「ふむ……」
「な、なんだよ?」
「いや、なんでもない。治療するぞ」
顔を赤らめる流華を見て、俺は不思議な感覚に襲われた。
俺は男色の気はない。
ないはずなのだが……。
流華の裸体を見て、どうしてこんなにドキドキするのだろうか?
この感覚は……そう、魔導技士のジェイネフェリアと男同士で風呂に入ったときの感覚に似ている。
「そ、そんなに見るなよ……」
流華に声をかけられて我に返る。
いかんいかん。
今は治療に集中しよう。
「じゃあ、始めるぞ」
俺は流華に治療魔法をかける。
すると、彼の全身が淡く光り始めた。
「お、おい……これは……」
「じっとしていろ。俺の魔法だ」
「あ、ああ……」
流華が静かになる。
そして……ほどなくして治療が終わった。
俺は流華の肌を撫でる。
「ひゃん!?」
「変な声を出すな」
俺は流華を小突く。
まるで少女のような声を出されると、俺が変な気持ちになってしまう。
なるべく自制するが、それでも限界はあるんだぞ。
「よし、アザは消えたな」
「お、おう……」
流華が自分の身体をあちこち見回す。
そして言った。
「す、すげぇ……。マジで治ってやがる! これが魔法ってヤツか!!」
「ああ」
「高志様、すごいです!!」
紅葉が目を輝かせている。
そんな彼女に微笑みかけてから、俺は流華に言った。
「まだ治療は終わってないぞ」
「え?」
「むしろ、ここからが本番だ。右手首を見せてみろ」
俺は流華の右手を掴む。
手首から先を失った流華の右手を……。
「うぐ……」
「痛むか?」
「い、いや……大丈夫だ」
流華が首を振る。
彼の精神力はかなりのものだな……。
数日前に切断されてしまったばかりの箇所が、傷まないわけがない。
その心の強さには感嘆する。
「これからお前の右手首を復活させていく」
「は? い、今なんて?」
「お前の右手首を生やすと言ったんだ」
「な……。そんなこと……」
「できるさ。俺ならな」
俺は流華に微笑みかける。
そして言った。
「ま、あくまで少しずつだ。完全に治すには、継続的な治療が必要になる」
いくら治療魔法でも、部位欠損を回復させることは容易ではない。
俺ほどの実力をもってしても、一度や二度の魔法行使で完治させるのは不可能だ。
例外は、他の治療魔法使いと合同魔法を発動した場合か。
記憶は相変わらずあやふやだが、かつてはそうして治療魔法を発動させたことがあった気がする。
「あ、ああ……」
「お前はもう、俺から離れられない。治療を受け続けるため、俺と同行してもらうぞ」
「……分かったよ。どうせ行くあてもない。あんたについていく……」
流華が頷く。
そんな彼に、俺は言った。
「よし、じゃあ治療を再開するぞ」
「ああ!」
流華が力強く頷く。
そして俺は、彼の右手首に治療魔法をかけ始めたのだった。
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