雷鳴流道場から桔梗を救出した数日後――
「はあぁっ! 【桜吹雪】!!」
紅葉が発動した植物妖術により、的が切り刻まれる。
彼女の放つ旋風は、的を粉々にした。
ここは武神流道場の中庭。
桜花城攻めに向け、仲間の強化に取り組んでいるところだ。
「うむ。なかなかの威力だ。もう立派な植物妖術使いだな」
「えへへ……」
紅葉が嬉しそうに微笑む。
俺は彼女の頭を撫でてやった。
桜花七侍の残り4人やその他上層部との衝突が近い中、紅葉の戦力化はありがたい。
桜花七侍レベルを1対1で打ち破るのはまだ難しいだろうが、桜花七侍の配下ぐらいならどうにかなるかもしれない。
まぁ、まだ子どもの彼女を荒事に駆り出すのは気が引けるところだが……。
不意に戦闘に巻き込まれることもあり得るし、戦闘能力は高いに越したことはない。
「でも……私、気になるんです」
「気になる?」
「妖術っていうものがあることは知っていました。でも、私がこんなに上達するなんて思っていなくて……。妖術を使える人って珍しいんですよね?」
「まぁ、そうだな……」
俺は頷く。
この世には、強くなるための様々な手段や戦闘技法が存在する。
最もお手軽なのは、単純に筋肉を鍛えること。
次に、剣術や武闘の動きを体に叩き込んで最適化すること。
この2つは、万人が取り組むことができ、即効性もそれなりに高い。
そしてさらに、魔法、闘気、妖術など、特殊な力を身に着ける方法もある。
だが……これらは、誰にでも簡単にできるものではない。
程度の差はあるが、ある程度の才能が要求される。
「こんな私が、どうして……」
「そうだなぁ……」
俺は曖昧に返事をする。
実のところ、紅葉の急成長には俺のチート能力が大きく関係している。
彼女の忠義度が40に達し、加護(小)の条件を満たしたのだ。
レベル?、深山紅葉(みやまもみじ)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:謀反衆幹部
職業:植物妖術使い
ランク:ー
HP:??
MP:低め
腕力:??
脚力:??
体力:高め
器用:??
魔力:??
残りスキルポイント:???
スキル:
植物妖術レベル2(1+1)
採集術レベル2(1+1)
???
「ま、細かいことはいいじゃないか。紅葉が頑張った成果だ」
「でも……」
「お母さんの功績も大きいだろうな。植物関連の知識をたくさん教えてもらえたのだろう?」
俺の加護付与スキルはチートだが、万能ではない。
ここで、その効果を再確認しておこう。
加護付与(微)による補正:
全ステータスの1割上昇
所持スキルの成長促進(微)
加護付与(小)による補正:
全ステータスの2割上昇
所持スキルの内の最大3つのスキルレベルをそれぞれ1ずつ上昇
出会ってから割とすぐの時点で、加護(微)の条件は満たしていた。
その頃から、『所持スキルの成長促進(微)』の効果は発揮されていたのだろう。
そして、今回の加護(小)付与によってそれらがさらに強化された感じだと思われる。
見て分かる通り、加護付与は非常に強力なチート能力だ。
しかし、繰り返しになるが決して万能ではない。
現に、紅葉だって火妖術や剣術などといった方面は不得手としている。
彼女が植物妖術使いとして一人前になりつつあるのは、彼女の母親の功績が大きい。
それは決して嘘ではない。
「なるほど……。高志様には感謝しています。でも……お母さんにも感謝しないといけませんね」
「ああ、そうだな」
俺は頷く。
今の紅葉の成長を見ると、母親もきっと嬉しいだろう。
さて、桜花城攻めに向けて現状把握を続けよう。
次は……
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