「うわーーっ!!」
「に、逃げないと……!」
「は、早く迎撃態勢を!!」
「急げぇ! 全滅してしまう!!」
地下遺跡から脱出した俺が見たのは、たくさんの忍者だった。
彼女たちは、何やら慌てふためいている。
「いったい何の騒ぎだ? ……まさか、ドラゴンでも攻めてきたのか?」
俺は周囲を見回す。
だが、ドラゴンの姿はどこにもなかった。
「なぁ、そこの君!」
「ひ……ひぃっ!? あばば……」
俺の問いかけに、1人の忍者が反応して振り向く。
彼女は俺を見ると、悲鳴を上げて後ずさりした。
これは……イノリと同じような反応だな……。
さっきから、何かがおかしい。
「俺にできることがあったら、言ってくれ。魔物か何かが攻めてきたのなら、俺も迎撃を手伝う」
俺はそう言って、力強く拳を握る。
バッ!!
ゴゴゴゴゴ……!!!
「ん……? 地震か?」
俺は思わず呟く。
いや、これは地震ではない。
この振動は……俺によって引き起こされたものか。
どうも、魔力や闘気の制御が上手くいかない。
記憶があやふやなのだが、俺はそこそこの強者だったようだ。
記憶の一部を失ったことにより、力の制御が不安定になってしまっているらしい。
「あばばばば……」
「さ、里の……いや、世界の終わりだ……」
「ごめんなさい……。生まれてきて、ごめんなさい……」
俺の周囲には、依然として怯えた様子の忍者たちの姿があった。
地面の振動がそれほどまでに怖かったのだろうか。
ただでさえドラゴンか何かが出現して混乱しているところに、追い打ちをしてしまった。
申し訳ないことをした。
「か、カゲロウ様! あなた様が対処してくださいよ!!」
「なにっ!? わ、私に押し付ける気か!?」
「押し付けるも何も、カゲロウ様は里長でしょう! そもそも、侵入者を地下遺跡に転移させる決断をしたのもカゲロウ様ではないですか!」
「くっ……。だ、だが! あのときはああするしか……」
何やら揉めているようだ。
聞いた感じだと、カゲロウと呼ばれている長身ロングヘアの忍者がリーダー格らしい。
そう言えば、なんとなくだが見覚えがあるような……。
「あの……」
俺はカゲロウの肩を叩く。
すると、彼女は悲鳴を上げて飛び上がった。
「ひゃあっ!?」
「いや、驚かせてすまない。俺は高橋高志だ。さっき地下遺跡から出てきたんだが……」
「ひゃ、ひゃい! か、かかか、カゲロウと申しまひゅ!」
カゲロウは目をグルグル回しながら答えた。
彼女はリーダー格のはずなんだが、威厳がまったくないな……。
まぁ、立つことすらままならない一部の忍者よりはマシだが……。
「よろしくな。カ・カカカ・カゲロウさん。……それで、俺はこれからどうすればいいと思う? 場合によっては――」
「ひぃっ!? こ、殺さないで……」
「いや……だから……」
「嫌だ……。死にたくない、死にたくない……」
カゲロウはついに泣き出してしまった。
しかも、それだけではない。
彼女の股間から、何やら液体が流れている。
本当に、どうしてこうなった……。
何が何だか分からんぞ……。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!