【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

852話 可愛い妹

公開日時: 2022年11月25日(金) 12:05
文字数:2,444

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「うおおお!!」


 ナオンとナオミ。

 2人が同時に動いた。


「せぇいやああ!」


「ふんぬぅぅぅ!」


 激しい打ち合いが続く。

 どちらも一歩も引かない攻防だ。


「くっ……。流石に強いですね」


「ふふふ……。当たり前だ。貴様が『飛竜の型』を使えたのは驚きだが、所詮はそこまで。地力の差を痛感したか?」


 ナオンの言葉に、ナオミの顔が歪む。


「次でトドメだ。はああぁ……!」


「アタシだって……! はああぁ!」


 2人が大きく闘気を練り上げる。


「【亜空斬撃】!!!」


「【飛竜・爆砕波】!!!」


 凄まじい剣技と闘気弾がぶつかり合う。

 辺りに土煙が舞い上がった。

 やがて、徐々に視界が晴れてくる。


「はぁはぁ……。私の勝ちのようだな……」


「姉様……」


 ナオミが仰向けに倒れていた。

 ナオミの剣は折れており、ナオンの頬には小さな切り傷がある。


「アタシの負けだよ……。やっぱり姉様は強いや……。敵わないなぁ……」


「……そんなことはない。貴様の実力は本物だった。騎士団の厳しい鍛錬に音を上げず、閣下に才能を見出されただけはある。素晴らしい一撃だった」


 ナオンは剣を鞘にしまう。

 そして、倒れているナオミの方に歩いていく。


「お前は可愛い妹だ。危ない仕事をしてほしくなくて、頑張って突き放してきた。しかし、要らん心配だったようだな」


 ナオンが倒れている妹に手を差し出す。


「姉様ぁ……」


「ナオミ……」


 姉妹が見つめ合う。

 俺は思わず目を潤ませた。

 感動的なシーンじゃないか。


 これで一件落着だな。

 よかったよかった。


「素晴らしい試合だったぞ」


 俺が拍手をしながら近寄っていくと、ナオミとナオンがこちらに顔を向けた。


「ありがとうございます」


「……感謝します」


 ナオミとナオンが頭を下げる。


「今、傷を治してやろう。――【ヒール】」


 俺は2人に治療魔法をかけた。


「おぉ! 痛みが消えました! ありがとうございます!」


「相変わらず、ハイブリッジ様の治療魔法はすごいです!」


 2人共、元気になったようだな。


「――それで、だ。ナオミちゃんの実力は分かっただろう? ナオンの治安維持隊に入れようと思うんだが、どうだ?」


「これほどの実力を見せられては、反対はできませんな。私と5人の部下にナオミを加えて、7人でこの街の治安を守っていきましょうとも」


「そうか、それは良かった」


 とりあえず、これで一段落かな。

 王都から連れてきた者たちの中で、まずはナオミの配属先が無事に決まった感じだ。


「じゃあ、今後もよろしく頼むぞ。俺はこのあたりで失礼し――」


 俺がさっそうと立ち去ろうとした時だった。


「お待ち下さい! 閣下!!」


 ナオンが俺を呼び止めた。


「ん? なんだ? 他に何か問題でもあったか?」


「いえ、そういうわけではありませんが。ナオミの急成長のことです」


「うむ。それは元々持っていた基礎力に、俺という刺激剤が加わることで開花したんだ」


「そういう話でございましたね。ですが、基礎力で言えば私も負けてはいないつもりです」


 ナオンがそう力説する。

 彼女は『亜空斬撃』という大技こそ持っているものの、その戦闘能力を支えているのはしっかりとした基礎力だ。

 言っていることはその通りなのだが、何の話をしたいのかイマイチ分からないな。


「うむ。それで?」


「どうか私にも指導をしていただけないでしょうか? 試合には勝ちましたが、『飛竜の型』は私もまだ安定して使えない技なのです。このままでは、姉としての面目が立ちません。どうか私に、指導してください」


「いやいや、そんなことを気にしなくてもいいって。というか、指導ならたまにやっているじゃないか」


 ナオンを雇用してからというもの、時間が合えば模擬試合や鍛錬の監督などを行なってきた。

 ついさっきも、模擬試合をしていたし。


「ご指導にはいつも感謝しております。ただ、もう一歩踏み込んだ特別なご指導があるのではございませんか?」


「特別な指導?」


「はい! 閣下が見出されてきた者たちは、一足飛びに成長している者が多いです。そんな中、治安維持隊の私たちは取り残されているようで不安なのです。私たちが知らない特別な指導があるのではと思っています」


 ナオンがそんな不安を抱いていたとはな。

 確かに、ナオンを除く多くの者がその才能を開花させている。

 セバス、キリヤ、クリスティ、ネスター、ロロ、リンなどなど……。

 彼らは全員、俺の加護(小)の条件を満たしている。


 ナオン、王都組、採掘場組以外で加護(小)を未付与である配下は……。

 オリビアとクルミナくらいか。

 冒険者のトミーやアランもまだだが、彼らは現時点では御用達冒険者であり、配下ではないしな。


「ふぅむ……」


 俺は言葉に詰まる。

 特別な指導など、ない。

 強いて言えば、俺と仲良くなるイベントをこなすことが特別な指導とも言えるが。

 加護(小)の条件を満たせるか否か。

 その差が大きい。


「わ、私ではまだ閣下の信を得られるような働きができておりませんか?」


 ナオンが目に涙を浮かべながら訴えてくる。

 彼女の必死さが伝わってきた。

 ここで断るのは可哀想だな……。


「よし、分かった。特別に指導をしてやる。ただし、条件がある」


「条件ですか!? どのような条件でも仰せのままにいたします!」


「途中でのリタイアは認めないし、俺に抵抗することも認めない。そして、特別な指導にはナオミちゃんにも同席してもらう」


「はっ! 承知いたしました!」


 ナオンが背筋を伸ばして敬礼する。

 満足げな表情だ。

 それとは対称的に、妹のナオミは顔をこわばらせている。


「……えっ!? ま、まさかハイブリッジ様は……」


「ナオミちゃん。君も通った道だ。強力してくれるな?」


「で、でも……。姉様はそういった方面に疎くて……」


「大丈夫さ。俺に任せておけ。上手くいったら、ナオミちゃんにもまたやってあげるからな」


「は、はうぅ……」


 ナオミが顔を真っ赤にして俯く。

 姉妹だし、たぶん同じようなやり方でいけるだろう。

 弱いところも同じだったらやりやすいのだが。


「よし、それじゃあ行くぞ!」


 俺はナオミとナオンを連れて、屋敷に戻り始めたのだった。

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