女たち4人の取り調べを行っている。
俺の幻惑魔法により、反省を促した。
アビー以外の3人は問題なく取り調べが終わった。
問題はアビーだ。
彼女に何とか反省を促さないと、有罪と判断せざるを得ない。
「ハイブリッジさま……。どうか、どうか寛大なご処置をお願いいたします……」
アビーは必死になって懇願してくる。
俺は少し考える。
彼女の実質的な無罪放免を妨げているものは、『反省なし』と『余罪あり』だ。
俺が『反省あり』かつ『余罪なし』とレティシアやイリーナに報告すれば、おそらくそのまま通るだろう。
だがその場合、後々になってアビーが再犯したり、あるいはそこそこの余罪が明るみになって問題になる可能性がある。
男爵である俺が爵位を没収されることはさすがにないだろうが、ネルエラ陛下や”誓約の五騎士”イリーナからの評価は間違いなく下がる。
それは少し困る。
やはり、俺の方で証言を捻じ曲げるのではなく、アビーには心からの反省をしてもらいたい。
「アビー……」
俺は彼女に近づく。
「ハ、ハイブリッジさま……」
アビーは媚びるような笑顔を向けてくる。
つい全てを許してしまいそうになるが、必死でこらえる。
「何度言えばわかるんだ?」
「え?」
「姿勢を乱すな! 胸を張り、手は横に! 気を付けぇっ!」
「は、はいっ!」
「よろしい」
アビーは慌てて直立する。
言った直後はちゃんとしてくれるんだけどな。
時間が経てばまた元に戻ってしまうだろう。
俺が舐められているのかもしれない。
もう少し追い込んでみるか。
幻惑魔法で生み出した通行人たちを利用しよう。
「ほら、アビー。前を見てみろ。通行人がたくさんいるぞ。お前、下着姿で恥ずかしくないのか?」
「え!? あ……。うぅ……。恥ずかしいですぅ」
アビーは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「はっはっは。自意識過剰なんじゃないか? 誰も30を超えた女の下着姿などに興味はないぞ。隣には、20代の女たちがいるからな」
この4人の中に少女はいない。
全員が20代から30代の女性だ。
その中でも、アビーは最年長にあたる。
俺は幻惑魔法の通行人を操作し、アビーには敢えて視線を向けないようにする。
ジロジロと見られるのは恥ずかしいだろうが、逆に見られないのも屈辱だろう。
「ひぃっ!?」
アビーの分も視線を向けられた女がビクッと反応する。
「ううっ。そ、そんな……」
アビーが涙目になっているが、とりあえず置いておく。
今はそれよりも、先ほどビクッと反応した女だ。
「おい、お前」
「は、はい……?」
「何度も言わせるな。直立状態で動くなと言っているんだ。いいか? 俺は別に、お前を虐めて楽しんでいるわけじゃないんだ。お前のためを思って言っているんだ」
アビー以外の女は反省の様子を見せてはいた。
しかし強いて言えば、この女の反省具合は少し弱かった。
ちょうどいい。
「わ、わかりました……。はい……」
「よし。じゃあ、そのポーズのまま、一歩前に進んでくれ」
「はい……」
言われた通り、女はゆっくりと足を前に出す。
「ストップ。そこでいい」
俺は女に近づく。
そして――
ズリッ!
パンツをずらして、半ケツ状態にさせた。
そしてブラの肩紐を緩め、胸元の露出を増やす。
「――――ッ!!??」
「「「おおおおぉっ!!」」」
通行人たちがざわめく。
まぁ、俺が幻惑魔法で生み出した幻覚だが。
「ひっ、ひぃっ……」
「動くな!!」
震える手で下着を戻そうとする女を、俺は制止する。
女は羞恥と恐怖で板挟みになり、ただ口をパクパクさせている。
「これがお前への罰だ。これで文句なしに反省できたことだろう。しばらくはそのままにしていろ」
俺は満足げに頷き、一歩下がる。
そして、4人を順に見回す。
「――はぁっ……、はぁっ……」
半ケツ状態になった女性は過呼吸気味になっている。
通行人の前で半ケツ状態にされたことがそれほどキツかったか。
(いい風景だ。通行人の中で、妙齢の女性4人に対して直立不動を強いる。しかも、その内の1人は半ケツ状態だ。まぁ、通行人はただの幻覚だが……)
これは興奮せざるを得ない。
……ではなくて。
あくまでこれは取り調べなんだよ。
反省なしのままで有罪になるのも嫌だろ?
(お互いにウィンウィンな関係なんだ。俺を恨まないように)
俺は心の中でそう言い訳をする。
そして、最後の一手を打つことにした。
「おい、アビー」
「は、はいっ! なんでしょうか!?」
アビーは直立したまま、顔をこちらに向ける。
今度こそ、動くなという指示を忠実に守っている。
半ケツにされた女性のようにはなりたくないといったところか。
これはこれでいい傾向なのだが、彼女の場合はもうひと押しほしい。
「動いたな?」
「え?」
「何度言ったらわかるんだ。まったく、嘆かわしい……」
「あ、あの……私は、動いていません……」
アビーが力なくそう主張する。
実際、彼女はちゃんと直立不動を保っていたのだ。
俺のイチャモンである。
だが、この場における上下関係は明白。
「言い訳は結構! お前には罰を与える!!」
ズリッ!
俺はアビーのパンツをずらす。
今度は半ケツなんて生易しいものではない。
膝まで下ろした。
そしてブラジャーの肩紐も緩め、完全に先端の突起を露出させる。
「――――ッ!!??」
「「おぉっ!」」
通行人たちから歓声が上がる。
もちろんこれも幻惑魔法で生み出したものだ。
しかし、アビーには効果抜群だったらしい。
彼女は羞恥で顔を真っ赤にしている。
だがその一方で、直立不動は保っている。
今度こそ、正真正銘反省したと言ってもいいかもしれない。
「反省したか?」
「は、はひ……」
魔力による真偽判定は……不真実。
つまり、嘘をついている。
(おいおい、この期に及んでまだ反省していないのかよ)
羞恥の罰を与える作戦は微妙だったか?
ちゃんと賭博がもたらす社会的なデメリットを説明した方が良かったかもしれない。
だが、そのあたりはそもそも俺が理解できていないしな。
どうするべきか。
「ふむ……」
いいことを思いついた。
俺は大切なところを全てさらけ出しているアビーを放置し、半ケツ状態の女性の元へと向かう。
「お前は反省しているか?」
「――はぁっ、はぁっ……。は、はひぃ……」
相変わらず過呼吸気味だったが、彼女はかろうじてそう返事をした。
そして真偽判定は――真実。
彼女はしっかりと反省している。
「ふむ」
俺は彼女の下着を――元に戻した。
「よし。お前たち3人は服を着てもいいぞ」
3人ともホッとした様子を見せる。
「ただし、アビー。お前はダメだ」
「そ、そんな……っ」
「口答えは許さん。しばらく反省していろ」
幻惑魔法で作り出された通行人の前で、アビーは大切なところを全てさらけ出し続けている。
他にも同罪であった3人の女性が立っているが、彼女たちは今や服を着ている。
その対比で、より深い反省を促せるというわけだ。
(アビーは本当に厄介なタイプだなぁ……。精神力が地味に強すぎるというか、なんというか……)
通行人にジロジロ見られながらほぼ裸で立ち続けるというのは、相当な恥辱だろう。
普通の女性なら、耐え切れない。
だが、アビーに反省を促すにはこれでも足りない気がする。
俺はため息をつきながら、アビーに特化した次なる手を考えるのだった。
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