろ、困惑している!!
「えっと……。その……、嬉しいっすけど……。この状況で、いきなり生野菜を渡されても……」
「ふっふっふ。この状況だからこそ、役立つんですよ」
「へっ? どういう意味っすか……?」
「それは……」
俺が説明しようとしたその時、俺の両肩に手が置かれた。
エレナとルリイだ。
「差し入れは渡したんでしょ? いつまでいるつもりよ! 空気を読みなさい! 空気を!!」
「ふふふー。タケシさんがここまで動じない人だったとはねー……。でも、テナちゃんも恥ずかしがっているし、ここは一度……ね?」
2人が俺を諭してくる。
……仕方ないな。
これ以上は迷惑になるだけだ。
――なんて、あっさり引き下がる俺ではない!
ここで引いたら、タカシ=ハイブリッジ男爵の名が廃る!
こうなりゃ、実力行使だ!!
「百聞は一見にしかず! 論より証拠!! というわけで、テナさん!!!」
「な、なんすか? ……っていうか、近いっすよ!?」
俺はテナへと迫る。
そして、後方のベッドにテナを押し倒した。
「ちょ!? な、何をする気なんすか!?」!
「なにって……、ナニをするんですよ」
「えっ!? えぇっ!?」
テナは顔を赤くして混乱している。
そんな彼女の体の上に、俺は覆いかぶさる。
そして、一度はテナに渡していたナスを自分の手に取った。
「えっ!? なんすか!? 一体、なにが始まるっすか!?」
「ふふふ……。テナさんは先ほどこう言っていましたよね? 『こんな状況で、いきなり生野菜を渡されても……』と」
「い、言ったっす……」
「ならば、見せてあげましょう」
「見せる……?」
テナは不思議そうな顔をする。
一方で、背後からはエレナとルリイが息を飲む音が聞こえてきた。
「このナスの……有効な使い方を!!」
「えっ!? なにそれ!? 怖いっす!! ――ぎゃああぁっ!? ど、どこ触って……。野菜は食べるものっすよ!?」
「下の口から食べればよろしい!!」
「下に口なんて、ないっすぅうう!!!」
テナは叫びながら暴れる。
だが、俺の身体能力の前では無意味だ。
「ちょ、ちょっとあんた! いつまでも調子に――って、なんて力なの!?」
「す、すごいー……。タケシさんに……これほどのパワーがあったなんてー……」
エレナとルリイが俺の力に驚いている。
あんまり全力を出しすぎると、Dランク冒険者タケシのキャラが崩れてしまう。
……が、今はそれどころではない。
テナに満足してもらうのが最優先だ。
「ふはははは! この俺を止められるかな!?」
「ぎゃあああぁっ!! お、オレっちの貞操のピンチっすーーッ!!! エレナっち、ルリイっち、助けてっすぅうう!!!」
テナが叫ぶ。
こうして、俺は療養中のテナへのお見舞いを果たしたのだった。
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