「君の実力、見せてもらうよ」
「拙者とて、無抵抗に負けるつもりはないでござる」
蓮華が構える。
そのまま、二人は激突した。
「「はぁっ!」」
美少年と蓮華が同時に刀を振り抜く。
刃と刃が激しくぶつかり合い、鋭い金属音が辺りに響き渡る。
そのまま、二人は激しい剣戟を繰り広げた。
「ほう……やるね」
美少年は余裕の表情だ。
だが、その心中では焦りが芽生えていた。
蓮華の剣技は彼の想像をはるかに超えるものだったからだ。
「そこ!」
「くっ……!!」
蓮華の一閃が胸元をかすめ、美少年はとっさに距離を取る。
その額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
「なるほど、強いね」
「それはこちらの台詞でござるよ。拙者、ここまで苦戦するのは久方ぶりでござる」
「ふふ……。それは光栄だ」
美少年が微笑む。
だが、その構えは決して崩れない。
蓮華の実力を認めつつも、まだ勝利を諦める気はなかった。
「さぁ、続けよう。……ん? どこを見ている……?」
美少年が僅かな違和感を覚える。
蓮華の視線が、自分の胸元を凝視しているのに気づいたからだ。
「なっ!?」
先ほどの攻防で蓮華の剣閃が服を裂いたらしく、胸が露わになってしまっていたようだ。
胸の先端にある突起までが丸見えである。
美少年が慌てて胸を隠す。
その様子を見て、蓮華は確信した。
「微妙な胸の大きさ故に判断がつかなかったが、お主は少女であったか。拙者、勘違いしていたでござる」
「ぐっ……!! お、おのれ……!!!」
美少年改め美少女は顔を真っ赤にし、怒りに震えている。
どうやら胸を見られたことが、彼女にとっては何よりも恥ずかしかったらしい。
「恥ずかしがることないでござるよ。拙者も女、それにお主と同じ妖精族でござる」
蓮華が静かに慰める。
ヤマト連邦における妖精族――サザリアナ王国における通称エルフは、見目麗しい特徴を持つことで知られる。
金髪碧眼が一般的で、風や植物系統の魔法や妖術を得意とする者が多い。
また、胸が控えめであることも種族の特徴だ。
貧乳を気にする者も中にはいるが、それもまた天性のものとして受け入れられている。
蓮華も例外ではなく、彼女自身がエルフであるため、相手の気持ちが分かる部分もあった。
しかし、慰めの言葉をかけられた本人は怒り心頭だ。
「黙れ! 紛い物が!!」
「なっ!?」
突如として美少女の剣閃が蓮華を襲う。
その動きは先ほどまでとは比べ物にならないほど速い。
(怒りで速度が増した!? しかし、紛い物呼ばわりされるとは……?)
蓮華は驚きつつも防戦一方の状態に追い込まれる。
彼女は相手の攻撃を慎重に見極めながら、次の一手を探ろうと集中を高めるのだった。
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